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月の氷は予想より少なめ!? クレーターの永久影が思っていたより若かったので初期にもたらされた水の氷は埋蔵されていないようです

2023年12月01日 | 月の探査
月の南極にあるシャクルトン・クレーターとその周辺。NASAの月探査機“ルナー・リコネサンス・オービター”に搭載されている光学観測装置“LROC”で取得した月面の画像と、韓国航空宇宙研究院(KARI)の月探査機“タヌリ(KPLO)”に搭載されているNASAの観測装置“ShadowCam”で取得したシャクルトン・クレーター内部の画像を組み合わせて作成。(Credit: Mosaic created by LROC (Lunar Reconnaissance Orbiter) and ShadowCam teams with images provided by NASA/KARI/ASU))
月の南極にあるシャクルトン・クレーターとその周辺。NASAの月探査機“ルナー・リコネサンス・オービター”に搭載されている光学観測装置“LROC”で取得した月面の画像と、韓国航空宇宙研究院(KARI)の月探査機“タヌリ(KPLO)”に搭載されているNASAの観測装置“ShadowCam”で取得したシャクルトン・クレーター内部の画像を組み合わせて作成。(Credit: Mosaic created by LROC (Lunar Reconnaissance Orbiter) and ShadowCam teams with images provided by NASA/KARI/ASU))
画像は、月の南極にあるシャクルトン・クレーター(Shackleton、直径約21キロ)とその周辺の様子。
NASAの月探査機“ルナー・リコネサンス・オービター”に搭載されている光学観測装置“LROC”で取得した月面の画像と、韓国航空宇宙研究院(KARI)の月探査機“タヌリ(KPLO)”に搭載されているNASAの観測装置“ShadowCam”で取得したシャクルトン・クレーター内部の画像を組み合わせて作成されています。

NASAによると、“ShadowCam”の高感度は“LROC”に比べて200倍も高く、シャクルトン・クレーター内部のような地形をとらえるのに適しているそうです。

一方、太陽光に照らされる領域は“ShadowCam”でとらえるには眩しすぎるので、“LROC”で取得した画像と組み合わせることで、明暗双方の地形の特徴を包括した地図画像を作成できます。

これまでの観測結果や研究成果をもとに、月の極域のクレーター内に生じた永久影には水の氷が埋蔵されていると考えられています。

その月面の水は、月に衝突した小惑星や彗星によって運ばれたり、火山活動によって月の内部から放出されたりした他に、主に陽子(水素の原子核、水素イオン)からなる太陽風が月面に吹き付けられることで、継続的に生成されているとも考えられています。

水は人間の生存に欠かせない物質ですが、それだけではありません。
電気分解をすれば呼吸用の酸素やロケットエンジン用の推進剤も供給できるので、月の永久影に埋蔵されているとみられる水の氷は注目されているんですねー

なので、NASAの月面探査計画“アルテミス(Artemis)”で最初に有人月面探査が行われる“アルテミス3”ミッション(2025年実施予定)でも、着陸地点の候補地はシャクルトン・クレーター付近に集中しています。
アルテミス3ミッションにおける13か所の着陸候補地(水色)を示した図。(Credit: NASA)
アルテミス3ミッションにおける13か所の着陸候補地(水色)を示した図。(Credit: NASA)
将来の有人月面探査ミッションや恒久的な月面基地では、月で採掘した水が使われることになるかもしれません。
でも、月の永久影に埋蔵されている水の氷の量は、多く見積もられ過ぎている可能性もあるようです。

月には古代の水の氷は埋蔵されていない

今回の研究では、月の自転軸の傾きと公転軌道の傾斜角が、どのように変化してきたのかをシミュレーションで分析。
その結果、永久影の大半は今から22億年以内に生じていて、どんなに古くても34億年以内だとする研究成果を発表しています。
この研究は、アメリカ惑星科学研究所(PSI)のNorbert Schoerghoferさんとサウスウエスト研究所(SwRI)のRaluca Rufuさんが進め、研究成果をまとめた論文はScience Advancesに掲載されています。
月では、その歴史の初期に彗星の衝突や火山活動などが活発に起きていたものの、永久影が34億年前以降に生じ始めたのだとすれば、古い時代にもたらされた水は揮発してしまい、永久影には残っていないことになります。
今回の分析結果をもとに月の南極域における永久影の年齢を示した図(現在の地形で計算)。赤は33億年前、緑は21億年前、青は最近になってから永久影が生じ始めたと推定されている。(Credit: Courtesy of Schörghofer/Rufu)
今回の分析結果をもとに月の南極域における永久影の年齢を示した図(現在の地形で計算)。赤は33億年前、緑は21億年前、青は最近になってから永久影が生じ始めたと推定されている。(Credit: Courtesy of Schörghofer/Rufu)
例えば、NASAは2009年の“ルナー・リコネサンス・オービター”打ち上げに相乗りする形で“エルクロス(LCROSS)”という実験を実施しています。

この実験は、月の南極近くにあるカベウス・クレーター(Cabeus、直径約100キロ)に、“ルナー・リコネサンス・オービター”の打ち上げに使われたロケットの一部(セントール上段、重量約2トン)を衝突させ、舞い上がった物質を観測するもの。
このときに得られたデータは、月に水が存在することを示す証拠となりました。

ただ、分析によれば、カベウス・クレーターに永久影が生じ始めたのは、今から約9億年ほど前…
なので、“エルクロス”で検出された水は、月の歴史全体からすれば比較的最近に蓄積されたものになります。

永久影の平均年齢は最大でも約18億年。
永久影の年齢は、月の極地に埋蔵される可能性がある水の氷の量を左右します。
そう、月には古代の水の氷は埋蔵されていないことになるんですねー

月で水を探す今後の有人または無人の探査ミッションを計画する上で、永久影における水の氷の量に関する情報は、特に重要なものとなります。

2024年には、表面下の物質を採取するためのドリルを搭載したNASAの無人月探査車“バイパー(VIPER)”が打ち上げられて、永久影を探査することになっています。
月に埋蔵されている水の氷に関する今後の探査結果が気になりますね。


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