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アメリカ宇宙探査史上初めての小惑星からのサンプルリターン! NASAの“オシリス・レックス”がベンヌへの着地とサンプル採取に成功

2020年10月26日 | 太陽系・小惑星
NASAの小惑星探査機“オシリス・レックス”が小惑星ベンヌへの着地に成功しました。
“オシリス・レックス”のミッションは、日本の“はやぶさ”や“はやぶさ2”と同様に小惑星からサンプルを採取して地球に持ち帰ること。
順調に進めば、小惑星からのサンプルリターンは日本に続き2番目の成功になり、アメリカ宇宙探査史上でも初めてのことになるんですねー
サンプル採取の成否は今月末にかけて確認されるそうです。
“オシリス・レックス”のカメラがとらえた着地の様子。機体が降下し(左)、ロボットアームの先端がベンヌの地表に触れると、小石などが舞い上がっている。(Credit: NASA/Goddard/University of Arizona)
“オシリス・レックス”のカメラがとらえた着地の様子。機体が降下し(左)、ロボットアームの先端がベンヌの地表に触れると、小石などが舞い上がっている。(Credit: NASA/Goddard/University of Arizona)

小惑星ベンヌへの降下

“オシリス・レックス”が小惑星ベンヌへ降下を開始したのは日本時間10月21日午前2時50分。
北半球にあるクレーター“ナイチンゲール”の中を目指していました。
“オシリス・レックス”はNASAとロッキード・マーティン社、アリゾナ大学などが開発した小惑星探査機。打ち上げ時の質量は約2110キロで、同じようなミッションを背負った日本の“はやぶさ2”の約3.5倍にもなる。2016年9月9日午前8時5分(日本時間)に、フロリダ州のケープカナベラ空軍ステーションからアトラスVロケットで打ち上げられた。

“オシリス・レックス”はスラスターを噴射して、地球から約3億2000万キロ離れた小惑星ベンヌ上空の周回軌道から離脱。
上空約800キロで長さ3.35メートルのサンプル採取アーム“TAGSAM”を伸ばし、4時間かけて高度を約125メートルまで下げています。

ここで、スラスターを噴射してベンヌへ一気に降下し、10分後に再びスラスターを噴射して減速。
“オシリス・レックス”の動きをベンヌの自転速度に合わせたんですねー

最後の11分間は、“オシリス・レックス”の自動航行システム“ブルズアイTAG”を使い、岩石を避けてナイチンゲールを目指しています。
“ブルズアイTAG”ではベンヌ表面の画像を使い探査機が表面に接地するまで高い精度で誘導する。
直径約8メートルの“ナイチンゲール”は、予想外に岩塊に覆われているベンヌの表面の中で、比較的開けている数少ない地点の一つでした。

サンプルの採取方法

“オシリス・レックス”のサンプル採取方法は“タッチ・アンド・ゴー(Touch And Go:TAG)”と呼ばれています。

“はやぶさ2”は地表に向けて弾丸を発射して舞い上がった地表物質を採取します。
これに対して、“オシリス・レックス”が採用したのは、地表に窒素ガスを吹き付けて舞い上がった物質を採取する方法。
採取時には、探査機本体から“TAGSAM”と呼ばれるアームを伸ばし、その先端をベンヌの表面に接地すると同時に窒素ガスを噴射します。

送られてきた信号によれば、21日午前7時8分に“オシリス・レックス”は無事タッチダウンし、サンプルの採取に成功したとみられています。

サンプル採取アーム“TAGSAM”先端のサンプリングヘッドが、ベンヌの表面に接地していたのは6秒間ほど。
その間に窒素ガスを噴射して、巻き上げられた地表物質を容器に回収し、その後“オシリス・レックス”は正常に上昇しています。

