一人ぽっちで寂しいですか?
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週3日の出社日の昼は、外食になる。
「さて今日は何にするか」と迷うことはない。
カレー、うどん、丼、それにラーメン、この4店を
まるでプロ野球の投手ローテーションみたいに回す。
たまに控えからトンカツが入り、誘われて中華が割って入ることはあるが、
ローテーションを大きく崩すことはない。
実に堅い。だが、面白味はまったくない。
これらの4店が会社の近くにあり便利だということはあるが、
実のところ、味というものに頓着しない質なのである。
もっと言えば、旨いのか、不味いのか、その差があまり分からないのだ。
だから、人が「こりゃ旨いな」と言っても「そうだな」と軽く相槌を打つ程度。
逆に「不味い!」と言われても、「そうかな」で済み、
人が箸を置いてもパクパクと食べ続けている。
「味音痴なんだ」と言われると辛いが、ちょっとそれに近いかもしれない。
だから、「どこか旨いものを食べさせるところはないか」
なんてことにとんと興味が湧かない。
身近にあって、それなりのものが食べられれば「それでよし」なのだ。
カレー、うどん、丼、それにラーメンをローテーションに従って回す。
僕にとっては実に理にかなった話なのである。
ただ時々、そんな面白味のない自分に愛想が尽きそうになり、
「なぜ、こうなんだろうな」と思うことがある。
思えば、味というものを覚えるであろう子供の頃は、
まさに戦後の食糧難の時代だった。
旨いも不味いもなく、とにかく腹を満たせれば、
何でもよく、したがって大したものは食べていない。
「そのせいだ!」と、それを味覚不全の理由にしているのだが、
これとてまったく根拠のない話だろう。何とか理由をつけたくて、
戦後の話を持ち出したり……何とも始末の悪い奴だと、我ながら思ってしまう。
ただ夕食時、妻からこう言われるとさすがに辛い。
「あなたって、つまらない人。私が何時間もかけて作った料理を
5分で食べてしまう。旨いのか、不味いのかさえも言わず、
掻き込むようにたった5分でよ。まったく料理のし甲斐のない人だわね。
もう作る気がしないから、スーパーかコンビニで弁当でも買ってきたら……」
おい、待てよ。そんな殺生な。