地球唯一の衛星“月”は、どうやって形成されたのでしょうか?
長年の研究により、月が形成される原因として最も有力なのは“ジャイアントインパクト(巨大衝突)”説になります。
この説によれば、、45億年前に火星サイズの天体“テイア”が、作られて間もない原始の地球に衝突。
この衝突から生まれた破片が、かなり急速(おそらく数百万年強の間)に分離し、地球と月を形成したと考えられています。
でも、この衝突の直接的な証拠を見つけることは困難なことなんですねー
今回の研究では、地球のマントル深部に存在する巨大な塊“LLVP”が、ジャイアントインパクトで衝突した“テイア”の残骸ではないかということを、シミュレーションにより明らかにしています。
この研究が正しい場合、どうやって形成されたのかが明らかになっていない月とLLVPの両方を説明できることになります。
月を形成した巨大衝突の痕跡
夜空でもひときわ目立つ巨大な天体“月”は、地球唯一の衛星です。
太陽系全体を見渡しても月は5番目に大きな衛星で、周回している惑星との直径比・質量比は太陽系で最大になります。
月と同程度の大きさの他の衛星は、地球よりずっと大きな惑星を周回していることを考えると、月がどのように地球の衛星として誕生したのかは大きな謎といえます。
長年の研究により、月が形成される原因として最も有力な説はジャイアントインパクト(巨大衝突)説になります。
この説によれば、45億年前に火星サイズの天体“テイア”が、作られて間もない原始の地球に衝突。
この衝突から生まれた破片が、かなり急速(おそらく数百万年強の間)に分離し、地球と月を形成したと考えられています。
大きい方は地球になり、大気と海のある地質学的に活発な惑星になるのにちょうどよい大きさと環境へと進化。
小さい方が月になるのですが、こちらには地球のような特性を保持するのに十分な質量はありませんでした。
現状では、このジャイアントインパクト説が月の誕生の様子や地質学的証拠に最も一致しています。
ただ、ジャイアントインパクトのエネルギーは膨大で、衝突による痕跡は地球の表面付近には残っていないと考えられています。
このため、ジャイアントインパクトの痕跡を探すことは、とても困難なことといえます。
マントル最下部に存在する巨大な塊の正体
一方、地球科学の発達により、1980年代には地球の中心核とマントルの境目付近である下部マントル深部に、“LLVP(Large low-shear-velocity provinces)”と呼ばれる巨大な塊が存在することが明らかになっています。
現状の技術では、地球を掘って深部の様子を確かめることはできません。
なので、地球の深部の様子は“地震波トモグラフィー”と呼ばれる地震波を使った手法で調べられます。
LLVPの特徴として、周辺と比べて地震波の伝わる速さが遅い傾向があります。
LLVPの面積は大陸に匹敵し、厚さは最大で1000キロにもなるので、マントルの8%、地球全体の6%を占めるほど大規模な構造の集まりと言えます。
さらに、LLVPは主要な2つの領域が、太平洋とアフリカ大陸の下に分かれて存在しています。
このことが示唆しているのは、LLVPが地球誕生時よりも後に生成されたことでした。
でも、LLVPの起源は未だによく分かっていないんですねー
現在、最も有力なものは、“プレートテクトニクスで沈み込んだ海洋地殻の残骸”っという説です。
でも、次点候補として“テイアの残骸”とする説も挙がっています。
地球に衝突したテイアの残骸
今回の研究では、地球とテイアの衝突をシミュレーションで再現。
その結果として、LLVPが形成されるのかどうかを調べています。
月の石の分析結果から推定されるのは、LLVPは周辺のマントルと比べて鉄が多く、密度が高いこと。
一方でシミュレーションからは、テイア由来の物質は周辺のマントル物質と比べて、2.0~3.5%密度が高いことが示唆されています。
今回のシミュレーション結果では、現在のLLVPの状況と同じく、地球に衝突したテイアの残骸が2つに分裂し、下部マントルの深部に沈み込むことが明らかになりました。
また、LLVPが塊として存在する理由も明らかになります。
もし、ジャイアントインパクトの際に発生した熱が多い場合、テイアの残骸は完全に融けてしまい、その後のマントル循環でマントル物質と混ざってしまいます。
でも、今回のシミュレーションでは、下部マントルまでは熱がさほど伝わらないことが明らかにされました。
この場合、紅茶に沈み込んだジャムのように、下部マントルに沈み込んだテイアの残骸は、マントル循環の中でもマントル物質と混ざることは無く、塊のまま存在することになります。
これは、LLVPが下部マントルの深部で塊として存在する現状と一致します。
このため、LLVPがテイアの残骸である可能性は十分にあると考えることができます。
今回の研究結果が正しい場合、どうやって形成されたのかが明らかになっていなかった、月とLLVPの両方を説明できることになります。
LLVPを直接採取し分析することは、現状の技術では不可能です。
なので、この研究結果を確かめるには、LLVPが存在することによって発生する間接的な影響を調べる必要があります。
そこで、研究チームが次の研究課題としているのは、LLVPが存在することによるプレートテクトニクスへの影響について調査を行うことです。
LLVPがテイアの残骸である場合、LLVPは太古の地球に存在したことになります。
この場合、LLVPがプレートテクトニクスの原動力となるマントル循環に影響を与えた可能性は否定できず、従って大陸形成のような地球表面のダイナミクスにも大きな影響を与えたはずです。
今後、研究チームでは、LLVPの存在とプレートテクトニクスの影響に関するシミュレーションを行うことで、今回の研究結果の妥当性を検証するそうです。
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長年の研究により、月が形成される原因として最も有力なのは“ジャイアントインパクト(巨大衝突)”説になります。
この説によれば、、45億年前に火星サイズの天体“テイア”が、作られて間もない原始の地球に衝突。