小惑星からのサンプルリターンを世界で初めて成功させたのは2010年の“はやぶさ”でした。
彗星からのサンプル回収を2006年に成功させたアメリカですが、小惑星では今回が初めての挑戦になります。
サンプル採取のため小惑星ベンヌへ降下する“オシリス・レックス”のイメージ図。(Credit: NASA/Goddard/University of Arizona)
サンプル採取のため小惑星ベンヌへ降下する“オシリス・レックス”のイメージ図。(Credit: NASA/Goddard/University of Arizona)

サンプルが採取されているかの確認

サンプル採取の成否確認も“オシリス・レックス”と“はやぶさ”では異なっています。

“はやぶさ”が地球帰還後にカプセル内を調べて確かめるのに対して、“オシリス・レックス”のサンプル確認は現地で行われます。

“TAGSAM”先端のカメラ“SamCam”がタッチダウンの前後に撮影した82枚の画像や、機体を回転させて回収装置の重さの変化を調べ、採取されたサンプルの量を見積もることになります。
“オシリス・レックス”のカメラが撮影した画像から作成されたタッチダウン時の動画。(Credit: NASA)
サンプルが少なくとも60グラム採取されていることが確認できれば、“TAGSAM”から探査機本体のカプセルへとサンプルが格納されます。
もし、目標量に達していない場合は、2021年1月12日に再びタッチダウンを実施。
2度目のサンプル採取地点は、ベンヌの赤道付近に位置するクレーター内にある比較的岩塊の少ない“オスプレイ”と呼ばれる場所になります。

その後の運用チームにより、サンプルの採取装置はベンヌの地表に対して水平に接地し、数センチもめり込むほど完璧なタッチダウンだったことが確認されました。
装置内部はチリや石で一杯になっていて、60グラム以上という目標をはるかに上回る量が採取できたそうです。

一方、判明したのが採取したサンプルの一部がこぼれだしていること。
運用チームは、やや大きめの石が入っていたので、採取装置の蓋が締まりきらず、その隙間から小さな断片が通過していると考えています。

当初、探査機を回転させることで採取装置に入ったサンプルの量を測ったり、探査機にブレーキをかけるためスラスターを噴射したりといった運用を計画していたのですが、探査機を動かすとサンプルがさらに失われる可能性があるので、これらを取り止めています。
まず、サンプルを回収カプセルに収容することを優先させるそうです。

サンプルを格納した“オシリス・レックス”は、2021年3月にベンヌを出発し、2023年9月24日にサンプルを地球へ届ける予定です。

地球近傍小惑星の一つであるアポロ群に属しているベンヌは、1999年に発見された直径約560メートルの小惑星で、そろばんの玉のような形をしています。

有機物(炭素を含む化合物)や水を多く含む“C型小惑星”と呼ばれる天体に分類されていて、これは“はやぶさ2”が探査した小惑星リュウグウと同じ特徴といえます。
現在のベンヌの軌道から、将来的に地球に衝突する可能性がわずかにあることも知られている。
左が小惑星ベンヌ(Credit: NASA/Goddard/University of Arizona)、右がリュウグウ。形や表面の様子が互いに似ている。(Credit: JAXA/University of Tokyo)
左が小惑星ベンヌ(Credit: NASA/Goddard/University of Arizona)、右がリュウグウ。形や表面の様子が互いに似ている。(Credit: JAXA/University of Tokyo)
こうした小惑星は、46億年前の太陽系形成時の始原的物質を保持している“化石”と考えられているんですねー

なので、探査や持ち帰ったサンプルを詳しく分析することで、太陽系初期の様子や惑星形成などに関する手掛かりが得られるはず。
さらに、生命の起源の謎を解く手がかりも得られると期待されています。

一方、今年12月6日の地球帰還に向けて、“はやぶさ2”は地球から約1700万キロの位置を航行しています。
日本とアメリカは小惑星からのサンプルリターンで成果を競うかたちになりますが、回収したサンプルを交換して分析するなどの協力関係も結んでいるようですよ。


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