ひさびさに音楽記事です。
このカテゴリーでは、直近の二回でアリス・クーパー、リトル・フィートというアーティストを扱ってきました。そして、この両者のいわば出身母体として、フランク・ザッパの名前が出てきました。というわけで、今回はそのフランク・ザッパです。
ザッパといえば私がまず思い出すのは、1968年の
We're Only in It for the Money。
68年といえば、サマー・オブ・ラブ全盛の頃。
アルバムジャケットは、その当時ロック界で天下をとっていたビートルズのサージェント・ペパーズのパロディとなっています。それでタイトルは、「俺たちはカネのためだけにやっている」……というこの偽悪のセンス。このひねくれ方が、まさにアリス・クーパーにつながるロックのセンスでしょう。
いうまでもなく、これは一種の逆説であって……忌野清志郎がRCサクセションで「この世は金さ」と歌ったりしたのと通じるものがあります。本当にカネのためだけにやっていたら、あんな音楽にはならないでしょう。
そのフランク・ザッパが1973年に発表したのが、Over - Nite Sensation です。
音楽カテゴリーでは、「今年で50周年を迎える名盤」という流れもありましたが、本作もその系譜に位置付けてよいでしょう。
そもそもザッパ自体がアングラな存在なので、大ヒットしてチャートで一位になったりはしないわけですが……この作品は名盤と認識されているようで、50周年を記念して未発表音源などを収録したスーパー・デラックス・エディションが11月3日にリリースされることになってます。ついでなので、その告知動画を以下に載せておきましょう。
Over-Nite Sensation 50th Anniversary. Coming November 3rd.
探してみると、収録曲のひとつMontana のライブ映像がYoutubeにあったので、載せておきます。
Frank Zappa - Montana (A Token Of His Extreme)
ちなみに、今年ティナ・ターナーの訃報がありましたが……このアルバムにはそのティナ・ターナーがアイケッツとともにコーラスで参加していました。
上のライブ動画ではそのコーラスが入っていないので、ティナたちのコーラスが聴ける音源も一つ。
Frank Zappa, The Mothers Of Invention - Dinah-Moe Humm (Visualizer)
今年の訃報といえば、頭脳警察のPANTAさんもザッパと縁があります。頭脳警察のグループ名は、ザッパの
Who Are the Brain Police?
という曲に由来しているのです。(ただしこれは、Over - Nite Sensation の収録曲ではありませんが)
諧謔と風刺、パロディ……無軌道でふざけているだけのようにも見える中に、社会を鋭くえぐる視線がある。それはまさに、頭脳警察や、忌野清志郎に通ずるロックンロールの魂というものでしょう。
ティナ・ターナーがアルバムにゲスト参加し、あのPANTAさんがグループ名のもとにしている……こうした例からもわかるように、フランク・ザッパという人はミュージシャンズ・ミュージシャン的なところがあります。
以下、それがうかがえる例をいくつか紹介しましょう。
ディープ・パープル。
あのSmoke on the Water の歌詞中に、フランク・ザッパの名前が出てきます。
Deep Purple - Smoke On The Water (Live, 1974, California)
一応解説めいたことをいっておくと、この曲の歌詞はレコーディング中に火災にあった体験をもとにしています。そのとき、ザッパも近くでレコーディングしていたということで名前が出てくるのです。
ジョン・レノン。
ザッパは、ジョン・レノン(とオノ・ヨーコ)と共演しています。
Scumbag (Live)
この音源は、ザッパのライブにジョン&ヨーコがゲスト出演した際のもの。
ザッパはサージェント・ペパーズのパロディをやったりしているわけですが、決して対立しているわけではないのです。
こんなアルバムがあります。
モット・ザ・フープルのトリビュートアルバム。
THE BOOMの宮沢和史さんや、ZIGGYの森重樹一さん、レベッカの木暮武彦さん、イエモン、ハイロウズ……といったメンツが集まっているアルバムですが、その最後にフランク・ザッパによるナレーションのようなものが入っています。
(※このアルバムにはブライアン・メイによるカバーも入っていますが、これはブライアンのソロ・アルバム Another World に収録されている音源と同じものと思われます)
エイドリアン・ブリュー。
キング・クリムゾンのギターとして何度かこのブログに名前が出てきましたが、この人もザッパ一門のギタリストとみなされています。
