アルマ望遠鏡による観測で、若い3連星“オリオン座GW星”の周囲に3連のチリのリングが存在していることが明らかになりました。
最も外側のリングの半径はおよそ340天文単位もあり、原始惑星系円盤の中で発見されたリングとしては観測史上最大のもの。
それぞれのリングには、巨大惑星の種になるのに十分な量のチリが含まれていることも分かりました。
さらに明らかになったのが、中心の3連星の軌道面と3本のリングは同一平面上に無く、特に最も内側のリングが大きく傾いていること。
3連星の重力だけでは傾いたリングを作ることはできないはず… なので、リングの間に惑星などの天体がすでに存在している可能性があるようです。
これまで、3連星の周りで惑星は一つも発見されていませんでした。
“オリオン座GW星”を詳しく調べることで、3連星の周りでの惑星形成について理解が進むのかもしれません。
まだ見つかっていない3連星の周囲を回る惑星
天の川銀河にある恒星の約半数は、2個以上の星が互いを回り合う“連星系”として生まれることが知られていて、これまでに見つかっている4000個以上の太陽系外惑星でも、2個以上の太陽を持つものはいくつも存在しています。
でも、3連星の周囲を回る惑星は、まだ発見されていないんですねー
なぜ、3連星の周りでは惑星が見つからないのでしょうか?
3連星以上(多重星系)になると、恒星による重力の影響が複雑になってしまいます。
惑星は、お互いの周りを公転する連星に引き込まれて消滅したり、外にはじき出される可能性も高くなります。
惑星が多重星系の中で生き残るためには、軌道や複雑な環境など、一定の要件を満たす必要があると考えられます。
若い星を取り巻くチリとガスの円盤“原始惑星系円盤”の中で惑星は作られます。
なので、連星系の周りの原始惑星系円盤を調べることで、連星系周囲での惑星の形成について理解することができるはずです。
原始惑星系円盤の中に発見された観測史上最大のリング
地球から約1300光年彼方に位置する“オリオン座GW星”は、1天文単位の間隔で互いを回り合うA星とB星、そこから8天文単位離れた場所を回るC星からなる3連星です。
今回の研究では、この“オリオン座GW星”をカナダ・ビクトリア大学と工学院大学のチームが、アルマ望遠鏡を用いて観測。
これまでの観測で知られていた、3つの星を取り巻く大きな原始惑星系円盤の構造を調べるためでした。
観測の結果、“オリオン座GW星”を取り巻く原始惑星系円盤は3本のリングでできていることが分かります。
リングの半径は、内側から46天文単位、188天文単位、338天文単位。
太陽系の惑星で最も外側を公転する海王星の軌道半径が30天文単位なので、これと比べると“オリオン座GW星”の原始惑星系円盤が星からいかに遠い場所にあるかが分かります。
これまで数多くの原始惑星系円盤にリング構造が見つかってきました。
でも、“オリオン座GW星”の最も外側のリングは、これまで発見された中でも最も巨大なリングとなりました。
原始惑星系円盤にあるリングの傾きは惑星の存在を示している
それぞれのリングの電波強度から研究チームが導き出したのは、リングに含まれるチリの質量。
その質量は、内側のリングから順にそれぞれ地球質量の75倍、170倍、245倍と見積もられています。
これは、巨大惑星の種を“オリオン座GW星”の周囲に作るのに十分な量といえます。
3本のリングをさらに詳しく分析してみて分かったのは、中心の3連星の軌道面と比べてリングが3本とも大きく傾いていること。
特に、最も内側のリングは他の2本のリングとは大きく異なった傾きを持っていました。
アルマ望遠鏡で同時に観測した円盤内のガスのデータでも、円盤の内側がねじれていることが確認されています。
研究チームは、3連星が原始惑星系円盤にどのような重力的影響を与えるかを調べるためシミュレーションを実施。
その結果、3連星の重力だけでは、内側のリングの大きな傾きを再現することができませんでした。
そこで、考えられるのが原始惑星系円盤内に惑星が存在している可能性です。
惑星によって円盤に隙間が作られ、内側のリングと外側のリングが作られたと考えることができます。
長く議論されてきた「連星の周囲で惑星形成はどのように起こるのか?」っという問題ですが、今回の観測によって、3連星というより複雑な系における惑星形成を、観測に基づいて調べる道筋が見えてきたことになります。
今回の研究とは別に、イギリス・エクセター大学の研究チームも“オリオン座GW星”を調べています。
観測に用いられたのは、アルマ望遠鏡とヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡VLT。
近赤外線の観測では、最も内側のリングの影が外側に伸びていることを初めて見つけています。
これは、内側のリングが大きく傾いていることを裏付ける結果と言えます。
リングの形状に関するシミュレーション研究は、エクセター大学の研究チームも実施しています。
こちらは、大きく傾いたリングが3連星の重力だけでも作られるとしています。
リングの成因について、両研究チームは異なる説を提唱していて、まだ決着はついていません。
いずれにせよ、“オリオン座GW星”は連星の周りの複雑な環境下における惑星形成を理解するための、重要なサンプルと言えます。
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最も外側のリングの半径はおよそ340天文単位もあり、原始惑星系円盤の中で発見されたリングとしては観測史上最大のもの。
それぞれのリングには、巨大惑星の種になるのに十分な量のチリが含まれていることも分かりました。
さらに明らかになったのが、中心の3連星の軌道面と3本のリングは同一平面上に無く、特に最も内側のリングが大きく傾いていること。
3連星の重力だけでは傾いたリングを作ることはできないはず… なので、リングの間に惑星などの天体がすでに存在している可能性があるようです。
これまで、3連星の周りで惑星は一つも発見されていませんでした。
“オリオン座GW星”を詳しく調べることで、3連星の周りでの惑星形成について理解が進むのかもしれません。
まだ見つかっていない3連星の周囲を回る惑星
天の川銀河にある恒星の約半数は、2個以上の星が互いを回り合う“連星系”として生まれることが知られていて、これまでに見つかっている4000個以上の太陽系外惑星でも、2個以上の太陽を持つものはいくつも存在しています。
でも、3連星の周囲を回る惑星は、まだ発見されていないんですねー
なぜ、3連星の周りでは惑星が見つからないのでしょうか?