この衝突から生まれた破片が、かなり急速(おそらく数百万年強の間)に分離し、地球と月を形成したと考えられています。
でも、この衝突の直接的な証拠を見つけることは困難なことなんですねー
今回の研究では、地球のマントル深部に存在する巨大な塊“LLVP”が、ジャイアントインパクトで衝突した“テイア”の残骸ではないかということを、シミュレーションにより明らかにしています。
この研究が正しい場合、どうやって形成されたのかが明らかになっていない月とLLVPの両方を説明できることになります。
この研究は、アリゾナ州立大学のQian Yuanさんたちの研究チームが進めています。
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図1.ジャイアントインパクト説のイメージ図。(Credit: Hernán Cañellas) |
月を形成した巨大衝突の痕跡
夜空でもひときわ目立つ巨大な天体“月”は、地球唯一の衛星です。
太陽系全体を見渡しても月は5番目に大きな衛星で、周回している惑星との直径比・質量比は太陽系で最大になります。
月と同程度の大きさの他の衛星は、地球よりずっと大きな惑星を周回していることを考えると、月がどのように地球の衛星として誕生したのかは大きな謎といえます。
長年の研究により、月が形成される原因として最も有力な説はジャイアントインパクト(巨大衝突)説になります。
この説によれば、45億年前に火星サイズの天体“テイア”が、作られて間もない原始の地球に衝突。
この衝突から生まれた破片が、かなり急速(おそらく数百万年強の間)に分離し、地球と月を形成したと考えられています。
大きい方は地球になり、大気と海のある地質学的に活発な惑星になるのにちょうどよい大きさと環境へと進化。
小さい方が月になるのですが、こちらには地球のような特性を保持するのに十分な質量はありませんでした。
現状では、このジャイアントインパクト説が月の誕生の様子や地質学的証拠に最も一致しています。
ただ、ジャイアントインパクトのエネルギーは膨大で、衝突による痕跡は地球の表面付近には残っていないと考えられています。
このため、ジャイアントインパクトの痕跡を探すことは、とても困難なことといえます。
マントル最下部に存在する巨大な塊の正体
一方、地球科学の発達により、1980年代には地球の中心核とマントルの境目付近である下部マントル深部に、“LLVP(Large low-shear-velocity provinces)”と呼ばれる巨大な塊が存在することが明らかになっています。
現状の技術では、地球を掘って深部の様子を確かめることはできません。
なので、地球の深部の様子は“地震波トモグラフィー”と呼ばれる地震波を使った手法で調べられます。
LLVPの特徴として、周辺と比べて地震波の伝わる速さが遅い傾向があります。
LLVPの面積は大陸に匹敵し、厚さは最大で1000キロにもなるので、マントルの8%、地球全体の6%を占めるほど大規模な構造の集まりと言えます。
さらに、LLVPは主要な2つの領域が、太平洋とアフリカ大陸の下に分かれて存在しています。
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図2.LLVPの分布図。LLVPは太平洋とアフリカ大陸の下側に、2つの塊に分かれて存在している。(Credit: Edward Garnero) |
でも、LLVPの起源は未だによく分かっていないんですねー
現在、最も有力なものは、“プレートテクトニクスで沈み込んだ海洋地殻の残骸”っという説です。
でも、次点候補として“テイアの残骸”とする説も挙がっています。
地球に衝突したテイアの残骸
今回の研究では、地球とテイアの衝突をシミュレーションで再現。
その結果として、LLVPが形成されるのかどうかを調べています。
月の石の分析結果から推定されるのは、LLVPは周辺のマントルと比べて鉄が多く、密度が高いこと。
一方でシミュレーションからは、テイア由来の物質は周辺のマントル物質と比べて、2.0~3.5%密度が高いことが示唆されています。
今回のシミュレーション結果では、現在のLLVPの状況と同じく、地球に衝突したテイアの残骸が2つに分裂し、下部マントルの深部に沈み込むことが明らかになりました。
また、LLVPが塊として存在する理由も明らかになります。
もし、ジャイアントインパクトの際に発生した熱が多い場合、テイアの残骸は完全に融けてしまい、その後のマントル循環でマントル物質と混ざってしまいます。
でも、今回のシミュレーションでは、下部マントルまでは熱がさほど伝わらないことが明らかにされました。
この場合、紅茶に沈み込んだジャムのように、下部マントルに沈み込んだテイアの残骸は、マントル循環の中でもマントル物質と混ざることは無く、塊のまま存在することになります。
これは、LLVPが下部マントルの深部で塊として存在する現状と一致します。
このため、LLVPがテイアの残骸である可能性は十分にあると考えることができます。
今回の研究結果が正しい場合、どうやって形成されたのかが明らかになっていなかった、月とLLVPの両方を説明できることになります。
LLVPを直接採取し分析することは、現状の技術では不可能です。
なので、この研究結果を確かめるには、LLVPが存在することによって発生する間接的な影響を調べる必要があります。
そこで、研究チームが次の研究課題としているのは、LLVPが存在することによるプレートテクトニクスへの影響について調査を行うことです。
LLVPがテイアの残骸である場合、LLVPは太古の地球に存在したことになります。
この場合、LLVPがプレートテクトニクスの原動力となるマントル循環に影響を与えた可能性は否定できず、従って大陸形成のような地球表面のダイナミクスにも大きな影響を与えたはずです。
今後、研究チームでは、LLVPの存在とプレートテクトニクスの影響に関するシミュレーションを行うことで、今回の研究結果の妥当性を検証するそうです。
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