体育の教師を目指したこともあり、好きに多少の濃淡はあるものの
嫌いと言えるスポーツはまずない。
だから、ほとんどの競技を楽しむことができるオリンピックは
僕にとり欠かすことのできない一大イベントなのである。
さらに言えば、4年ごとに開催されるオリンピックは、
たとえば、「2020年の東京オリンピックまでは何としても生きてやる」
との目標になり、それをクリアすると
「よし、次のパリオリンピックまでは……」となるのである。
このオリンピックのちょうど真ん中にサッカーのW杯があるから
2年刻みの生きる目標になっているのだ。


真っ青な東京の空に、5機の自衛隊機が
鮮やかに五輪のマークを描いた1964年10月10日。
第18回オリンピックの開会式。
テレビにかじりついて見た、あの日を忘れることはない。
日の丸と同じように赤のブレザー、白のズボン・スカート姿の
日本選手団の堂々の入場行進。
聖火最終ランナー・坂井義則さんが
聖火台に点火し、24日までの大会は開幕した。
この大会で日本は、レスリングや体操、
それに東洋の魔女・女子バレーなどの活躍で
金メダル16個、銀5個、銅8個を獲得。
敗戦から立ち上がった国民をさらに鼓舞する活躍だった。

昨日23日に開幕するはずだった2度目の東京オリンピック。
コロナウィルスの世界全域への感染拡大により1年延期となったが、
その開催にさえ悲観的なニュースばかりが流されている。
確かにNHKの世論調査では「さらに延期すべき」35%、
「中止すべき」31%となっており、1年後開催に否定的な意見が
6割強を占めている。これが国民の現実的な意見なのだと
言われれば、否定のしようがない。
報道機関は、国民にとり現実となっている問題を率直に
伝えるのが、役割の一つである。それは、重々承知している。
だが、それだけで押し切られてしまうのでは何ともやるせない。
その一方には「予定通り開催すべき」との意見も26%ある。これも現実だ。
さらに、その理由を問えば「選手たちの努力が報われないから」と。
学生時代をスポーツ漬けで過ごした僕にとっては、よく分かる話なのである。
「来年の開催さえ危うい」とのニュースばかり聞かされる
選手たちの気持ちはいかばかりであろう。
ただでさえ、「1年延期」に耐えているのである。

スポーツ馬鹿の情緒的な言い分と一蹴されるかもしれない。
23日、国立競技場で開かれたイベントで、白血病と闘う競泳女子の
池江璃花子選手は、聖火が灯されたランタンを手に
「1年後の今日、この場所で希望の炎が輝いてほしい」
とのメッセージを世界へ発信した。
また、トーマス・バッハIОC会長も
「延期された大会をくじけぬ力と希望の象徴にしよう」
そう呼びかけている。
わずかでも可能性があるのなら、その言葉にすがってみたい。