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宇宙は膨張し続ける? それとも収縮に転じる? 宇宙論パラメータがより正確に決まると、どういった終焉を迎えるのかが分かるようです

2023年10月12日 | 宇宙 space
国立天文台は、天文シミュレーションプロジェクトが運用する中規模サーバを用いて、宇宙の膨張を支配する“宇宙論パラメータ”の精度を向上させることに成功したことを8月22日に発表しました。

減らせた宇宙論パラメータの不定性は最大35%。
より正確な宇宙論パラメータが決まると、分かってくるのが宇宙がどのようにして現在の姿に成長し、将来どのように進化するのかということ。
宇宙の膨張は続くのか? それとも収縮に転じるのか? っといった謎に迫ることができると期待されています。
この研究成果は、国立天文台のマリア・G・ダイノッティ助教、同・岩崎一成助教たちの国際研究チームによるものです。

宇宙のものさし“標準光源”を利用した距離の測定

宇宙が膨張していることは十分に立証されています。

でも、宇宙が膨張する速度を正確に測定することは容易ではなく、宇宙の膨張によって地球から遠ざかっている銀河の後退速度を正確に測定するには、まずその銀河までの正確な距離を知る必要があります。

宇宙において天体までの距離を測定する場合、太陽系の周囲の星など、天の川銀河系内のそれも極めて近傍の宇宙であれば、地球が太陽の周囲を公転していることを利用した三角測量で正確に算出することができます。

ただ、三角測量が適用できるのは比較的近距離まで…
なので、天の川銀河外、それも宇宙膨張で後退するような距離にある銀河になってくると、正確に距離を測るのが難しくなってくるんですねー

では、そうした遠方の銀河までの距離は、どうやって測っているのでしょうか?

現在の天文学では、白色矮星が起こす爆発現象“Ia型超新星”など、標準光源と呼ばれるいくつかの種類の天体(天文現象)を利用して距離が見積もられています。
“クエーサー”、“ガンマ線バースト”なども標準光源として利用されている。
その仕組みは、標準光源の天体は絶対光度(真の明るさ)が分かっていて、また宇宙のどこであってもほぼ同じ明るさで輝くことから、遠方であればあるほど暗いということが成り立つことにあります。

つまり、見かけの明るさが真の明るさよりもどれだけ暗いかによって、距離の計算が可能というわけです。
今回の研究の概念図。超新星(右)、クエーサー(左)、ガンマ線バースト(中央)といった、地球で観測される様々な標準光源を使って、宇宙論パラメータを推定することができる(背景下は天の川銀河を示す)。(Credit: 国立天文台)
今回の研究の概念図。超新星(右)、クエーサー(左)、ガンマ線バースト(中央)といった、地球で観測される様々な標準光源を使って、宇宙論パラメータを推定することができる(背景下は天の川銀河を示す)。(Credit: 国立天文台)

宇宙論パラメータがより正確に決まると宇宙の将来が明らかになる

そこで、今回の研究では、超新星やクエーサー、ガンマ線バーストといった、標準光源になる天体(天文現象)のデータを解析するため、様々な新しい統計的手法を活用することで、新たな研究分野を開拓。
データ解析は、国立天文台 天文シミュレーションプロジェクトが運用する中規模サーバを用い、国立天文台の岩崎一成助教の協力の下で行われています。

データの分析で有効だったのは、距離が異なるいくつかの範囲では、それぞれ異なる標準光源を用いること。
複数の標準光源を組み合わせることで、宇宙のより広い範囲にわたる天体のデータを使い、宇宙論パラメータを絞り込むことに成功しています。

これにより、主要な宇宙論パラメータの不定性を最大で35%減らすことができたそうです。

現在、宇宙の膨張は加速し続けていることが分かっています。

もし、このまま宇宙の膨張の加速が続いた場合には、最終的には人や星はもちろん、原子すらも引き裂かれてしまうビッグリップで終焉を迎える可能性があります。

また、加速が止まって一定速度で膨張していくのであれば、最終的には全宇宙が冷え切ってしまうビッグフリーズ(ビッグチルとも言う)を迎え。
膨張速度が減速してゼロになり重力が打ち勝って収縮に転じた場合には、ビッグバンの逆をたどって全てが1点に集中するビッグクランチを迎えることになります。

さて、この中のどの方法で宇宙は終焉を迎えるのでしょうか?
宇宙論パラメータが、より正確に決まれば宇宙の将来を明らかにしてくれるようですよ。


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