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ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡により大量のチリを発見! 超新星爆発の後に形成されたチリは周囲から跳ね返ってきた衝撃波で破壊されない

2023年09月01日 | 宇宙 space
はくちょう座の方向約2200万光年彼方に位置する渦巻銀河“NGC 6946”。
この銀河は、過去100年ほどの間に10件もの超新星が見つかっているので、花火銀河(Fireworks Galaxy)とも呼ばれています。

画像に書き込まれているのは、2004年9月に発見された“SN 2004et”と、2017年5月に発見された“SN 2017eaw”の2つの超新星の位置です。
アメリカ・キットピーク国立天文台で撮影された渦巻銀河“NGC 6946”。超新星“SN 2004et”(左下)と“SN 2017eaw”(右上)の位置が書き込まれている。(Credit: KPNO, NSF's NOIRLab, AURA; Image Processing: Alyssa Pagan (STScI))
アメリカ・キットピーク国立天文台で撮影された渦巻銀河“NGC 6946”。超新星“SN 2004et”(左下)と“SN 2017eaw”(右上)の位置が書き込まれている。(Credit: KPNO, NSF's NOIRLab, AURA; Image Processing: Alyssa Pagan (STScI))
今回、研究チームは、渦巻銀河“NGC 6946”をジェームズウェッブ宇宙望遠鏡で観測。
その結果、これら2つの超新星に伴って、新たに生成された大量のチリを検出したとする研究成果を発表しました。
この研究は、ジョンズ・ホプキンス大学/宇宙望遠鏡科学研究所(STScI)のMelissa Shahbandehさんを筆頭とする研究チームが進めています。

超新星爆発はチリの主な供給源の一つ

今から約138億年前のビッグバンから始まったとされる宇宙の歴史の最初期には、水素とヘリウム、そしてごくわずかのリチウムといった軽い元素しか存在していませんでした。

特に惑星の材料として欠かせないチリ(星間チリ、星間ダスト)のもとになる重元素は、初代星(ファーストスター)とも呼ばれる宇宙最初の世代の星々が誕生した後に生成されたと考えられています。
天文学では、水素とヘリウムよりも重い元素のことを“重元素”と呼び、水素に対する重元素の割合は重元素量と呼ぶ。重元素は恒星内部の核融合反応により合成され、恒星の死に伴い星間空間へと放出される。なので、星の生と死のサイクルが十分に繰り返されていない初期の宇宙では、現在の宇宙に比べて重元素量が低かったと考えられている。
ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡を運用する宇宙望遠鏡科学研究所によると、太陽よりも8倍以上重い大質量星が超新星爆発を起こした後、残されたガスが膨張して温度が下がると炭素などが集まってチリが形成されることから、超新星爆発はチリの主な供給源の一つではないかと考えられてきました。

ただ、これまでに得られていた“超新星爆発がチリの供給源であることを示す直接的な証拠”は乏しく、これまでの観測能力で研究できたのは、1987年2月に約17万光年先の大マゼラン雲(大マゼラン銀河)で発見された超新星“SN 1987A”だけでした。

チリは衝撃波に耐えられる

“SN 1987A”では、発見から25年後の2012年に実施された南米チリのアルマ望遠鏡による観測で、爆発後に新たに形成されたとみられるチリ(質量は太陽の約4分の1)が、残骸の中心部で検出されています。

今回、研究チームはジェームズウェッブ宇宙望遠鏡の中間赤外線観測装置“MIRI”を用いて、“SN 2004et”と“SN 2017eaw”が検出された位置を2022年9月に観測。
ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、NASAが中心になって開発した口径6.5メートルの赤外線観測用宇宙望遠鏡。ハッブル宇宙望遠鏡の後継機として、2021年12月25日に打ち上げられ、地球から見て太陽とは反対側150万キロの位置にある太陽―地球間のラグランジュ点の1つの投入され、ヨーロッパ宇宙機関と共同で運用されている。名称はNASAの第2代長官ジェームズ・E・ウェッブにちなんで命名された。
すると、“SN 2004et”では地球約4600個分(太陽の質量の1.4%)以上、“SN 2017eaw”では地球約130個分(太陽の質量の0.04%)以上のチリが、超新星爆発の噴出物内に存在することが判明しました。
ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡の中間赤外線観測装置“MIRI”で観測された超新星“SN 2004et”(左)と“SN 2017eaw”(右)。各画像の右上には拡大図が示されている。6種類のフィルターを使用して取得したデータに青・緑・赤を割り当てて作成されている。(Credit: NASA, ESA, CSA, Ori Fox (STScI), Melissa Shahbandeh (STScI); Image Processing: Alyssa Pagan (STScI))
ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡の中間赤外線観測装置“MIRI”で観測された超新星“SN 2004et”(左)と“SN 2017eaw”(右)。各画像の右上には拡大図が示されている。6種類のフィルターを使用して取得したデータに青・緑・赤を割り当てて作成されている。(Credit: NASA, ESA, CSA, Ori Fox (STScI), Melissa Shahbandeh (STScI); Image Processing: Alyssa Pagan (STScI))
超新星爆発の後に形成されたチリは、周囲の物質から跳ね返ってきた衝撃波によって破壊される可能性があります。
なので、爆発から18年および5年という段階で検出されたチリの存在は、チリが衝撃波に耐えられることを示唆しているんですねー
このことは、超新星が重要な“チリの工場”であることを示す証拠だとして、受け止められることになります。

また、今回検出されたチリは氷山の一角に過ぎず、もっと低温で検出されていないチリが隠されている可能性もあるようです。

ただ、ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡を用いた観測・研究について研究チームは、新たに得られた超新星および超新星にともなうチリの生成についての研究能力や、超新星爆発を起こした星に関して、どのような情報が得られるのかを示唆するものにすぎないと強調しています。
研究を進めるには、より多くの観測が必要だと指摘しています。

地球に住む私たちとも無縁ではない宇宙のチリは、どのようにして形成されてきたのでしょうか?
この疑問について、ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡が新たな知見をもたらしてくれるはずです。


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