12年間にわたるミッションで合計10個の小惑星を探査するNASAの小惑星探査機“Lucy(ルーシー)”が、いよいよ最初の探査対象となる小惑星ディンキネシュ(Dinkinesh)に近づいています。
“Lucy”は日本時間2023年11月2日未明にディンキネシュに最接近し、今後10年間の探査で使用される装置やシステムのテストを行う予定です。
その後、幅7メートルの2つの太陽電池アレイのうち1つを完全に展開および固定することに失敗。
ミッションチームでは、この問題のトラブルシューティングを続けていました。
NASAでは、このまま太陽電池パネルを使用することは許容できるレベルのリスクで、これ以上の展開作業は有益でないと判断。
“Lucy”は太陽電池パネルの98%以上を展開していて、12年間の基本ミッションを完了するのに必要なエネルギーを十分供給できると判断しています。
“Lucy”ミッションの主な目的は、木星のトロヤ群に属する小惑星の探査を行うこと。
複数の小惑星を訪れることから、ミッションの期間は2021年から2033年までの12年間が予定されています。
木星のトロヤ群とは、木星の公転軌道を移動する小惑星のグループ。
太陽から見て、木星に対して60度前方あるいは60度後方の軌道に分布しています。
すなわち、太陽と木星の重力や小惑星のグループにかかる遠心力が均衡するラグランジュ点L4・L5付近を運動する小惑星のグループのことです。
最初に見つかった小惑星にトロイア戦争の英雄にちなんだ名前が付けられたことから“トロヤ群”と呼ばれています。
これらの天体を間近で探査することから、ミッションと探査機の名前は、エチオピアで見つかった有名な化石人骨の“Lucy”にちなんで名付けられています。
ちなみに、ルーシーは約320万年前に生息していたアウストラロピテクス・アファレンシスの一体になります。
今回“Lucy”が初めて観測を行うディンキネシュは幅が約700メートルのS型小惑星ですが、打ち上げ時点での探査対象リストには含まれていませんでした。
打ち上げ後に小惑星帯で正確な軌道が判明している50万個の小惑星を調べてみると、“Lucy”がディンキネシュの近くを通過することが判明。
これにより、2023年1月の時点で探査対象として追加されるのですが、この時ディンキネシュはまだ仮符号の“1999 VD57”と呼ばれていました。
でも、運用チームが化石人骨であるルーシーのエチオピア名にちなんだ名前を提案したんですねー
この名前が国際天文学連合(IAU)に承認されたことで、正式にディンキネシュと命名されています。
ディンキネシュの探査は観測装置やシステムのテストと位置付けられていて、自律的に小惑星の位置を特定しながら観測装置の視野内に収め続けるための自動追尾システムがテストされます。
これは、地球からの電波が届くまでに約30分もかかるほど遠くを“Lucy”が飛行しているため。
この距離だと、小惑星との遭遇を対話的に指示することができないんですねー
そのため、科学観測を事前にプログラムしておくことになったわけです。
NASAによると、“Lucy”は日本時間2023年11月2日1時54分に、ディンキネシュから430キロ以内の最接近点を通過します。
観測装置を搭載した架台は、最接近の2時間前に所定の位置へ移動。
その後、望遠カメラ“L’LORRI”と熱放射分光器“L’TES”による観測を開始します。
最接近の1時間前には“Lucy”の追跡システムによる小惑星の追跡が始まり、最接近の8分前からは可視光カラーカメラ“MVIC”と赤外線撮像分光器“LEISA”で構成される“L’Ralph”による観測も行われます。
最接近後も1時間にわたってディンキネシュの撮影が続けられ、その後も4日間は“L’ORRI”による撮影は定期的に行われます。
ディンキネシュのフライバイ探査を終えた“Lucy”は、2024年12月に地球フライバイを行って軌道を修正。
2025年には2つ目の探査対象である小惑星帯の小惑星ドナルドジョハンソン(Donaldjohanson)のフライバイ探査を行います。
その後は、2027年のエウリュバテス(Eurybates)とその衛星ケータ(Queta)をはじめ、ミッションの主目標である木星のトロヤ群の小惑星探査が行われる予定です。
ディスカバリー計画のミッションとして2017年に選定されたの“Lucy”。
このミッションは、NASAによる低コストで効率の良いミッションを目指したディスカバリー計画により、提案されていました。
ディスカバリーと言えば、1992年に当時のNASA長官が提唱した、「より速く、より良く、より安く」のスローガンを体現する計画。
過去のディスカバリー計画の探査ミッションには、小惑星“ベスタ”と準惑星“ケレス”を探査した“ドーン”、太陽系外惑星探査を行う“ケプラー”、彗星を探査した“メッセンジャー”などがあります。
そう、低コストのミッションなのに高パフォーマンス!
