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天の川銀河は標準的な銀河なのか? 衛星銀河の観測で見えてきた、天の川銀河の普遍性と特異性

2022年09月22日 | 銀河・銀河団
すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラを用いて、天の川銀河と同程度の質量を持つ銀河9個の周囲を撮像してみると、93個もの衛星銀河の候補が発見されたんですねー

次に、これら衛星銀河の個数や配置を天の川銀河の衛星銀河と比較。
すると、あぶり出されたのは天の川銀河の普遍性と特異性でした。

このことは、将来的には宇宙論モデルの検証にも影響を与える研究成果だそうです。
観測された9つの銀河の中の1つ“NGC3338”。しし座の方向約7600万光年彼方の渦巻銀河で、質量は天の川銀河と同じくらいと考えられている。(Credit: 国立天文台)
観測された9つの銀河の中の1つ“NGC3338”。しし座の方向約7600万光年彼方の渦巻銀河で、質量は天の川銀河と同じくらいと考えられている。(Credit: 国立天文台)

天の川銀河の周囲を公転する衛星銀河

天の川銀河のような大きな銀河の周囲には、小さな“衛星銀河”が存在しています。
衛星銀河(伴銀河ともいう)とは重力の相互作用により、より大きな銀河の周囲を公転する銀河。
これまでに天の川銀河で見つかっている衛星銀河の数は50個以上。
ただ、その数は理論的な予想よりも一桁以上少なく、またその空間分布は等方的ではなく偏りがありました。

この問題は、現在広く支持されている標準的な宇宙論モデルの“ほつれ”の一つとして見なされていて、理論と観測のギャップを埋めるべく精力的な研究が進められています。

一方、衛星銀河の問題が普遍的なものなのか、それとも天の川銀河に特有の問題なのかは明らかになっていません。

なので、宇宙の普遍的な理解を深めるのに、天の川銀河にも目を向けて衛星銀河をたくさん調べることが重要といえます。

天の川銀河と同程度の質量を持つ銀河の衛星銀河

今回の研究で使用されたのは、すばる望遠鏡に搭載された超広視野主焦点カメラ“HSC”でした。
“HSC(Hyper Suprime-Cam:ハイパー・シュプリーム・カム)”は、すばる望遠鏡に搭載されている超広視野主焦点カメラ。満月9個分の広さの天域を一度に撮影でき、独自に開発した116個のCCD素子により計8億7000万画素を持つ。まさに巨大な超広視野デジタルカメラ。
国立天文台の研究者が主導する研究チームは、約5~8千光年離れた天の川銀河と同程度の質量を持つ9つの銀河について、衛星銀河が分布する領域をくまなく“HSC”で撮影しています。

ただ、HSC”が撮影した高感度画像には無数の銀河が写り込んでいたんですねー

この中から衛星銀河を検出するため、それら銀河の画像を詳細に解析して衛星銀河と背景の銀河を区別していきます。
これにより、暗く小さな衛星銀河の候補を93天体検出することに成功しました。
検出された衛星銀河の一部。多くの衛星銀河は淡く広がっている。(Credit: 国立天文台)
検出された衛星銀河の一部。多くの衛星銀河は淡く広がっている。(Credit: 国立天文台)

違いは親銀河から見た衛星銀河の配置

検出された衛星銀河と天の川銀河の衛星銀河を比べて分かったことは、銀河ごとの衛星銀河数には大きなバラつきがあること。
でも、天の川銀河の衛星銀河の数と同程度であり、天の川銀河が衛星性銀河の特段少ない銀河ではないことでした。

一方、親銀河から見た衛星銀河の配置を調べてみると、どの方向にも同程度の衛星銀河が存在する等方的な配置の兆候を示していたんですねー

天の川銀河の衛星銀河の多くは同一平面上に偏って分布しているので、その配置の特異性が浮き彫りにされる結果になりました。

この結果は、実は天の川銀河が宇宙の中で典型的な銀河でないことを示しているのかもしれません。

天の川銀河は標準的な銀河なのか?

今回の研究では、“HSC”が誇る広視野・高感度の特性を生かすことで、発見されずにいた淡い衛星銀河の美しい姿を一度にとらえることができました。

新たに検出された近傍銀河の衛星銀河は、衛星銀河に関する諸問題を統計的に検証するために貴重な情報になります。

一方、今回の観測では衛星銀河かどうかはっきりしない天体もあり、今後すばる望遠鏡の超広視野多天体分光器“PSF”による追観測によって同定していくことが期待されます。

最も観測が進む天の川銀河は、宇宙論モデルの比較対象としてよく採用されます。

このため、天の川銀河が標準的な銀河であることの正否は宇宙論モデルの根幹にかかわる問題と言えます。

さらなる観測によって天の川銀河以外の衛星銀河の3次元分布の精査と観測例の蓄積が進めば、衛星銀河の普遍的な性質が明らかになり、宇宙論モデルと観測結果をより公平に比較できるようになるのでしょうね。


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