映画版レミゼ所感の続き。
映画版レミゼを観たある若人の感想を先に聞いたとき、原作を知っていたら決してありえないと思える感想
(曲解)だったので、つい、原作を勧めたくなった。そもそもこれは、少なくとも、2時間半で描くには、かなりキビシイ内容である(そういう意味では、
とってもがんばっていた映画だったと思う)。
ミュージカルでの3時間半でさえ、「少ない!」(描くのがキツイ!!)と感じたほどだったことを思い起こす。
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昨年までのミュージカル
(1985年ロンドンオリジナル版。昨年で終了)では、エポニーヌに焦点が当たっていたが、映画版では、「全体にまんべんなく」
(内容、人物ともに)という感じだった。
<特に良かったと感じた方々>
ファンティーヌ役のアン・ハサウェイ、圧巻。
コゼットは、「貧困の中の子」である幼少期はともかく、
大人になったらマスコット的な影の薄い存在なのだが、赤ずきんちゃん(アマンダ・セイフライド)は、見事に存在感を発揮していた。特に最後。すごい。
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残念だったのが、ジャベールと、壁の「一つ目」だった。
ラッセル・クローの歌声が・・・
ということより何より、ジャベールの描き方に違和感を抱いた。
「ジャベールはあんなヤツじゃなかったはずだ・・・
『人の権威』に頭(こうべ)をたれ、
『正義』を振りかざして裁いている『だけ』なのに、それを
『神の愛』だ何だ、と言うのが変だ!
ジャベールは、原作ではもっと、まっすぐだったはずだ。ジャベールがそんな欺瞞(ぎまん)に満ちた発言をするなんて、おかしくないか?」
(1切れのパンを盗んだことが契機で19年牢獄にいたジャン・バルジャンへの対応、そして歌…ただ単に、『人の権力・権威・法』を絶対視し『正義』を振りかざしているだけなのに、『神の愛を受け入れろ~♪』などと歌で言うとは、非常に気持ちが悪い。
まっすぐであったからこそ、自分のものさしでは測れない『赦し』や『愛情』に遭って、葛藤を覚え、ああするに至ったハズなのに…)
だが、同じく映画を観たある友人は、こう切り返してきた。
「いや、あれはあれで、正解なんじゃないかな。
実際、そういう人間って、けっこういるじゃない?」
ぎゃふん。
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・・・とまあ、色々な感想が噴出したわけだが、次、もしどちらかを観るのなら、今度はまた、舞台を観たい。
(もちろん、映画は映画で、雨の演出など素晴らしいが)
今年は、山口祐一郎さん
(ジャン・バルジャン役)がのどを痛めたため降板とのことなので、今年からの新しいヴァージョンはまたいつかの機会に、と思うが・・・あのとき、
歌が頭の中でリフレインするほど、震えた。