どれも素晴らしい結果を残しているんですねー
“Lucy”のミッションでも、太陽系の成り立ちやその経過の解明に役立つ発見があるはずです。
なお、探査を終えた“Lucy”は、地球近傍と木星のトロヤ群の間を往復するような軌道を、数十万年に渡り飛び続けることになります。
そんな“Lucy”には未来の人類に向けたメッセージとして、ノーベル文学賞受賞者、米国桂詩人、天文学者、ビートルズのメンバーらの言葉を刻んだメッセージプレート“Lucy Plaque”が搭載されているそうです。
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“Lucy”は日本時間2023年11月2日未明にディンキネシュに最接近し、今後10年間の探査で使用される装置やシステムのテストを行う予定です。
木星のトロヤ群に属する小惑星を探査するNASAの探査機“Lucy”のイメージ図。(Credit: Southwest Research Institute) |
木星のトロヤ群に属する小惑星の探査
小惑星探査機“Lucy”は、2021年10月16日にユナイテッド・ローンチ・アライアンスの“アトラスV-401”ロケットに搭載され、ケープカナベラル空軍基地から打ち上げられました。その後、幅7メートルの2つの太陽電池アレイのうち1つを完全に展開および固定することに失敗。
ミッションチームでは、この問題のトラブルシューティングを続けていました。
NASAでは、このまま太陽電池パネルを使用することは許容できるレベルのリスクで、これ以上の展開作業は有益でないと判断。
“Lucy”は太陽電池パネルの98%以上を展開していて、12年間の基本ミッションを完了するのに必要なエネルギーを十分供給できると判断しています。
“Lucy”ミッションの主な目的は、木星のトロヤ群に属する小惑星の探査を行うこと。
複数の小惑星を訪れることから、ミッションの期間は2021年から2033年までの12年間が予定されています。
木星のトロヤ群とは、木星の公転軌道を移動する小惑星のグループ。
太陽から見て、木星に対して60度前方あるいは60度後方の軌道に分布しています。
すなわち、太陽と木星の重力や小惑星のグループにかかる遠心力が均衡するラグランジュ点L4・L5付近を運動する小惑星のグループのことです。
最初に見つかった小惑星にトロイア戦争の英雄にちなんだ名前が付けられたことから“トロヤ群”と呼ばれています。
太陽(黄)を中心に、水星~木星までの惑星(白)と木星のトロヤ群に属する小惑星(緑)の位置を示したアニメーション。トロヤ群の小惑星は木星(Jupiter)に先行するL4点のグループと、後続するL5点のグループに分かれている。(Credit: Astronomical Institute of CAS/Petr Scheirich (used with permission)) |
最初の探査対象は小惑星ディンキネシュ
木星のトロヤ群に属する小惑星は、初期の太陽系における惑星の形成・進化に関する情報が残された“化石”のような天体と考えられています。これらの天体を間近で探査することから、ミッションと探査機の名前は、エチオピアで見つかった有名な化石人骨の“Lucy”にちなんで名付けられています。
ちなみに、ルーシーは約320万年前に生息していたアウストラロピテクス・アファレンシスの一体になります。
今回“Lucy”が初めて観測を行うディンキネシュは幅が約700メートルのS型小惑星ですが、打ち上げ時点での探査対象リストには含まれていませんでした。
打ち上げ後に小惑星帯で正確な軌道が判明している50万個の小惑星を調べてみると、“Lucy”がディンキネシュの近くを通過することが判明。
