宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

なぜ、月の裏側は電波望遠鏡の設置に打ってつけなのか? それは初期宇宙の観測に理想的な場所だから。

2019年07月17日 | 宇宙 space
月は常に同じ面を地球側に向けているので、私たちは月の裏側を見ることが出来ません。

2019年には中国の小型衛星が裏側から見た月の写真を撮影したり、2000兆トンもある超巨大な金属塊が眠っていると報告されたりして、いま月の裏側に注目が集まっているんですねー
さらに、月の裏側に電波望遠鏡を設置することに興味を持っている人々がいたりします… それが天文学者です。


電波望遠鏡の弱点

電波望遠鏡は可視光線を観測する光学望遠鏡と違って、天体から放射される電波をとらえて観測を行います。

光学望遠鏡では観測できないほど遠くにある天体や、暗い天体であっても電波を受信してコンピュータによる解析を行うことで観測が可能になるので、電波望遠鏡は宇宙の謎を解き明かす大きな武器といえるんですねー

でも、電波望遠鏡にも弱点があります。
たとえば大気の上層部にある電離層は電波を反射する性質を持っているので、宇宙からの電波の一部を反射してしまうほか、地球活動などによる電波が観測を邪魔してしまうことがあります。

また、私たちの日常生活で放出される電波も電波望遠鏡にとっては障害になることがあり、過去には電波望遠鏡が観測した謎のシグナルの正体が“電子レンジ”だったという事例もありました。


電波望遠鏡の能力を発揮できる場所

多くの電波望遠鏡は数百メガヘルツ~数百ギガヘルツの周波数をとらえる仕組みになっていて、100メガヘルツ以下の電波は電波天文学の分野において“低周波”とみなされています。

ただ、様々な障害が存在する地球上では、“低周波”の中でも30メガヘルツ以下の電波を望遠鏡で観測することは困難なんですねー

では、地球では困難な低周波数の電波を観測するのに打ってつけの場所ってあるのでしょうか?

そこで、天文学者が思いついたのが月の裏側でした。

月の裏側では、地球から放射される様々な電波が常に月本体に遮られているので、邪魔なノイズが入ることがありません。
また、宇宙からの電波を遮る電離層もないので、電波望遠鏡の設置には理想的な場所と言えます。

近年では、宇宙から放射される低周波の電波に対する関心が増えています。
誕生したばかりの初期宇宙の理解を深めるのに、月の裏側に設置された電波望遠鏡が役立つかもしれません。

膨張する宇宙の中では、遠方の天体ほど高速で遠ざかっていくので、天体からの光が引き伸ばされてスペクトル全体が低周波側(色で言えば赤い方)にズレてしまいます。
この現象を赤方偏移といい、この量が大きいほど、遠方の天体ということになります。

初期宇宙(昔の宇宙)は遠方の宇宙になるので、この観測を行う場合は10~50メガヘルツという“低周波帯”の観測が重要になってきます。

コロラド大学の宇宙物理学者ジャック・バーンズ氏が進めているのは、月の軌道上に“DAPER”という衛星を打ち上げて、月の裏側で宇宙からの電波を観測するプロジェクト。

ただ、より多くのデーを集めるには何千ものアンテナを使用する必要があり、このアンテナは軌道上ではなく月面上に設置する方が現実的だそうです。

もし、月の裏側に電波望遠鏡が設置されれば、期待してしまうのが電波干渉計としての観測。
  電波干渉計は、複数の電波望遠鏡をつないで、それぞれの観測データを合成することで、
  1つの巨大な望遠鏡とする観測設備のこと。


地球にある複数の電波望遠鏡ともつないで、それぞれの観測データを合成できれば宇宙をもっと高解像で見ることも可能です。
私たちがまだ見たこともない現象や、宇宙の謎の解明… 夢は広がりますね。
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