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新タイプのブラックホール発見などなど… JAXAが天文衛星“すざく”の科学的成果をとりまとめ

2015年11月15日 | 宇宙 space
日本で5番目のX線天文衛星

X線天文衛星“すざく”の科学的成果をJAXAがまとめたんですねー

“すざく”は、宇宙の高温プラズマの高精細な分光観測と、
高感度・広帯域の測光・分光観測によりブラックホール周辺の物質運動、
銀河団の形成・進化の問題に、新しい光を当てるために開発されたX線天文衛星です。

2001年に旧宇宙研が第23号科学衛星(ASTRO-E11)の開発に着手。
2005年7月10日にM-Vロケット6号機で打ち上げに成功し、“すざく”と命名されています。
X線天文衛星“すざく(ASTRO-E11)”

日本で5番目のX線天文衛星で、日米の国際協力により製作が進められた“すざく”。

観測天体は、世界中から募った観測提案の中から審査によって選ばれるという、
国際天文台として機能してきたんですねー

“すざく”は、目標寿命の2年を大幅に超える10年にわたって観測を続けてきました。

国際天文台として世界中の研究者に観測の門戸を開き、
2014年12月末までに、査読付き論文762件、学位論文227件を発表するなど、
多くの成果創出に貢献してきています。


世界最高レベルの感度で多くの発見へ

広い波長域にわたって世界最高レベルの感度を達成するなど、
高い観測能力を実証した“すざく”。

銀河団の合体などによる宇宙の構造形成、
ブラックホール直近領域の探査(エネルギー解放や時空構造の解明)などについて、
成果を挙げてきました。

具体的に挙げると、

ペルセウス座銀河団をX線で観測し、
外から落ち込んでくるガスが塊をなして銀河団に落下し、
理論予測の通りの位置で銀河団ガスとの衝突が起きていること、
高温ガスに占める鉄の割合が銀河団の外縁部まで、
どこでも一定であることを発見。
ハッブル宇宙望遠鏡で撮影した、
ペルセウス銀河団中中心に位置している銀河“NGC 1275”

可視光で見ると、一見普通の渦巻き銀河に見える“ESO 005-G004”、“ESO 297-G018”をX線で観測。
その中心に、極めて厚いガスに埋もれたまったく新しいタイプの活動銀河核(ブラックホール)が、
存在することを発見。
“ESO 005-G004”の中心核にある巨大ブラックホール周囲(イメージ図)
まわりを囲む物質は「ドーナツ」よりも「殻」に近く、
ほとんどの光がさえぎられている。

“はくちょう座X-1”のブラックホールに伴星からガスが落ち込む際、
そのガスが最後の100分の1秒程度の間に10億度以上にまで急激に加熱され、
高エネルギーX線を出すことを発見。
ブラックホール連星系(イメージ図)
左側の伴星(恒星)から、右側のブラックホールに物質が吸い込まれている。
ブラックホール周辺に円盤状にたまった物質が、X線で明るく輝いている。

などなど、多くの発見に貢献しているんですねー


10年の科学観測を終了

一方、衛星搭載バッテリの劣化が進み、
観測継続のためにバッテリの使用方法を工夫しながら科学観測を続けていました。

でも、今年の6月1日以降、
衛星の動作状況を知らせる通信が間欠的にしか確立できない状態が続き、
JAXAでは復旧運用を行っていたんですねー

この問題の原因は、
バッテリーの劣化か故障による電力不足だと推測されていて、
電源が失われた“すざく”は姿勢制御ができず、
およそ3分間に1回の周期で無制御にスピンをすることに…

そのため、スピン中で衛星の太陽電池パドルに、
太陽の日が当たっている時間だけ衛星の電源が入り、
日が当たらなくなると、ただちに衛星の電源が切れる、
という状況に陥っているんですねー

その後、JAXAでは科学観測を終了することに決定。

通信やバッテリー、姿勢制御の状況から、
科学観測を再開することが困難な状態だと判断したそうです。

現在は、運用終了に向けて作業中で、
JAXAのスペースデブリ発生防止標準に基づき、搭載の推進系燃料は排出済み。

また、ハッテリ切り離し運用も完了し、送信電波も停波する予定です。

“すざく”は地球を回り続けたのち、
2020年代前半には大気圏に再突入し、燃え尽きる見込みになっています。


こちらの記事もどうぞ ⇒ X線天文衛星“すざく”が10年の科学観測を終了。目標寿命は2年だった…


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