地球から110億光年離れた銀河の中心にある超大質量ブラックホールから、数万年前に誕生したとみられるガス流(ジェット)が観測されました。
超大質量ブラックホールから噴き出す超高速のジェットによって、銀河中の星間ガス雲が激しく揺さぶられる様子が、これまでにない高解像度で撮影されたんですねー
進化の初期段階にある銀河でも、ジェットが星の材料を押し流し銀河の進化に関わっていることを示した今回の研究は、銀河の進化の過程を解明するための重要な一歩になるようです。
ブラックホールがガスを噴き出すメカニズム
ほぼすべての銀河の中心部には、太陽質量の数百倍から数十億倍もある超大質量ブラックホールが存在しています。
そして、そのブラックホールは銀河内の星の材料になるガスを流出させるなどして、銀河の進化に大きな影響を与えていると考えられています。
物質を吸い込むイメージのブラックホールですが、その周辺部にはガスを噴き出すメカニズムが2種類あるようです。
1つ目は、ブラックホールに降り積もる物質が“降着円盤”を形成しながら高温に加熱され、ときには銀河の星々全体よりも明るく輝く“クエーサー”と呼ばれる天体になり、この強力な光がガスを外へ動かすというもの。
天体の光度がある値を超えると光の圧力が重力を上回り、ガスが天体に落ちることができなくなる。これを“エディントン臨界光度”という。
2つ目は、ブラックホールに吸い寄せられた物質の一部が“降着円盤”とは垂直な方向に超高速で噴き出すジェットになり、銀河からガスを流出させるというものです。
ブラックホールによって集められたガスやチリは、降着円盤を形成しブラックホールに落ち込んでいく。一方、降着円盤内のガスの摩擦熱によって電離してプラズマ状態になると、電離したガスは回転することで強力な磁場が作られ、降着円盤からは荷電粒子のジェットとして噴射する。
ジェットは、その周囲に存在する銀河内のガス(星間ガス)と衝突し、星の材料になる大量のガスを押し出すことにより星形成を抑制するなど、銀河の進化に大きな影響を与えると考えられています。
でも、ガス流出を引き起こす原因がジェットなのか、それともブラックホールを取り巻く円盤から放たれる強い光なのかは、まだ分かっていません。
ジェットが星間ガス雲に衝突しガス流出を引き起こす様子は、比較的地球に近い銀河ではすでに観測されています。
ただ、このような銀河は誕生からある程度時間がたっていて、銀河進化の初期にどのようにジェットが星間ガス雲に影響を与えていたのかは十分に理解されていないんですねー
時間をさかのぼって進化の初期段階にある銀河を調べるには、それだけ遠くを観測する必要があります。
これまでの観測では解像度が不十分だったので、観測は進んでいませんでした。
重力レンズ効果を利用して遠方のクエーサーを観測
それでは、銀河進化の初期に、どのようにジェットが星間ガス雲に影響を与えていたのでしょうか?
このことを探るため近畿大学の研究チームは、おうし座の方向約110億光年彼方にあるクエーサー“MG J0414+0534”をアルマ望遠鏡を用いて観測。
このクエーサーと地球との間には別の銀河が存在していて、銀河の重力がレンズのように働き“MG J0414+0534”からの光を曲げていました。
恒星や銀河などが発する光が、途中にある天体などの重力がレンズのような役割を果たすことで、曲げられたり、その結果として複数の経路を通過することにより、恒星や銀河が発した光の像が複数に見える現象を重力レンズ効果という。
重力レンズは、遠方の天体をより詳しく見ることができる“天然の望遠鏡”というべき働きを持っています。
この重力レンズ効果により、“MG J0414+0534”は4つの像になり、個々の像も大きく拡大されて見えていたんですねー
観測における解像度は約0.007秒角に達するもので、視力だと9000に相当するものでした。
研究チームでは、重力レンズの効果を精密に調べ、複数に分かれて歪んだ像から元の“MG J0414+0534”の姿を復元。
すると、クエーサーの中心部に非常に明るい電波源があり、その左右で一酸化炭素分子が放つ電波が検出されることが分かります。
この電波を詳しく調べた結果、超大質量ブラックホールから秒速600キロにも達するジェットが2方向に放たれ、周囲の星間ガスを揺さぶっていることが分かってきます。
110億光年という遠方のクエーサーの周辺で、ジェットと星間ガス雲の衝突の現場が画像として見えてきた。
このようなことは初めてのことでした。
それは、ジェットと星間ガス雲が衝突している領域の大きさが、典型的な銀河の大きさに比べて大変小さいことでした。
このことから考えられるのは、この銀河の中心部にある超大質量ブラックホールからジェットが噴き出し始めたのは、わずか数万年前だということ。
ジェットが噴き出して数万年… つまり、ジェット誕生直後の様子を観測によりとらえたと考えられます。
今回の観測により、超大質量ブラックホールの活動が銀河に明らかに影響を与えているという確かな証拠をつかむことができました。
この結果は、銀河の進化の初期において超大質量ブラックホールが放つジェットがどのように星間ガス雲に影響を及ぼし、どのように銀河の巨大ガス流出が引き起こされるのかを明らかにする手がかりになるようですよ。
