宇宙に存在する物質のうち、ダークマター以外の“目に見える”物質の99%はプラズマ状態にあると考えられています。
そのため、プラズマの持つ性質を知ることは、様々な天体現象を理解する上で重要になります。
プラズマが重要になる天体現象の代表例としては、太陽から噴き出る太陽風やブラックホールを取り巻く降着円盤など。
どちらも、プラスの電気を帯びたイオンとマイナスの電気を帯びた電子から成るプラズマでできています。
でも、これらの天体におけるプラズマの物理的性質には、未解明な点が多く存在するんですねー
その一つが、イオンと電子の温度差です。
今回、これまで謎とされてきたそのプラズマの加熱機構が、国立天文台の“アテルイⅡ”を初めてとする複数のスーパーコンピュータを用いた大規模計算によって、はじめて導き出されました。
そのため、イオンと電子は直接相互作用をせず、異なった温度で存在することが可能です。
これは、私たちの身の回りではなかなか見られない特徴です。
例えば、熱いコーヒーに冷たいミルクを注げば、あっという間にコーヒーとミルクは同じ温度になります。
でも、宇宙に存在するプラズマでは、イオンと電子が異なった温度を維持しています。
実際に、人工衛星による太陽風の観測や降着円盤の理論モデルからは、イオンの方が電子よりもはるかに高温になっていることが分かっています。
では、なぜイオンが電子より高温になるのでしょうか?
この疑問は、長年にわたって未解決の問題でした。
この問題を解決するには、コンピュータシミュレーションで無衝突のプラズマの乱流を再現し、イオンと電子が乱流によってどのように加熱されるかを計算する必要がありました。
イオンと電子が、どのように乱流によって加熱されるかを調査し、問題の解決を目指しています。
無衝突プラズマでは、私たちが身の回りの水や空気の流れを調べる際に使う流体力学モデルを使うことができません。
なので、運動論と呼ばれる第一原理モデルを使う必要があります。
でも、運動論は流体力学よりはるかに複雑なモデルなんですねー
プラズマの乱流中には、音波のような縦波的ゆらぎと、ロープを伝わる波のような横波的ゆらぎが存在します。
これまでの研究では、両方を同時に計算することが難しいので、横波的ゆらぎのみを考えた計算がされてきました。
でも、このような計算では、イオンが高温になる理由を必ずしも説明できるとは限りませんでした。
そこで、研究チームが採用したのは、ゆらぎの中のゆっくりとした変動に着目する“ジャイロ運動論”でした。
“ジャイロ運動論”は、乱流の持つ様々なゆらぎのうち、ゆっくりとした変動のみフォーカスすることで、本来の運動論よりもシミュレーションにかかる計算量を大幅に下げることが可能になります。
この“ジャイロ運動論”を応用して計算量を減らし、問題の解決を図ろうとしたわけです。
そして、“アテルイⅡ”をはじめ複数のスーパーコンピュータを用いた大規模計算を実施。
世界で初めて、縦波的ゆらぎも含む無衝突プラズマ乱流のシミュレーションに成功しています。
その結果、イオンが縦波的ゆらぎのエネルギーを選択的に吸収して電子よりも高温になる事を、初めて突き止めたんですねー
この発見によって可能になるのが、さまざまな天体現象でイオンが電子より高温である事実を説明すること。
さらに、2019年に公開されたイベント・ホライズンズ・テレスコープによるブラックホールの影の撮像結果を、より良い精度で解析するための重要な情報を与える成果といえます。
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そのため、プラズマの持つ性質を知ることは、様々な天体現象を理解する上で重要になります。
プラズマが重要になる天体現象の代表例としては、太陽から噴き出る太陽風やブラックホールを取り巻く降着円盤など。
どちらも、プラスの電気を帯びたイオンとマイナスの電気を帯びた電子から成るプラズマでできています。
太陽風は、コロナと呼ばれる太陽の上層大気から噴き出すプラズマの風。地球ではオーロラや磁気嵐が太陽風によって引き起こされる。
ブラックホールによって集められたガスやチリは、降着円盤を形成しブラックホールに落ち込んでいく。一方、降着円盤内のガスの摩擦熱によって電離してプラズマ状態になると、電離したガスは回転することで強力な磁場が作られ、降着円盤からは荷電粒子のジェットとして噴射する。
