地球に別の原始惑星が衝突して月が生まれた。
この仮説を、過去最高の解像度のシミュレーションで検証してみると、これまでの予想よりはるかに速く、数時間で月が形成されるという結果が得られたようですよ。
月が形成される原因として最も有力な仮説がジャイアントインパクト(巨大衝突)説になります。
この説によれば、45億年前に火星サイズの天体“テイア”が、作られて間もない原始の地球に衝突。
この衝突から生まれた破片が、かなり急速(おそらく数百万年強の間)に分離し、地球と月を形成したと考えられています。
大きい方は地球になり、大気と海のある地質学的に活発な惑星になるのにちょうどよい大きさと環境へと進化。
小さい方が月になるのですが、こちらには地球のような特性を保持するのに十分な質量はありませんでした。
でも、ほとんどの研究で示唆されてきたのは、飛び散った破片が軌道上で集積して月が形成されるまでに数か月から数年かかるということでした。
これに対して、NASAエイムズ研究センターの研究チームが発表したのは、月はわずか数時間で出来たとする論文です。
これまでのシミュレーションでは10万~100万個の粒子を用いて衝突の過程を計算することが多かったのに対し、研究チームは1億個の粒子を使い、過去最高の解像度でシミュレーションを実行しています。
月と地球の組成はよく似ていて、月から持ち帰られた岩石の成分は火星や他の場所の岩石と比べて、はるかに地球のものと類似していることが知られています。
でも、これまでのジャイアントインパクト説では、衝突によって飛び散った“テイア”の破片が月になったので、原始地球の物質はほとんど月に含まれていませんでした。
この場合だと、現在の地球と月の組成が類似しているのは、“テイア”と原始地球の組成がたまたま似ていたからだということになってしまいます。
でも、その可能性はかなり低いものです。
組成の一致を説明するための仮説として、衝突で蒸発した岩石の渦から月が生まれたとするものがあります。
ただ、このシナリオでは月の公転軌道が地球の自転方向に対して傾いている理由を説明しにくくなります。
一方、今回のシミュレーション結果では、衝突の破片は粉々にはならず、外側は熱で溶けていても内側は完全には溶けていませんでした。
そのため、“テイア”由来の岩石を内側に封じ込めたまま、外側には地球からの成分が溶け込むことになります。
これにより、地球と月の表面で似た成分の岩石が見つかることが説明できます。
また、これまでのシミュレーションでは、地球から一定距離以内にある破片は再び落下していました。
でも、今回のシミュレーションで示されたのは、破片同士の相互作用で一部が安定した軌道へ飛ばされうること。
そこから、最終的に現在の月の軌道となることも説明できます。
宇宙において衝突はありふれた現象で、惑星系が形成され進化していく過程を理解する上で欠かせない要素です。
月の誕生について知れば知るほど、私たちの地球の進化について新たに気づくこともあります。
絡み合う地球と月の歴史は、似ていたり全く異なったりする衝突に左右されたほかの惑星の物語と通じるものがあるのかもしれませんね。
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この仮説を、過去最高の解像度のシミュレーションで検証してみると、これまでの予想よりはるかに速く、数時間で月が形成されるという結果が得られたようですよ。
ジャイアントインパクト説
月はどうやって生まれたのでしょうか?月が形成される原因として最も有力な仮説がジャイアントインパクト(巨大衝突)説になります。
この説によれば、45億年前に火星サイズの天体“テイア”が、作られて間もない原始の地球に衝突。
この衝突から生まれた破片が、かなり急速(おそらく数百万年強の間)に分離し、地球と月を形成したと考えられています。
大きい方は地球になり、大気と海のある地質学的に活発な惑星になるのにちょうどよい大きさと環境へと進化。
小さい方が月になるのですが、こちらには地球のような特性を保持するのに十分な質量はありませんでした。
巨大衝突“ジャイアントインパクト”のイメージ図。 |
過去最高の解像度でシミュレーションを実行
これまで、地球に“テイア”が衝突して月が誕生する過程をシミュレーションで再現しようとする研究は何度も行われてきました。でも、ほとんどの研究で示唆されてきたのは、飛び散った破片が軌道上で集積して月が形成されるまでに数か月から数年かかるということでした。
これに対して、NASAエイムズ研究センターの研究チームが発表したのは、月はわずか数時間で出来たとする論文です。
これまでのシミュレーションでは10万~100万個の粒子を用いて衝突の過程を計算することが多かったのに対し、研究チームは1億個の粒子を使い、過去最高の解像度でシミュレーションを実行しています。
研究チームによるシミュレーション動画。衝突で飛び散った物質はすぐに2つの塊を形成する。内側の大きな塊は地球に取り込まれてしまうが、その過程で重力により外側の小さな塊を安定した軌道へと弾き出す。この小さな塊が月になる。(Credit: NASA's Ames Research Center) |
ジャイアントインパクト説が抱えていた問題点
今回のシミュレーションは、これまでジャイアントインパクト説が抱えていた問題を克服できるかもしれないんですねー月と地球の組成はよく似ていて、月から持ち帰られた岩石の成分は火星や他の場所の岩石と比べて、はるかに地球のものと類似していることが知られています。
でも、これまでのジャイアントインパクト説では、衝突によって飛び散った“テイア”の破片が月になったので、原始地球の物質はほとんど月に含まれていませんでした。
この場合だと、現在の地球と月の組成が類似しているのは、“テイア”と原始地球の組成がたまたま似ていたからだということになってしまいます。
でも、その可能性はかなり低いものです。
組成の一致を説明するための仮説として、衝突で蒸発した岩石の渦から月が生まれたとするものがあります。
ただ、このシナリオでは月の公転軌道が地球の自転方向に対して傾いている理由を説明しにくくなります。
一方、今回のシミュレーション結果では、衝突の破片は粉々にはならず、外側は熱で溶けていても内側は完全には溶けていませんでした。
そのため、“テイア”由来の岩石を内側に封じ込めたまま、外側には地球からの成分が溶け込むことになります。
これにより、地球と月の表面で似た成分の岩石が見つかることが説明できます。
また、これまでのシミュレーションでは、地球から一定距離以内にある破片は再び落下していました。
でも、今回のシミュレーションで示されたのは、破片同士の相互作用で一部が安定した軌道へ飛ばされうること。
そこから、最終的に現在の月の軌道となることも説明できます。
宇宙において衝突はありふれた現象で、惑星系が形成され進化していく過程を理解する上で欠かせない要素です。
月の誕生について知れば知るほど、私たちの地球の進化について新たに気づくこともあります。
絡み合う地球と月の歴史は、似ていたり全く異なったりする衝突に左右されたほかの惑星の物語と通じるものがあるのかもしれませんね。
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