ザッパのもとでギターを弾いていたところ、自身のバックギタリストを探していたデヴィッド・ボウイの耳に留まって引き抜かれたという経歴の持ち主(このときザッパは、ボウイに対して「くたばれトム大尉」と毒づいたといいます)。
さらにブリューはキング・クリムゾンでもギターを弾き、ナイン・インチ・ネイルズに一時在籍したりもしているわけですが……その原点はザッパにあるのです。
そのブリュー、トーキングヘッズとともに活動していたこともありますが、近ごろそのトーキングヘッズのジェリー・ハリスンとともにツアーをやっており、そのステージでクリムゾンのカバーをやっていました。
Jerry Harrison & Adrian Belew (w/Les Claypool) - Thela Hun Ginjeet
スティーヴ・ヴァイ。
あるいは、この人がザッパのバックギタリストのなかで一番有名かもしれません。
ツェッペリンを聴いてもディープ・パープルを聴いても満足できなかったヴァイの心をとらえたのが、フランク・ザッパでした。
そのヴァイのソロ活動における一曲、Asian Sky には、日本からB'zの二人がゲスト参加しています。
Asian Sky
スティーヴ・ヴァイといえば、G3というグループでも活動しています。
これはジョー・サトリアーニが主宰しているもので、サトリアーニが二人のギタリストを従えてツアーをまわるというもの。その二人は入れ替わりがありますが、なにしろサトリアーニをサポートするということなので、名うてのギタリストぞろいです。マイケル・シェンカー、ポール・ギルバート、イングヴェイ・マルムスティーン、スティーヴ・ルカサー、ウリ・ジョン・ロート……その猛者たちのなかにあってヴァイはエリック・ジョンソンとともに初期メンであり、来年はこの初代のラインナップでツアーに出ることになっています。
そのG3が東京でライブをやったときの動画があります。
このときもヴァイは入っていて、もう一人はドリームシアターのジョン・ペトルーシでした。最後は3人でジャムセッションをやっているということですが、この動画はヴァイがメインのもの。
Steve Vai Performs The Audience Is Listening | G3 Live in Tokyo | Front Row Music
ちなみにベースはビリー・シーン。二人羽織でギターとベースを弾くというようなアクロバティックなプレイを見せてくれます。また、ドラムはドリームシアター勢のマイク・マンジーニというこで、ヴァイのステージだけとってもすごいメンツです。
……と、ここまで錚々たるアーティストの名前が並んできましたが、この人たちがザッパにつながっていくわけです。
さらには、以前の記事にも書いたように、ザッパのもとからリトル・フィートやアリス・クーパーが現れ、またそれぞれにロック界のさまざまなところに枝がのびていきます。フランク・ザッパは、ロックにおける世界樹のような存在なのです。
そういう演出だったんですね……参考になりました。
頭脳警察のライブで使われた「Who Are the Brain Police?」は、
「フリークアウト」の音源をテープで流していて
頭脳警察自身の演奏ではありませんね。
90年代再結成の最初のパワーステーションのライブでの演出で
その後も度々使われていますね。
「Who Are the Brain Police?」のテープが終わってすぐに
「俺たちが頭脳警察だ」と言わんばかりの怒涛の演奏は
カッコよかったです。
いろいろ書きましたが、実際のところ私もそんなにザッパを詳しく知ってるわけではありません……まあ、何しろ多産な人なので、作品数が多いだけでなく未発表音源の類も大量に眠っているらしく、そういうものが今回のようにスーパーデラックスエディションみたいなかたちで出てくると。それをフォローしていくのはキリがないということになってしまうのも無理からぬ話ではあります。
まして、そこからのびる枝ということになると、これはもう膨大なアーカイヴになり……しかし、頭脳警察の音源というのはおさえておきたいところですね。
流石に全ては無理でしたね。
ザッパは、風刺を帰化した歌詞がある一方、
下らなかったりイヤらしい歌詞があったりしますね。
それを複雑なメロディに乗せるものだから、
演奏する方は大変だったと思います。
どれだけ練習時間に費やされたかわかりませんが、
所属したメンバーの数が尋常でないのは、
まぁそういう事でしょうね。
その代わりザッパに鍛えられた分、所属していた人のテクニックは凄いですね。
個人的に好きなのは、「ザッパインニューヨーク」の
テリー・ボジオとの掛け合いが面白い
「オッパイとビール」(酷いタイトルだ)ですね。
歌詞がわからないと?な内容ですが、訳詞見ながら笑ってました。
また再結成後の頭脳警察のオープニングで
「Who Are the Brain Police?」が使われた時もあって、
凄くカッコよかった事を思い出します。