3連星以上(多重星系)になると、恒星による重力の影響が複雑になってしまいます。
惑星は、お互いの周りを公転する連星に引き込まれて消滅したり、外にはじき出される可能性も高くなります。
惑星が多重星系の中で生き残るためには、軌道や複雑な環境など、一定の要件を満たす必要があると考えられます。
若い星を取り巻くチリとガスの円盤“原始惑星系円盤”の中で惑星は作られます。
なので、連星系の周りの原始惑星系円盤を調べることで、連星系周囲での惑星の形成について理解することができるはずです。
原始惑星系円盤の中に発見された観測史上最大のリング
地球から約1300光年彼方に位置する“オリオン座GW星”は、1天文単位の間隔で互いを回り合うA星とB星、そこから8天文単位離れた場所を回るC星からなる3連星です。
1天文単位は太陽~地球間の平均距離、約1億5000万キロに相当し、太陽~海王星間の距離は約30天文単位。
今回の研究では、この“オリオン座GW星”をカナダ・ビクトリア大学と工学院大学のチームが、アルマ望遠鏡を用いて観測。
これまでの観測で知られていた、3つの星を取り巻く大きな原始惑星系円盤の構造を調べるためでした。
観測の結果、“オリオン座GW星”を取り巻く原始惑星系円盤は3本のリングでできていることが分かります。
リングの半径は、内側から46天文単位、188天文単位、338天文単位。
太陽系の惑星で最も外側を公転する海王星の軌道半径が30天文単位なので、これと比べると“オリオン座GW星”の原始惑星系円盤が星からいかに遠い場所にあるかが分かります。
これまで数多くの原始惑星系円盤にリング構造が見つかってきました。
でも、“オリオン座GW星”の最も外側のリングは、これまで発見された中でも最も巨大なリングとなりました。
原始惑星系円盤にあるリングの傾きは惑星の存在を示している
それぞれのリングの電波強度から研究チームが導き出したのは、リングに含まれるチリの質量。
その質量は、内側のリングから順にそれぞれ地球質量の75倍、170倍、245倍と見積もられています。
これは、巨大惑星の種を“オリオン座GW星”の周囲に作るのに十分な量といえます。
3本のリングをさらに詳しく分析してみて分かったのは、中心の3連星の軌道面と比べてリングが3本とも大きく傾いていること。
特に、最も内側のリングは他の2本のリングとは大きく異なった傾きを持っていました。
アルマ望遠鏡で同時に観測した円盤内のガスのデータでも、円盤の内側がねじれていることが確認されています。
今回の研究で明らかになった、“オリオン座GW星”の周りの原始惑星系円盤の構造。中心に3連星があり、その周りを3本のリング状にチリが分布している。最も内側のリングは他のリングに比べて大きく傾いている。リングの間に分布する低密度のチリは薄い色で示されている。(Credit: Kraus et al., 2020; NRAO/AUI/NSF) |
その結果、3連星の重力だけでは、内側のリングの大きな傾きを再現することができませんでした。
そこで、考えられるのが原始惑星系円盤内に惑星が存在している可能性です。
惑星によって円盤に隙間が作られ、内側のリングと外側のリングが作られたと考えることができます。
長く議論されてきた「連星の周囲で惑星形成はどのように起こるのか?」っという問題ですが、今回の観測によって、3連星というより複雑な系における惑星形成を、観測に基づいて調べる道筋が見えてきたことになります。
今回の研究とは別に、イギリス・エクセター大学の研究チームも“オリオン座GW星”を調べています。
観測に用いられたのは、アルマ望遠鏡とヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡VLT。
近赤外線の観測では、最も内側のリングの影が外側に伸びていることを初めて見つけています。
これは、内側のリングが大きく傾いていることを裏付ける結果と言えます。
アルマ望遠鏡と超大型望遠鏡VLTで観測した“オリオン座GW星”の周りの原始惑星系円盤。アルマ望遠鏡が観測したチリの分布を青色、VLTが観測した近赤外線をオレンジ色で示している。中心から左下と上の方向に黒い筋が伸びていて、これが内側のリングの影だと考えられている。(Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), ESO/Exeter/Kraus et al.) |
こちらは、大きく傾いたリングが3連星の重力だけでも作られるとしています。
リングの成因について、両研究チームは異なる説を提唱していて、まだ決着はついていません。
いずれにせよ、“オリオン座GW星”は連星の周りの複雑な環境下における惑星形成を理解するための、重要なサンプルと言えます。
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