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“原始惑星系円盤”に小さな電波源を発見! 惑星形成のプロセスの重要な部分を初めてピンポイントで観測できたのかも

2019年07月07日 | 星が生まれる場所 “原始惑星系円盤”
若い星を取り巻く“原始惑星系円盤”の中に発見されたのは、周囲より電波を強く放つ小さな場所でした。

そこは、今まさに惑星が形成されている現場なんだとか…
このような惑星誕生の現場をピンポイントで特定できたのは、今回初めてだそうですよ。


惑星の周囲を回転する円盤状の構造“周惑星円盤”

惑星は、若い恒星を取り巻くガスとチリの円盤“原始惑星系円盤”の中で形成されると考えられています。
  原始惑星系円盤とは、誕生したばかりの恒星の周りに広がるガスやチリからなる円盤状の構造。
  恒星の形成や、円盤の中で誕生する惑星の研究対象とされている。


初期の“原始惑星系円盤”には、数μmから数㎜の微小なチリが存在していて、このチリが時間とともに合体し成長することで惑星の種“微惑星”になります。

この“微惑星”が自身の重力によって周りのチリやガスを取り込みながら成長し、最終的には惑星になるんですねー

このとき、取り込まれる物質は惑星の周囲を回転する円盤状の構造“周惑星円盤”を作る っと理論的に予測されています。

ただ、これまで考えられている“周惑星円盤”の大きさは“原始惑星系円盤”全体の約1%…
非常に小さいこともあり、これまでの観測では“周惑星円盤”は見つかっていませんでした。


“原始惑星系円盤”に見つかった小さな電波源

今回の研究では、惑星誕生の詳細なプロセスを調べるため、“原始惑星系円盤”の存在が知られている若い星“うみへび座TW星”を、国立天文台のチームが観測しています。

地球から194光年の距離に位置する“うみへび座TW星”の年齢は約1000万歳ほど。
若い星の中では最も太陽系から近く、太陽と同じくらいの重さの恒星なので、太陽系の起源を知る手がかりになる天体として多くの観測が行われてきました。

研究チームでは、これまでの観測の約3倍という非常に高い感度で、“うみへび座TW星”の“原始惑星系円盤”の詳細な電波強度分布を調査。
すると、これまで見つかっていなかった小さな電波源が1つ発見されたんですねー

この電波源の位置は、円盤の中心から約78億キロの距離(太陽~海王星の約1.7倍)。
周囲に比べて1.5倍ほど電波が強くなっていました。

大きさは、長さが6億キロ程度、幅は1億5000万キロ程度に広がっていて、円盤の回転方向にわずかに伸びていました。

このような微小な電波源が“原始惑星系円盤”に見つかったのは今回が初めてのことでした。
○○○
アルマ望遠鏡で観測した“うみへび座TW星”の“原始惑星系円盤”の電波強度分布。


小さな電波源の正体

小さな電波源の正体については、主に2つの可能性を挙げることが出来ます。

1つ目は“周惑星円盤”です。
この場合、発見された構造の大きさから見積もると、中心で形成されているのは海王星質量程度の惑星だと考えられます。

赤外線波長の観測で明るい天体が見られないことや、円盤中のこの位置に隙間が見られないので、この距離に木星質量程度の重い惑星は存在しないと考えられていました。もちろん、海王星質量程度の軽い惑星の存在についても同様です。

でも、今回の観測結果から、海王星質量程度の軽い惑星が存在する可能性が示されたんですねー

一方で、観測された電波強度は、海王星サイズの惑星を取り巻く“周惑星円盤”と考えるにはやや強すぎるという問題もあります。

また、“周惑星円盤”だとすると想定される形は惑星を中心とした円形であるはず。
でも、観測された電波源の形は楕円形… この点も不自然でした。

っと言うことで、2つ目の可能性です。
電波源の正体は“周惑星円盤”でなく、小さいガス渦に溜まったチリというものです。

地球で高気圧や低気圧が発生するように、“原始惑星系円盤”内でも局所的に渦を巻く流れがたくさん存在すると考えられています。
そこに掃き集められて溜まっているチリが電波源になっているのかもしれません。

この構造は、チリが合体して惑星になる最初期段階の重要なものといえます。

渦にとらえられたチリは楕円状に広がることが理論的に予言されていて、今回の観測によって見出された電波源の構造とよく一致しています。

ただ、そのような小規模の高気圧が“原始惑星系円盤”内に1つだけ存在するというのも不自然です。


どちらであっても惑星形成のプロセスの重要な部分の発見になる

今回の観測結果は、“周惑星円盤説”と“ガス渦説”のどちらとも一致する部分と、不自然な部分の両方を持ち合わせていて、正体を正確に突き止めることができていません。

ただ、“ガス渦説”であったにせよ、いずれは惑星の形成に向かっていくことになります。
なので、惑星形成のプロセスの重要な部分を初めてピンポイントで観測できたという点では、大きな意義のある成果になると思います。

形成中の惑星は、周囲の物質を取り込む際に温度が高くなるので、“周惑星円盤”の内縁が特に暖められることになります。

“周惑星円盤”とその中心に惑星は存在しているのでしょか?

アルマ望遠鏡を使ったより高い解像度の観測を行えば、今回発見された電波源の内部の温度分布を明らかにできるはず。
さらに、すばる望遠鏡などを使って、惑星の周囲にある水素が高温になったときに放つ光の観測準備も進めらています。
なので、その中心に惑星があるかどうかは近い将来に分かりそうですよ。


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