特にファンというわけではない。
ただ、NHK-BSプレミアムで放送している
「にっぽん縦断 こころ旅」の彼は、大変好ましい。
俳優の火野正平のことだ。
この番組は視聴者が投稿した記憶に残る「こころの風景」を
火野正平が相棒の「チャリオ」(自転車の愛称)で訪ね、
日本列島を春、秋年2回に分けて縦断するという番組だ。
2011年4月の放送開始というから、〝長寿〟の部類だろう。
なぜ、こんなに長く続いているのか。見ていると次第に分かってくる。
それは、火野正平の何とも言えない魅力によるものに違いない。
彼は若い頃、誰もが知るように女優さんらと数々の浮名を流し、
「不倫に関しては堂々の主役」とか「芸能界史上最高の〝モテ男〟」
とか言われた人だ。
今だと週刊誌にさんざん叩かれるような行状であったに違いないが、
それでも、彼に関しては取材記者でさえ、取材中笑みがこぼれるような、
ちっとも憎めない人柄らしい。
何と言っても相手の女優さんたちが、彼をとやかく言うことがまったくない。
すぐに告白記事を週刊誌に売り込まれてしまう、
今どきの不倫男優とはここらが違う。
1人の俳優をそんなに持ち上げてもしようのない話だが、
「こころ旅」を見ていると、何だか心が癒されるような、和やかな気分になる。
見る者をそんな気分にさせるのは、やはり彼の持ち味というほかない。
道々出会う、おばさんやおじさんと気軽に言葉を交わすし、
若い女性とは特に話が弾む。「人のいい気さくなおじさん」ぶりなのだ。
上り坂でペダルを踏めば、ハアハアと息絶え絶えのありさまとなり、
下り坂になると「人生下り坂」などとうそぶいている。
1949年5月生まれだから、古希を迎えた年齢の男性に、
こんな言い方も変だが、その表情や仕草にどこか可愛さがある。
そこが彼の魅力であり、この「こころ旅」が長く続いている理由だろう。
もう一つ加えると、植物や昆虫などについても博識だし、
ヘビを平気で素手で捕まえてしまうから、これにも驚かされる。
また愛犬家のせいか、見かけた犬に近づき、すぐに手なづけてしまうのだ。
動物とそんなふうに触れ合うところにも
彼に対して親しみが生まれる理由があるのだろう。
さらに歌手でもある。これがなかなか渋い歌いっぷりだ。
すっかり火野正平の、それに「こころ旅」の宣伝をしてしまった。
ついでに、火野正平が歌う「こころ旅」のテーマソングをYou Tubeでどうぞ。