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アマゾン創業者が設立したブルー・オリジン社が宇宙船“ニューシェパード”の飛行に成功! NASA開発の月面着陸技術も試験

2020年10月23日 | 宇宙へ!(民間企業の挑戦)
2020年10月13日、アメリカの民間宇宙企業ブルー・オリジン社が、サブオービタル機“ニューシェパード”の打ち上げに成功したんですねー
機体は宇宙空間に到達後、着陸にも成功。
今回の打ち上げでは、将来の月面や火星への着陸に使う新開発のセンサーの試験を含む、12個の実験も行われたそうです。
宇宙に到達した後に着陸する“ニューシェパード”のブースター(Credit: Blue Origin)
宇宙に到達した後に着陸する“ニューシェパード”のブースター(Credit: Blue Origin)

10か月ぶりのミッション“NS-13”

“ニューシェパード”が西テキサスにあるブルー・オリジン社の試験施設から離床したのは、日本時間の10月13日22時35分のことでした。

機体は計画通り飛行し、ブースターとクルー・カプセルを分離。
両機は高度約105キロに到達したのち、まずブースターが着陸し、その後カプセルもパラシュートで着陸しています。

“ニューシェパード”の飛行は今回が通算で13回目で、その中で成功は12回になるんですねー
また、今回飛行した3号機のブースターとクルー・モジュールを使った飛行は、今回で7回続けての成功になりました。

今回のミッション“NS-13”では、ブースター部分にNASAが開発した“軌道離脱・下降・着陸センサー”を搭載し、試験が行われています。

これらの装置は、月面の複雑な地形への精密着陸を行うために開発されたもの。
指定された地点に、100メートル以内の精度で自律的に着陸することを可能にしています。

この技術により、将来的にはクレーターの近くの複雑な地形など、アポロ計画では着陸できなかったような場所に宇宙飛行士や無人探査機を着陸させることが可能になるそうです。
さらに、その先の火星着陸への応用も可能としています。

ブルー・オリジン社は、NASAが進める有人月探査計画“アルテミス”で使用される、月着陸船を開発する民間企業の一つに選ばれています。
今回の試験はその開発の一環で、月面着陸を“ニューシェパード”を使ってシミュレートしたことになります。

この他、カプセル部分に搭載されたのは、宇宙で植物を自律的に育てるシステムや、小惑星や月の砂をその天体の地表に固定するためのシステム、宇宙船の電子機器を冷却する新技術など。
これらは11個の実験ペイロードに入れられ、微小重力環境を利用した実験が行われています。

当初打ち上げが9月に予定されていた“NS-13”ミッション。
天候不良や技術的な問題により延期を繰り返し、2019年12月に行われた“NS-12”ミッション以来、約10か月ぶりの飛行になりました。

軌道離脱・下降・着陸センサーの試験は晴れの日に行う必要があったので、天候条件は通常より厳しいものになったそうです。
これらセンサーの試験は、今回を含め計2回行われることになっています。
“ニューシェパード”のブースターに装着された軌道離脱・下降・着陸センサー。(Credit: Blue Origin)
“ニューシェパード”のブースターに装着された軌道離脱・下降・着陸センサー。(Credit: Blue Origin)

サブオービタル宇宙船“ニューシェパード”

ブルー・オリジン社は、インターネット小売り大手のアマゾン・ドット・コムの創業者ジェフ・ベゾス氏が設立したアメリカの民間宇宙企業です。

“ニューシェパード”はブルー・オリジン社が開発中の機体で、ソユーズやスペースX社のクルー・ドラゴン宇宙船などとは異なり、地球を回る軌道には乗りません。
宇宙空間(高度100キロ以上)に到達する“サブオービタル宇宙船”と呼ばれる種類の機体で、地球を1周する前に地上に帰還するサブオービタル軌道を飛ぶことになります。
“ニューシェパード”の打ち上げから着陸。(Credit: Blue Origin)
“ニューシェパード”の打ち上げから着陸。(Credit: Blue Origin)
機体を構成しているのはブースターと呼ばれるロケットとカプセル。
カプセルには最大6人の乗員・乗客や、実験・観測装置をのせることができます。

また、ブースターとカプセルは繰り返し再使用することができ、運用コストの低減が図られています。

“ニューシェパード”の1号機が初飛行を実施したのは2015年。
これまでに3機が建造され、今回までに13回の試験飛行を行っています。
今回は3号機の7回目の飛行でした。

これまでの飛行では、まず宇宙空間に到達できるかということから始まり、ブースターやカプセルを安全に着陸・回収できるのかという試験、機体を再使用できるかどうかという試験、そしてカプセルのパラシュートがすべて開かなかった場合でも安全に着陸できるのかという試験が行わてきました。

2016年には、飛行中にブースターが最も負荷がかかる段階でトラブルが起きたという想定で、カプセルを脱出させる試験にも成功。

さらに2018年には、ブースターのエンジンの燃焼が終わり、ほぼ宇宙まで達したところでトラブルが起きたという想定。
カプセルを脱出させ、そこから安全に帰還することができるかを調べる試験も行われました。

ブルー・オリジン社が将来的に目指しているのは、“ニューシェパード”に科学者や宇宙旅行者をのせて飛行すること。

過去には「数年以内」といった実現目標が語られたり、「1人当たりのチケット代は約2200~3300万円になる」という話が出回ったりもしました。
でも、その後開発・試験計画の見直しもあってトーンダウン…
現在は具体的なスケジュールや金額について、詳しいことを明らかにしていません。

一方、人をのせた飛行に向けた試験を進めるのと並行して提供されているのが、カプセルに実験機器を搭載するサービス。
こちらは、NASAや大学、民間企業などが顧客になり、今回のような様々な試験や実験が行われています。
宇宙から帰還した“ニューシェパード”のクルー・モジュールには、将来的には人が乗り込む予定。(Credit: Blue Origin)
宇宙から帰還した“ニューシェパード”のクルー・モジュールには、将来的には人が乗り込む予定。(Credit: Blue Origin)


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