ロック探偵のMY GENERATION

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地下鉄サリン事件とイラク戦争

2018-03-20 17:32:10 | 時事
今日は3月20日。
地下鉄サリン事件が起きた日です。
最近このブログでは時事系記事の比率が高くなっていますが……その流れに乗って、今回は、この事件とその後の日本について書きたいと思います。

特に必要もないでしょうが、一応説明しておくと、地下鉄サリン事件は今から23年前に起きた一種のテロ事件です。
オウム真理教という宗教団体の信者らによって、東京の地下鉄にサリンが撒布され、多数の死傷者を出したという事件です。“化学兵器”を用いる無差別テロが実行に移されたのは、おそらく今にいたるまでこの事件だけでしょう。

地下鉄サリン事件は、日本の社会に大きな影響を与えました。

その影響を総括的に説明するというのは私の手にあまることですが……それについて、森巣博さんと森達也さんの共著『ご臨終メディア―質問しないメディアと一人で考えない日本人』(集英社新書)で語られていたことが印象に残っています。

「地下鉄サリン事件は、日本にとっての9.11だった」

というのです。
残念ながら手元に現物が見当たらず、うろ覚えでの引用で恐縮なのですが……たしか森達也さんの発言だったと思います。
そして、この時を機に、日本には“社会”がなくなり、“世間”になった……ということが語られていました。

同時多発テロ後のアメリカと対比してみると、“世間”という言葉の意味がよくわかると思います。

同時多発テロ後のアメリカは、安全のためなら人権などといっていられないという風潮が強まっていきました。
令状なしでの召喚や、政府機関が秘密裏に個人情報を収集したりすることがまかりとおるように。ふつうならば通らないことですが、国民の“恐怖”という感情を利用して、それが通ってしまったのです。
その行きつく先の一つが、くしくも地下鉄サリン事件と同じ3月20日にはじまったイラク戦争でした。
「安全のためなら人権や“民主的”なシステムを無視してもいい」という発想が、「危険(かもしれない)敵を倒すためには細かいことを無視して戦争をしかけてもいい」というところまでいってしまったのです。

では、その結果はどうだったのか。
結局、イラク戦争はアメリカに過大な負担を強い、中東に混沌をもたらしただけでした。それによってアメリカが安全になったとも思えません。むしろ、アメリカ国内の分断を強め、アメリカという国にもマイナスの影響を強くもたらしたのではないでしょうか。

ここから得られる教訓は、「不安に駆られて動くと、世の中はろくな方向にいかない」ということだと思います。

で、日本の話に戻ります。
地下鉄サリン事件は日本にとっての9.11だった……というのが当たっているとすれば、日本でも、アメリカ社会に起きたような変化がゆるやかに起きているのではないか。これは否定できないように思えます。
そして、そういう変化は、おそらく世の中を悪い方向にもっていきます。その先に待っているのは、差別や偏見を隠そうともしない、息苦しく、ぎすぎすした社会でしょう。
社会を運営していくときに、“恐怖”という感情をベースにするべきではないんです。


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