これにより、2023年1月の時点で探査対象として追加されるのですが、この時ディンキネシュはまだ仮符号の“1999 VD57”と呼ばれていました。
でも、運用チームが化石人骨であるルーシーのエチオピア名にちなんだ名前を提案したんですねー
この名前が国際天文学連合(IAU)に承認されたことで、正式にディンキネシュと命名されています。
周回軌道には入らず接近通過による観測
幾つもの小惑星を一度のミッションで探査するので、“Lucy”は小惑星を周回する軌道には入らずに通過しながら探査するフライバイ観測を行います。ディンキネシュの探査は観測装置やシステムのテストと位置付けられていて、自律的に小惑星の位置を特定しながら観測装置の視野内に収め続けるための自動追尾システムがテストされます。
これは、地球からの電波が届くまでに約30分もかかるほど遠くを“Lucy”が飛行しているため。
この距離だと、小惑星との遭遇を対話的に指示することができないんですねー
そのため、科学観測を事前にプログラムしておくことになったわけです。
NASAが公開している“Lucy”によるディンキネシュのフライバイ観測を解説した動画(英語)。(Credit: NASA's Goddard Space Flight Center) |
観測装置を搭載した架台は、最接近の2時間前に所定の位置へ移動。
その後、望遠カメラ“L’LORRI”と熱放射分光器“L’TES”による観測を開始します。
最接近の1時間前には“Lucy”の追跡システムによる小惑星の追跡が始まり、最接近の8分前からは可視光カラーカメラ“MVIC”と赤外線撮像分光器“LEISA”で構成される“L’Ralph”による観測も行われます。
最接近後も1時間にわたってディンキネシュの撮影が続けられ、その後も4日間は“L’ORRI”による撮影は定期的に行われます。
ディンキネシュのフライバイ探査を終えた“Lucy”は、2024年12月に地球フライバイを行って軌道を修正。
2025年には2つ目の探査対象である小惑星帯の小惑星ドナルドジョハンソン(Donaldjohanson)のフライバイ探査を行います。
その後は、2027年のエウリュバテス(Eurybates)とその衛星ケータ(Queta)をはじめ、ミッションの主目標である木星のトロヤ群の小惑星探査が行われる予定です。
ディスカバリー計画のミッションとして2017年に選定されたの“Lucy”。
このミッションは、NASAによる低コストで効率の良いミッションを目指したディスカバリー計画により、提案されていました。
ディスカバリーと言えば、1992年に当時のNASA長官が提唱した、「より速く、より良く、より安く」のスローガンを体現する計画。
過去のディスカバリー計画の探査ミッションには、小惑星“ベスタ”と準惑星“ケレス”を探査した“ドーン”、太陽系外惑星探査を行う“ケプラー”、彗星を探査した“メッセンジャー”などがあります。
そう、低コストのミッションなのに高パフォーマンス!
どれも素晴らしい結果を残しているんですねー
“Lucy”のミッションでも、太陽系の成り立ちやその経過の解明に役立つ発見があるはずです。
なお、探査を終えた“Lucy”は、地球近傍と木星のトロヤ群の間を往復するような軌道を、数十万年に渡り飛び続けることになります。
そんな“Lucy”には未来の人類に向けたメッセージとして、ノーベル文学賞受賞者、米国桂詩人、天文学者、ビートルズのメンバーらの言葉を刻んだメッセージプレート“Lucy Plaque”が搭載されているそうです。
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