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民間初の有人飛行に成功! スペースX社の宇宙船“クルー・ドラゴン”が地球に帰還

2020年08月04日 | 宇宙へ!(民間企業の挑戦)
2020年8月3日、アメリカの宇宙企業スペースX社の有人宇宙船“クルー・ドラゴン”が、地球に無事帰還しました。
民間企業が開発した宇宙船が、宇宙飛行士を載せて地球と宇宙を往復することに成功したのは史上初のこと。
この成功によりスペースX社とNASAは、今年10月23日から実運用を開始することになります。
今回、宇宙から帰還した機体は、来春の飛行でも使用されるようです。
地球に帰還した“クルー・ドラゴン Demo-2”。(Credit: NASA/Bill Ingalls)
地球に帰還した“クルー・ドラゴン Demo-2”。(Credit: NASA/Bill Ingalls)


無人の試験機“クルー・ドラゴン Demo-1”

“クルー・ドラゴン”はスペースX社が開発した有人宇宙船で、国際宇宙ステーションへの宇宙飛行士の輸送や、地球低軌道へ民間の観光客を運ぶことを目指しています。

NASAが2006年から進めてきたのは、国際宇宙ステーションへの物資補給と宇宙飛行士の輸送を民間企業に委託する計画。
スペースX社は、その最初期から計画にかかわり、無人の補給船“ドラゴン”による物資補給のミッションを担い続けてきました。

そして、無人補給線“ドラゴン”のノウハウをもとに開発されたのが有人宇宙船“クルー・ドラゴン”です。

“クルー・ドラゴン“の全長約8メートル、機体を構成するのは宇宙飛行士が乗り込む“カプセル”と、太陽電池などが搭載されている“トランク”。
“カプセル”は大部分が再使用できるほか、高い安全性を目指して設計されていて、さらにコクピットはタッチパネルが多用されているなど、新世代の宇宙船にふさわしい性能を兼ね備えているんですねー

現在、アメリカは宇宙飛行士の輸送をロシアに依存していて、国際宇宙ステーションへの往復はロシアの有人宇宙船“ソユーズ”が担っています。

ロシアに対して支払う運賃は宇宙飛行士1人につき9000万ドル。
“クルー・ドラゴン”の運用が始まると、1人当たり5500万ドルにまで下がるとNASAは考えています。

このような状況もあり、自前の有人宇宙船の復活はアメリカにとって悲願でもありました。
なので、“クルー・ドラゴン”が完成し運用が始まれば、2011年のスペースシャトル引退以来、約9年ぶりにアメリカの有人宇宙船が復活することになります。

“クルー・ドラゴン”の無人の試験機“Demo-1”は昨年3月2日、同社のファルコン9ロケットで打ち上げられ、宇宙飛行を経て国際宇宙ステーションへのランデブー、ドッキング技術を実証したのち、3月8日に地球に帰還しています。


有人試験飛行“Demo-2”ミッション

“Demo-1”に続き、今年5月31日に行われたのが初の有人試験飛行“Demo-2”です。
宇宙に飛び立った“クルー・ドラゴン”には、NASAのダグラス・ハーリー宇宙飛行士とロバート・ベンケン宇宙飛行士が搭乗していました。
“クルー・ドラゴン Demo-2”を搭載したファルコン9ロケットの打ち上げ。(Credit: SpaceX)
“クルー・ドラゴン Demo-2”を搭載したファルコン9ロケットの打ち上げ。(Credit: SpaceX)
両宇宙飛行士によって“エンデバー”と名付けられたこの機体は、大きなトラブルも無く打ち上げから約19時間後に国際宇宙ステーションの“ハーモニー”モジュールへのドッキングに成功しています。

