今回、研究成果を発表したのは、北海道大学と海洋研究所、九州大学、東北大学、東京大学からなる共同研究チーム。
12月8日に行われた発表によると、炭素質コンドライト隕石から太陽系形成以前の有機物質“ヘキサメチレンテトラミン”の検出に成功したそうです。
隕石ごとの“ヘキサメチレンテトラミン”の分布を明らかにすることで、宇宙における分子進化だけでなく、太陽系形成に至るまでの天体進化を紐解く上で重要な情報を得ることができるようです。
まぁー、別の恒星系からやってきて太陽系に居ついた物質がある可能性もありますが…
でも、どのような化学物質がどのように変化したのかなど、宇宙における分子進化に関しては、まだ多くの謎が残されています。
星間分子雲に存在する水やアンモニア、メタノールなどの比較的単純な構造を持つ分子は、極低温(-263度)環境での光化学反応によって、より複雑な構造を持つアミノ酸や糖などの複雑な生体関連分子へと変化していきます。
そして、その一部は惑星系形成時に星の材料として取り込まれていくことになります。
それゆえ、有機分子を多く含むC型小惑星や、そのかけらである炭素質コンドライト隕石は、46億年前の太陽系形成時の情報を内包したタイムカプセルとして重要視されています。
先ほど地球へのサンプルリターンを成し遂げた“はやぶさ2”が探査した小惑星“リュウグウ”、NASAの“オシリス・レックス”が探査している“ベンヌ”も“C型小惑星”と呼ばれる炭素質の小惑星になります。
そう、“はやぶさ2”や“オシリス・レックス”は、C型小惑星からのサンプルリターンのために、それぞれの小惑星に向かったわけです。
それは、より複雑な分子の生成に必要不可欠なのが、ホルムアルデヒドとアンモニアなどの分子であること。
ただ、どちらの分子も揮発性が極めて高いという問題があるんですねー
なので、それらの分子がどのようにして小惑星において反応の材料になり得たのか、その詳細はあまり明らかになっていませんでした。
その謎を解明するカギになりそうなのが“ヘキサメチレンテトラミン(HMT)”です。
この化合物は揮発性が低く、星間分子雲における光化学反応の主生成物のため、太陽系形成時に星の材料になったと考えられています。
さらに、水と共に加熱するとホルムアルデヒドやアンモニアなどが生成されることから、小惑星上での分子生成反応の材料として期待されていました。
でも、これまでの宇宙望遠鏡を用いた赤外・電波天文観測や、隕石による分析から、“ヘキサメチレンテトラミン”が検出された例はありませんでした。
サンプルに選ばれたのは、アミノ酸などの有機化合物を豊富に含んだマーチソン隕石、タギッシュレイク隕石、マレー隕石という3種類の炭素質隕石でした。
“ヘキサメチレンテトラミン”を分解してしまわないように高濃度の強酸や熱湯の使用を避けたうえで、それらの隕石から水溶性成分が抽出され、“ヘキサメチレンテトラミン”を含む画分の精製が行われました。
その後、高速液体クロマトグラフ超高分解能質量分析計を用いて、分子レベルでの精密な分析を実施。
分析の結果、3種類の炭素質隕石全てから“ヘキサメチレンテトラミン”が検出され、その濃度は最大で隕石1グラム当たり846ng含まれることが判明します。
さらに明らかになったのは、検出された量が同じ隕石に含まれるアミノ酸量に匹敵するほど多いことでした。
また、隕石を用いないブランク実験や隕石落下地点の土壌サンプルの分析では、ほとんど“ヘキサメチレンテトラミン”が検出されませんでした。
このことから、検出された“ヘキサメチレンテトラミン”は隕石固有であると結論付けられています。
このことから考えられるのは、今回の研究で検出された“ヘキサメチレンテトラミン”が、主に約46億年前の太陽系形成よりも以前の時代、星間分子の光化学反応で生成されたことです。
これまで、太陽系形成以前の化学反応の関与を示唆する要素として、隕石有機物に一般的にみられる高い重水素濃集が認識されてきました。
でも、今回の研究により、太陽系形成前に生成された有機分子が具体的に確認されることになりました。
研究では、検出された“ヘキサメチレンテトラミン”が、隕石ごとにその濃度が大きく異なることも明らかになっています。
その原因の一つとして示唆されているのが、小惑星での熱水活動の程度の違いや、小惑星誕生時の“ヘキサメチレンテトラミン”量の多様性などです。
つまり、隕石ごとの“ヘキサメチレンテトラミン”の分布を明らかにすることで、宇宙における分子進化だけでなく、太陽系形成に至るまでの天体進化を紐解く上で、重要な情報を得ることができるはずです。
今後は、今回の研究で用いられた3種類以外の隕石や、“リュウグウ”から持ち帰られたサンプル、そして“オシリス・レックス”が2023年に持ち帰る予定の“ベンヌ”からのサンプルなどからも、“ヘキサメチレンテトラミン”の検出を試みるそうです。
その存在量を比較することで、宇宙の物質進化の理解が進むといいですね。
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12月8日に行われた発表によると、炭素質コンドライト隕石から太陽系形成以前の有機物質“ヘキサメチレンテトラミン”の検出に成功したそうです。
隕石ごとの“ヘキサメチレンテトラミン”の分布を明らかにすることで、宇宙における分子進化だけでなく、太陽系形成に至るまでの天体進化を紐解く上で重要な情報を得ることができるようです。
