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金星誕生から10億年間の活発なプレートテクトニクスが分厚い大気を作った? プレートテクトニクスは大気が濃くなり過ぎて停止した

2024年01月07日 | 金星の探査
地球の内側を公転し、その大きさや質量が地球と似ていることから、しばしば地球の双子星と呼ばれる金星。
でも、その大気や環境は地球とは全く異なっていて、金星には二酸化炭素を主体とする非常に分厚い大気があり、プレートテクトニクスは存在しないことになっています。

同じ岩石惑星なのに、どうしてこのような違いが生じたのでしょうか?
この謎は今も議論が続いているんですねー

今回の研究では、金星の大気に関するコンピューターモデルを使用して、この謎を解明しようとしています。

その結果分かってきたのは、金星のプレートテクトニクスは少なくとも10億年の間は活発でなければ、現在の分厚い大気を生み出すことができないということでした。

このことは、「金星の分厚い大気はプレートテクトニクスがほぼ存在しなかったから存在する」っという、これまでの見方とは真逆なもの。
地球と金星の運命を分けた原因に迫る興味深い結果になります。
この研究は、ブラウン大学に所属していたMatthew B. Wellerさんたちの研究チームが進めています。
図1.金星大気の下にある地表のレーダー画像。これまで、金星の歴史を通じてプレートテクトニクスはずっと停止していると考えられていた。(Credit: NASA & JPL)
図1.金星大気の下にある地表のレーダー画像。これまで、金星の歴史を通じてプレートテクトニクスはずっと停止していると考えられていた。(Credit: NASA & JPL)


金星ではプレートテクトニクスを示す痕跡は見つかっていない

金星は地球の約95%の直径と約82%の質量を持ち、大きさに関してはどの天体よりも地球と似ている天体です。
このため、金星はしばしば地球の双子星と呼ばれます。

その類似性から、1960年代に探査機が接近観測を行うまで、金星は地球の石炭紀のような、高温湿潤の環境を持っているという考えが一般的でした。

でも、実際の金星の表面環境が、地球とはあまりにもかけ離れていることが分かってきます。

金星には、地表の気圧が地球の92倍にも達する分厚い大気があり、主成分の二酸化炭素による温室効果で気温は460℃にも… これは鉛を融かすほどの温度でした。

地球とは似ても似つかない大気を持つ理由は、金星の大きな謎の一つになります。
それと同時に、なぜ地球は金星のような大気を持っていないのか? っという地球大気の謎にも関連していました。

金星が現在のような大気を持つ理由の一つとして長年考えられてきたのが、金星にはプレートテクトニクスが無いことです。
このことも金星が地球と大きく異なる点として挙げられます。

地球の表面は柔軟で、内部で対流するマントルによって引っ張られたり、押し締められたりしています。

そして地球の進化に伴い、この押し合いへし合いによって最も外側を構成する岩石の薄皮“地殻”に亀裂が入り、何枚もの移動するプレートに分裂することになります。

プレートは内部の対流を原動力にゆっくりと動いていて、新たに生成される場所や天体内部へと沈み込む場所もあります。
この全体の運動がプレートテクトニクスになります。

でも、プレートテクトニクスは重要なものなのでしょうか?

実は、プレートは地球の温度調整に重要な役割を果たしているんですねー

プレートが互いに衝突すると火山の噴火を引き起こし、大気に不可欠な温室効果ガスが吐き出されます。
また、地球の温度が上がりすぎると、プレートの変動によって、余分なガスが地球内部に取り込まれていきます。

この活動的なプレートテクトニクスの存在が知られている惑星は、
今のところ地球だけ… この点こそが、地球を特別な存在にしています。

プレートテクトニクスは地表と内部で物質の循環が行われるので、地球では内部から地表へと金属、水、気体などが供給される原動力として、プレートテクトニクスが重視されています。

一方で金星の地殻は、1枚の分厚いプレートで構成されているように見え、少なくとも現在のところはプレートテクトニクスを示す痕跡は見つかっていません。

このことから、これまでは金星の表面は1枚の蓋で閉ざされていて、金星の内部から地表への物質の供給は最小限であったと推定されていました。

これは、誕生直後の金星では表面全体が溶けたマグマオーシャンの状態から、プレートが複数に分裂せずにそのまま固まったことを示唆しています。


誕生から10億年間の活発なプレートテクトニクスが金星の分厚い大気を作った

今回の研究では、現在の金星大気がどのように形成されたのかを知るため、地殻の活動の条件を様々に変えることで調査しています。
元々、太陽以外の恒星を公転する太陽系外惑星の大気について調査するコンピュータモデルを適用しています。

研究チームでは、太陽系外惑星の現在の大気から、惑星が誕生した初期の状況を知ることができるかどうかを調べていて、その終点として金星の調査を行ったわけです。

まず、金星のプレートテクトニクスが歴史を通じて完全に停止しているという過程で計算を実施。
すると、現在の二酸化炭素と窒素を主体とする非常に濃い大気が生成されず、結果が矛盾することが明らかになります。

そこで研究チームでは、金星のプレートテクトニクスが誕生からある時点で停止したとする仮定のもと、様々な停止タイミングを調査していきます。

その結果、明らかになったのは、金星の誕生から少なくとも10億年間の活発なプレートテクトニクスと、その後の停止期間があると、現在の金星の大気が生じることでした。
プレートテクトニクスがある場合、火山ガスによって二酸化炭素や窒素が供給されるためでした。


濃くなり過ぎた大気がプレートテクトニクスを停止させた

今回の研究結果は、金星にプレートテクトニクスが存在したという意味で、これまでの金星に対するイメージを大幅に変えるものでした。
さらに、どのようにして地球と金星の運命が分かれたのかを知る上でも興味深い疑問となります。

もし、過去の金星に活発なプレートテクトニクスがあった場合、なぜ金星ではプレートテクトニクスが停止し、地球では停止しなかったのかを説明する必要があるためです。

研究チームでは、大気が濃くなり過ぎたことが、プレートテクトニクスを停止させた原因ではないかと考えています。

分厚い大気は温室効果を発生させ、プレートテクトニクスに必要な水などの成分を蒸発させてしまうので、これは十分に考えられます。
このことは、少なくとも初期の金星は生命に適していた環境を持っていた可能性にもつながります。

この場合、生命に適している環境を持つ惑星が、その後の生命に適さない環境へと変化するかもしれないことを示唆します。

惑星環境の進化の条件を詳しく突き止めることは、地球環境の変化を探ることや、地球と似た太陽系外惑星を見つける上でも影響するようですね。


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