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巨大惑星の作られ方には2つの説があるけど、今回見つけた現場は初めて重力不安定説を支持するものだった

2023年09月13日 | 星が生まれる場所 “原始惑星系円盤”
ヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡“VLT”とアルマ望遠鏡を用いた観測により、いっかくじゅう座の方向約5000光年彼方に位置する若い星“V960星”の近くに、巨大惑星に成長していく可能性がある、ダスト(チリ)を多く含んだ大きな塊を検出したそうです。

巨大惑星の作られ方としては2つの考え方があり、これまでに観測例があったのは“コア集積説”でした。
でも、今回は初めて“重力不安定説”を支持するもののようです。
この研究成果は、チリ サンチアゴ大学のフィリップ・ウェーバーさんを筆頭に、同 セバスチャン・ペレスさん、チリ ディエゴ・ポルタレス大学のアリス・ズルロさんたちの研究チームによるものです。
“V960星”の周辺物質の画像(“SPHERE”とアルマ望遠鏡の合成画像)。この塊は自分の重さで潰され、さらに進化し巨大惑星に成長する可能性がある。(Credit: ESO)
“V960星”の周辺物質の画像(“SPHERE”とアルマ望遠鏡の合成画像)。この塊は自分の重さで潰され、さらに進化し巨大惑星に成長する可能性がある。(Credit: ESO)

巨大惑星形成には2つのレシピがある

“V960星”は、2014年にそれまでの20倍の明るさまで急激に増光したことで注目されるようになった天体です。

このように急激に明るくなる“アウトバースト”が始まった後、すぐに“SPHERE”を用いた観測を実施。
すると、“V960星”の周囲を回っている物質が、複雑な渦巻構造の腕の部分に集まっていることが明らかになりました。
“SPHERE”は超大型望遠鏡“VLT”に搭載されている分光偏光装置“SPHERE”。
その渦巻構造の腕は、太陽系全体の大きさよりも広い範囲に広がっているそうです。
“V960星”周囲の複雑ならせん状の腕(“SPHERE”による画像)。(Credit: ESO)
“V960星”周囲の複雑ならせん状の腕(“SPHERE”による画像)。(Credit: ESO)
この発見をきっかけにして実施されたのが、同じ“V960星系”に対するアルマ望遠鏡のアーカイブデータの解析でした。

“SPHERE”を用いた観測でできるのは、星周辺のダストが多く含まれる物質の表面を調べること。
これに対し、アルマ望遠鏡の観測では、その構造をより深く知ることが可能になります。

そのアルマ望遠鏡のアーカイブデータの解析から分かったのが、渦巻き構造の腕が分裂している最中であること。
惑星の質量と同じくらいの重さの塊が形成されていることも確かめられました。
“V960星”を周回する大きなダストの塊をとらえたアルマ望遠鏡による画像。(Credit: ESO)
“V960星”を周回する大きなダストの塊をとらえたアルマ望遠鏡による画像。(Credit: ESO)
巨大惑星の作られ方としては、“コア集積説”と“重力不安定説”という2つの考え方があります。

コア集積説は、ダストが降り積もっていくことで惑星が成長していくというもの。

一方の重力不安定説は、中心星の周りに大きな分裂破片ができて、分裂破片が収縮して自分の重さでつぶれて惑星が形成されるというものです。

これまでの研究では、コア集積説を支持すると考えられる観測例がいくつかありました。
でも、重力不安定説を支持するものは、ほとんどなかったんですねー

なので、重力不安定説を支持すると考えられる観測例は、今回が初めてのことでした。

今後のさらなる惑星形成現場の観測の進展が期待されています。
いっかくじゅう座の方向約5000光年彼方に位置する若い星“V960星”。(Credit: ESO)
いっかくじゅう座の方向約5000光年彼方に位置する若い星“V960星”。(Credit: ESO)
“V960星”の周囲の星空。(Credit: ESO)
“V960星”の周囲の星空。(Credit: ESO)


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