“C型小惑星”は太陽系形成時の情報を内包したタイムカプセル
太陽系に存在するほぼ全ての物質は、46億年前の太陽系創世の際に、その元になった星間分子雲に存在した物質から形成されたものになります。まぁー、別の恒星系からやってきて太陽系に居ついた物質がある可能性もありますが…
でも、どのような化学物質がどのように変化したのかなど、宇宙における分子進化に関しては、まだ多くの謎が残されています。
星間分子雲に存在する水やアンモニア、メタノールなどの比較的単純な構造を持つ分子は、極低温(-263度)環境での光化学反応によって、より複雑な構造を持つアミノ酸や糖などの複雑な生体関連分子へと変化していきます。
そして、その一部は惑星系形成時に星の材料として取り込まれていくことになります。
それゆえ、有機分子を多く含むC型小惑星や、そのかけらである炭素質コンドライト隕石は、46億年前の太陽系形成時の情報を内包したタイムカプセルとして重要視されています。
先ほど地球へのサンプルリターンを成し遂げた“はやぶさ2”が探査した小惑星“リュウグウ”、NASAの“オシリス・レックス”が探査している“ベンヌ”も“C型小惑星”と呼ばれる炭素質の小惑星になります。
そう、“はやぶさ2”や“オシリス・レックス”は、C型小惑星からのサンプルリターンのために、それぞれの小惑星に向かったわけです。
小惑星上で分子生成反応の材料になったもの
これまでの研究から分かってきたことがあります。それは、より複雑な分子の生成に必要不可欠なのが、ホルムアルデヒドとアンモニアなどの分子であること。
ただ、どちらの分子も揮発性が極めて高いという問題があるんですねー
なので、それらの分子がどのようにして小惑星において反応の材料になり得たのか、その詳細はあまり明らかになっていませんでした。
その謎を解明するカギになりそうなのが“ヘキサメチレンテトラミン(HMT)”です。
この化合物は揮発性が低く、星間分子雲における光化学反応の主生成物のため、太陽系形成時に星の材料になったと考えられています。
さらに、水と共に加熱するとホルムアルデヒドやアンモニアなどが生成されることから、小惑星上での分子生成反応の材料として期待されていました。
でも、これまでの宇宙望遠鏡を用いた赤外・電波天文観測や、隕石による分析から、“ヘキサメチレンテトラミン”が検出された例はありませんでした。
“炭素質隕石”から有機物質“ヘキサメチレンテトラミン”を精製
今回、共同研究チームが試みたのは、これまでと異なる手法で炭素質隕石を分析し、“ヘキサメチレンテトラミン”を直接検出しようというもの。サンプルに選ばれたのは、アミノ酸などの有機化合物を豊富に含んだマーチソン隕石、タギッシュレイク隕石、マレー隕石という3種類の炭素質隕石でした。
“ヘキサメチレンテトラミン”を分解してしまわないように高濃度の強酸や熱湯の使用を避けたうえで、それらの隕石から水溶性成分が抽出され、“ヘキサメチレンテトラミン”を含む画分の精製が行われました。
その後、高速液体クロマトグラフ超高分解能質量分析計を用いて、分子レベルでの精密な分析を実施。
分析の結果、3種類の炭素質隕石全てから“ヘキサメチレンテトラミン”が検出され、その濃度は最大で隕石1グラム当たり846ng含まれることが判明します。
さらに明らかになったのは、検出された量が同じ隕石に含まれるアミノ酸量に匹敵するほど多いことでした。
また、隕石を用いないブランク実験や隕石落下地点の土壌サンプルの分析では、ほとんど“ヘキサメチレンテトラミン”が検出されませんでした。
このことから、検出された“ヘキサメチレンテトラミン”は隕石固有であると結論付けられています。
太陽系形成前に生成された有機分子
比較的湿度の高い小惑星環境では、“ヘキサメチレンテトラミン”が生成するよりも分解する方が有利になります。このことから考えられるのは、今回の研究で検出された“ヘキサメチレンテトラミン”が、主に約46億年前の太陽系形成よりも以前の時代、星間分子の光化学反応で生成されたことです。
これまで、太陽系形成以前の化学反応の関与を示唆する要素として、隕石有機物に一般的にみられる高い重水素濃集が認識されてきました。
でも、今回の研究により、太陽系形成前に生成された有機分子が具体的に確認されることになりました。
研究では、検出された“ヘキサメチレンテトラミン”が、隕石ごとにその濃度が大きく異なることも明らかになっています。
その原因の一つとして示唆されているのが、小惑星での熱水活動の程度の違いや、小惑星誕生時の“ヘキサメチレンテトラミン”量の多様性などです。
つまり、隕石ごとの“ヘキサメチレンテトラミン”の分布を明らかにすることで、宇宙における分子進化だけでなく、太陽系形成に至るまでの天体進化を紐解く上で、重要な情報を得ることができるはずです。
星間分子雲から太陽系形成に至るまでの分子進化の模式図。星間分子雲では光化学反応により“ヘキサメチレンテトラミン(HMT)”が生成、小惑星上での熱水活動によりアミノ酸や糖が生成される。(Credit: Hokkaido University) |
その存在量を比較することで、宇宙の物質進化の理解が進むといいですね。
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