2人の宇宙飛行士は、約2か月間、国際宇宙ステーションの滞在員として実験やメンテナンス活動に従事。ベンケン宇宙飛行士は船外活動も行っています。
国際宇宙ステーションにドッキングする“クルー・ドラゴン Demo-2”。(Credit: NASA)
国際宇宙ステーションにドッキングする“クルー・ドラゴン Demo-2”。(Credit: NASA)
そして、“クルー・ドラゴン Demo-2”が国際宇宙ステーションから分離したのが8月2日。
3日3時頃には軌道離脱噴射を実施し大気圏へ再突入し、パラシュートを開き減速しながら降下していきます。
フロリダ州ペンサコーラ沖のメキシコ湾に無事着水したのは、日本時間の8月3日3時48分でした。

宇宙船と搭乗していたベンケン、ハーリー両宇宙飛行士は、海上で待機していたスペースX社の船に回収され、2人の健康が確認されています。

民間企業が開発した宇宙船が、宇宙飛行士を乗せて地球と宇宙を往復することに成功したのは史上初のこと。
さらに、アメリカの地から有人宇宙船が打ち上げられたのは、2011年のスペースシャトルの引退以来となり、有人試験飛行“Demo-2”はアメリカの有人宇宙飛行への復帰を示すものになりました。

今回の“Demo-2”ミッションは、スペースX社とNASAとの間の契約に基づく宇宙飛行士の商業輸送ミッションを行うために必要な最後の大きなマイルストーンでした。
着水後に回収された“クルー・ドラゴン Demo-2”。(Credit: NASA/Bill Ingalls)
着水後に回収された“クルー・ドラゴン Demo-2”。(Credit: NASA/Bill Ingalls)


次は実運用“Crew-1”ミッションの実施へ、その先に控える民間人の宇宙旅行

今回の“Demo-2”が終了したことで、今後スペースX社とNASAが目指すのは、最初の実運用ミッションである“Crew-1”の実施。
“Crew-1”に向け、まずは“Demo-2”ミッションのデータ検証や安全性の確認を行うことになります。

作業が順調に進めば、早くて今年の10月23日に“Crew-1”は打ち上げられる予定です。

“Crew-1”のミッション期間は約6か月の予定。
船長としてマイケル・ホプキンス宇宙飛行士(NASA)、パイロットとしてヴィクター・グローヴァー宇宙飛行士(NASA)、ミッション・スペシャリストとして野口聡一宇宙飛行士(JAXA)とジャノン・ウォーカー宇宙飛行士(NASA)の4人が搭乗する予定です。

さらに、来春以降に打ち上げを予定している2回目の運用ミッション“Crew-2”も控えています。

“Crew-2”に選ばれているのは、船長にシェーン・キンブロー宇宙飛行士(NASA)、パイロットにメーガン・マッカーサー宇宙飛行士(NASA)、そしてミッション・スペシャリストに星出彰彦宇宙飛行士(JAXA)とトマ・ペスケ宇宙飛行士(ESA)の4人。

この“Crew-2”では、今回の“Demo-2”で使用されたカプセルが再使用され、打ち上げに使用するファルコン9ロケットの1段目も再使用機体が用いられる予定です。

NASAは当初、安全性への懸念などを理由に、有人ミッションにおけるロケットと宇宙船の再使用を認めていませんでした。
でも、今年6月に契約が更新され、一転してロケットと宇宙船の再使用が認められることになります。

スペースX社は2014年、NASAから6回分の宇宙飛行士輸送ミッションを計26億ドルで受注しています。
なので、“Crew-2”以降も定期的に国際宇宙ステーションへの宇宙飛行士輸送を続けることになり、将来的には契約の更新によるミッションの延長もあり得ます。

さらに、スペースX社には“クルー・ドラゴン”を民間人の宇宙旅行に使用する計画もあるんですねー
今年2月には、宇宙旅行会社“スペース・アドベンチャー”との間で宇宙旅行の実施に向けた契約も結んでいます。

最近では、ハリウッド俳優のトム・クルーズが“クルー・ドラゴン”で国際宇宙ステーションへ行き、映画を撮影するという噂も流れましたね。


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