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北朝鮮「新型SLBM実験に成功」金委員長立ち合い確認せず

2019-10-04 22:20:37 | 時事


北朝鮮のミサイル発射が話題になっています。

潜水艦から発射できるミサイルSLBMを使用したらしい……と。(潜水艦から発射したわけではないらしいという話もありますが)

潜水艦だから、日本全土を攻撃できる、さあ北朝鮮の脅威……という話になってくると思うんですが、ここはちょっと冷静になる必要があります。

SLBMというのは、一義的には報復用の兵器であって、そこからいたずらに北朝鮮の脅威というのはよろしくないということです。
私もちょっとそのあたりをかじったことがあるので、この点について少し書いておきたいと思います。


まず、“核抑止論”とはなにか。

〈先にことわっておきますが、以下の説明は、あくまでも核抑止力論(の一つ)の立場からみた考え方であって、私自身の考えというわけではありません。そのあたりを踏まえたうえでお読みください。〉

相手が核攻撃をくわえてきたらこちらも核で報復する、双方が破滅的な被害を受ける、だから核兵器は使うな――というのが、核抑止力論のもっとも基本的な考え方の一つです。
そのために、「どちらかが核を使えば、双方が破滅する」という状態――いわゆる“相互確証破壊体制”を構築することが核抑止の主眼となります。ここから、核抑止のためには自国だけでなく相手国も核兵器を持っていることが望ましいと主張する人さえいるようです。

ところがここに、「相手の核ミサイル基地を先に破壊してしまえばいいんじゃないか」という考え方が出てきます。
相手の核ミサイル発射基地をつぶしておけば、核による報復を受けるおそれはない。だから、躊躇なく核兵器を使用できる……先制攻撃論です。こうなると、相互確証破壊は破綻し、核抑止力は成立しないことになります。

では、それを防ぐためにはどうすればいいか。
核ミサイル基地を破壊できないようにする、破壊しようと計画することさえ難しくなるようにする……という考え方が出てきます。そこで、“核ミサイルを積んで常に移動している発射拠点”という発想が生まれるのです。
その一つが、SLBMということになります。
核ミサイルを積んだ潜水艦があってどこかに潜航していれば、たとえ地上の核ミサイル基地をすべて破壊されても報復はできる……これによって、相互確証破壊体制が成立するというわけです。

私は、この考えを支持しません。

しかし、SLBMがそういうものだということは理解しておく必要があるでしょう。
北朝鮮がSLBMを開発しているというのは、それでどこかの国に攻めていって核兵器を撃ち込もうということではないんです。
北朝鮮がときどきミサイルを発射したり、ロフテッド軌道とかコールドローンチ技術とかを導入したりするのは、核抑止論の観点からすれば――驚くべきことに――それなりに合理性があります。(あらためてことわっておきますが、私は北朝鮮の核開発をいっさい支持しません。「核抑止論に照らせば北朝鮮の行動は合理的である」というのは、それだけ核抑止論が狂気に満ちているということでしょう)。
コールドローンチやらなにやらはミサイル防衛をかいくぐるためであり(ミサイル防衛があると、核抑止力が働かなくなると考えられるため)、ときどきミサイルを発射するのは、報復能力を示すためです。
2017年にアメリカは北朝鮮への“けん制”としてミサイル発射実験を行いましたが……これも、同じ発想によるものです。相手のやってることは“挑発”と呼び、自国のやってることは“けん制”といっているだけで、やっていることは同じ。相手が“挑発”してくれば、こちらは“けん制”する――どちらもそういうだけのことです。なので、アメリカがICBM発射実験を行った3日後に北朝鮮もミサイル発射実験を行ったことは、驚くにあたりません。
同じことをしているのに、自分のやることは“けん制”で、相手のやることは“挑発”――この歪んだ見方を是正しないかぎり、真の安全は保障されないでしょう。
昨日も米軍はICBM発射実験を行っていて、これは中国にむけた“けん制”だというんですが……やはり、中国から見ればアメリカの“挑発”にほかなりません。過去の例から考えても、それで中国がおとなしくなるなんてことはありえないんです。
そういうところを冷静に考えていかないと、極東地域は慢性的に不安状態が続くことになってしまうでしょう。


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