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星の材料は超大質量ブラックホールによって銀河内を循環している
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そして、そのブラックホールは銀河内の星の材料になるガスを流出させるなどして、銀河の進化に大きな影響を与えていると考えられています。
物質を吸い込むイメージのブラックホールですが、その周辺部にはガスを噴き出すメカニズムが2種類あるようです。
1つ目は、ブラックホールに降り積もる物質が“降着円盤”を形成しながら高温に加熱され、ときには銀河の星々全体よりも明るく輝く“クエーサー”と呼ばれる天体になり、この強力な光がガスを外へ動かすというもの。
天体の光度がある値を超えると光の圧力が重力を上回り、ガスが天体に落ちることができなくなる。これを“エディントン臨界光度”という。
2つ目は、ブラックホールに吸い寄せられた物質の一部が“降着円盤”とは垂直な方向に超高速で噴き出すジェットになり、銀河からガスを流出させるというものです。
ブラックホールによって集められたガスやチリは、降着円盤を形成しブラックホールに落ち込んでいく。一方、降着円盤内のガスの摩擦熱によって電離してプラズマ状態になると、電離したガスは回転することで強力な磁場が作られ、降着円盤からは荷電粒子のジェットとして噴射する。
ジェットは、その周囲に存在する銀河内のガス(星間ガス)と衝突し、星の材料になる大量のガスを押し出すことにより星形成を抑制するなど、銀河の進化に大きな影響を与えると考えられています。
でも、ガス流出を引き起こす原因がジェットなのか、それともブラックホールを取り巻く円盤から放たれる強い光なのかは、まだ分かっていません。
ジェットが星間ガス雲に衝突しガス流出を引き起こす様子は、比較的地球に近い銀河ではすでに観測されています。
ただ、このような銀河は誕生からある程度時間がたっていて、銀河進化の初期にどのようにジェットが星間ガス雲に影響を与えていたのかは十分に理解されていないんですねー
時間をさかのぼって進化の初期段階にある銀河を調べるには、それだけ遠くを観測する必要があります。
これまでの観測では解像度が不十分だったので、観測は進んでいませんでした。
重力レンズ効果を利用して遠方のクエーサーを観測
それでは、銀河進化の初期に、どのようにジェットが星間ガス雲に影響を与えていたのでしょうか?
このことを探るため近畿大学の研究チームは、おうし座の方向約110億光年彼方にあるクエーサー“MG J0414+0534”をアルマ望遠鏡を用いて観測。
このクエーサーと地球との間には別の銀河が存在していて、銀河の重力がレンズのように働き“MG J0414+0534”からの光を曲げていました。
恒星や銀河などが発する光が、途中にある天体などの重力がレンズのような役割を果たすことで、曲げられたり、その結果として複数の経路を通過することにより、恒星や銀河が発した光の像が複数に見える現象を重力レンズ効果という。
重力レンズ効果による光路の曲がり、単一の光源が手前の銀河により4つのレンズ像に分かれて見える。 |
この重力レンズ効果により、“MG J0414+0534”は4つの像になり、個々の像も大きく拡大されて見えていたんですねー
観測における解像度は約0.007秒角に達するもので、視力だと9000に相当するものでした。
研究チームでは、重力レンズの効果を精密に調べ、複数に分かれて歪んだ像から元の“MG J0414+0534”の姿を復元。
すると、クエーサーの中心部に非常に明るい電波源があり、その左右で一酸化炭素分子が放つ電波が検出されることが分かります。
この電波を詳しく調べた結果、超大質量ブラックホールから秒速600キロにも達するジェットが2方向に放たれ、周囲の星間ガスを揺さぶっていることが分かってきます。
110億光年という遠方のクエーサーの周辺で、ジェットと星間ガス雲の衝突の現場が画像として見えてきた。
このようなことは初めてのことでした。
それは、ジェットと星間ガス雲が衝突している領域の大きさが、典型的な銀河の大きさに比べて大変小さいことでした。
このことから考えられるのは、この銀河の中心部にある超大質量ブラックホールからジェットが噴き出し始めたのは、わずか数万年前だということ。
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今回の観測により、超大質量ブラックホールの活動が銀河に明らかに影響を与えているという確かな証拠をつかむことができました。
この結果は、銀河の進化の初期において超大質量ブラックホールが放つジェットがどのように星間ガス雲に影響を及ぼし、どのように銀河の巨大ガス流出が引き起こされるのかを明らかにする手がかりになるようですよ。
観測成果を基にした“MG J0414+0534”のイメージ図。銀河中心にある超大質量ブラックホールから強力なジェットが最近噴き出し、周囲の星間ガスと衝突している。(Credit: 近畿大学) |
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