ブラックホールによって集められたガスやチリは、降着円盤を形成しブラックホールに落ち込んでいく。一方、降着円盤内のガスの摩擦熱によって電離してプラズマ状態になると、電離したガスは回転することで強力な磁場が作られ、降着円盤からは荷電粒子のジェットとして噴射する。
でも、これらの天体におけるプラズマの物理的性質には、未解明な点が多く存在するんですねー
その一つが、イオンと電子の温度差です。
今回、これまで謎とされてきたそのプラズマの加熱機構が、国立天文台の“アテルイⅡ”を初めてとする複数のスーパーコンピュータを用いた大規模計算によって、はじめて導き出されました。
異なった温度を維持しているイオンと電子
宇宙に存在するプラズマは高温かつ希薄で、イオンと電子との衝突がほとんど起こらない“無衝突”状態にあります。そのため、イオンと電子は直接相互作用をせず、異なった温度で存在することが可能です。
これは、私たちの身の回りではなかなか見られない特徴です。
例えば、熱いコーヒーに冷たいミルクを注げば、あっという間にコーヒーとミルクは同じ温度になります。
でも、宇宙に存在するプラズマでは、イオンと電子が異なった温度を維持しています。
実際に、人工衛星による太陽風の観測や降着円盤の理論モデルからは、イオンの方が電子よりもはるかに高温になっていることが分かっています。
では、なぜイオンが電子より高温になるのでしょうか?
この疑問は、長年にわたって未解決の問題でした。
この問題を解決するには、コンピュータシミュレーションで無衝突のプラズマの乱流を再現し、イオンと電子が乱流によってどのように加熱されるかを計算する必要がありました。
核融合のモデル“ジャイロ運動論”を天文学へ応用
今回の研究では、東北大学学際科学フロンティア研究所を中心とする国際研究チームが、スーパーコンピュータを用いて無衝突プラズマ乱流のシミュレーションを実施。イオンと電子が、どのように乱流によって加熱されるかを調査し、問題の解決を目指しています。
無衝突プラズマでは、私たちが身の回りの水や空気の流れを調べる際に使う流体力学モデルを使うことができません。
なので、運動論と呼ばれる第一原理モデルを使う必要があります。
でも、運動論は流体力学よりはるかに複雑なモデルなんですねー
プラズマの乱流中には、音波のような縦波的ゆらぎと、ロープを伝わる波のような横波的ゆらぎが存在します。
これまでの研究では、両方を同時に計算することが難しいので、横波的ゆらぎのみを考えた計算がされてきました。
でも、このような計算では、イオンが高温になる理由を必ずしも説明できるとは限りませんでした。
そこで、研究チームが採用したのは、ゆらぎの中のゆっくりとした変動に着目する“ジャイロ運動論”でした。
“ジャイロ運動論”は、イオン電子が磁力線の周りを旋回する高速な運動を平均化し、ゆっくりとした運動のみを解く手法。磁場閉じ込め核融合の研究において広く使われている。小さいスケールにおいては乱流の運動は、イオンや電子の旋回運動より遅くなるという理論予測や、太陽風の乱流に速い変動がほとんど存在しないという人工衛星による観測事実に基づき、ゆっくりとした運動に着目する“ジャイロ運動論”を採用している。
“ジャイロ運動論”は、乱流の持つ様々なゆらぎのうち、ゆっくりとした変動のみフォーカスすることで、本来の運動論よりもシミュレーションにかかる計算量を大幅に下げることが可能になります。
この“ジャイロ運動論”を応用して計算量を減らし、問題の解決を図ろうとしたわけです。
そして、“アテルイⅡ”をはじめ複数のスーパーコンピュータを用いた大規模計算を実施。
世界で初めて、縦波的ゆらぎも含む無衝突プラズマ乱流のシミュレーションに成功しています。
その結果、イオンが縦波的ゆらぎのエネルギーを選択的に吸収して電子よりも高温になる事を、初めて突き止めたんですねー
この発見によって可能になるのが、さまざまな天体現象でイオンが電子より高温である事実を説明すること。
さらに、2019年に公開されたイベント・ホライズンズ・テレスコープによるブラックホールの影の撮像結果を、より良い精度で解析するための重要な情報を与える成果といえます。
今回の研究の概念図。太陽風やブラックホール周辺の降着円盤の中で、プラズマを構成しているイオンと電子が乱流になって加熱される。(Credit: 川面洋平) |
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