徒然地獄編集日記OVER DRIVE

起こることはすべて起こる。/ただし、かならずしも発生順に起こるとは限らない。(ダグラス・アダムス『ほとんど無害』)

やはりハードボイルド/「長い散歩」

2006-09-07 08:27:52 | Movie/Theater
奥田瑛二監督作品『長い散歩』。
家庭崩壊を経験した老人(緒形拳)と虐待を経験した子供(杉浦花菜)、2人の逃避行を描くロードムーヴィー。逃避行と言っても(2人には目指す目的地はあるが)、逃げる対象はいろいろある。家族、家庭、学校、会社、社会、そして日本。逃避行の途中、2人に加わる帰国子女・ワタル(松田翔太)は、逃避行とその結末をかなり象徴的するように描かれる。『イージー・ライダー』で言えばジャック・ニコルソン風の役回りか(その意味ではおいしい役)。
「散歩」というにはちとハードな道行である。

映画は最初から、一見児童虐待から少女を救う老人という物語が、実は老人の贖罪の物語であることがわかる。逃避行の最中も妙に少女を「大人」扱いする老人は、まだ加害者側の人間であることを匂わすし(虐待の連鎖)、ワタルも救えず、少女の前で嗚咽するだけの老人は結局何も救われない。そして最後まで老人がその焦燥感から救済されたようには描かない。でも、それでもオレは枯葉散る人生の並木道を歩いていかなきゃならないもんね、というラスト。逃避行を描きつつ、しかし逃れられない人間の業を感じさせる、かなりの力作。
そしてスタッフロールにはUAがカヴァーする井上陽水の『傘がない』が流れる。ちょっと、これはハマり過ぎです。136分という長い尺も忘れさせる。
映画情報サイトでは救済と再生、ファンタジーてなことを書いてあるんですけど、ちと違うような……気がする(確かにそんな描写はあるが、「男の心のハードボイルド」じゃないのか)。

原案は奥田瑛二監督、脚本は桃山さくら(これは監督夫人の安藤和津と長女と次女の合作ペンネームらしい)と山室有希子、女性のペンによるもの。これで腑に落ちた。どうも観ている間、台詞の端々に良くも悪くも女性っぽさを感じていたのだ。その辺は奥田瑛二の男臭い演出で相殺か(フォローになってないか)。
今日の夕方、モントリオール世界映画祭グランプリ(コンペティション部門)、国際批評家連盟賞、エキュメニック賞三冠授賞記念記者会見。

続けてサモハンの『ドラゴン・スクワット』も観ようと思ったのだけれども、映像が躍動しすぎで、疲れそうなので今日はここまで(『長い散歩』のあとに観るには落差がありすぎ)。

『長い散歩』
監督/奥田瑛二
出演/緒形拳、高岡早紀、杉浦花菜、松田翔太/他
秋、渋谷Q-AXシネマほか全国にて順次公開

三四郎

2006-09-07 06:34:13 | LB中洲通信2004~2010
夕方まで原稿を書いて、アポ取り。
16時から北野さんの「コの字」連載第2回目、錦糸町の居酒屋「三四郎」の取材へ向かう。雑誌の取材も多く受けている有名店だけに、ご主人に掲載誌や書籍を取り出しながら、いろいろと説明して頂いた。2階の宴会部屋も見せていただいた。年末の宴会場候補ですな。
11月号掲載予定です。

LEON RUSSELL『LOOKING BACK』、笠原和夫『映画はやくざなり』(講談社)購入。