Toshiが行く

日記や趣味、エッセイなどで描く日々

自分で気付かない資質があるものだ

2020年07月05日 05時23分00秒 | エッセイ

    マイクを手にすれば、まさに直立不動。
    「どれほどの堅物なのか」と思わせるような姿勢で歌う。
    あの「長崎は今日も雨だった」でデビューしてから、
    すでに50年を超えるベテラン歌手となった。
    なのに、ある時は、「お笑い界の方ですか」と思えるような一面を見せる。
    前川清さん、同じ長崎県人なので、あえて〝さん〟付けで呼ぶが、
    実に面白い人だ。

歌手としての前川さんが、また別の資質を隠し持っていることを
最初に見抜いたのが萩本欽一さん、あの欽ちゃんだと言われる。
歌っている時は決して見せない、どこか笑いを誘うような人懐っこさ。
前川さんのそこを、欽ちゃんは買ったのだそうだ。
そこで自分のバラエティー番組「欽ちゃんのドンとやってみよう」、
あの「欽ドン」への出演を誘ったという。
最初は〝お笑い〟と見られるのを嫌がった前川さんだったが、
回を重ねるたびに自分の別の資質に目覚めていき、
いつの間にか番組に欠かせない存在になっていった。
             
    バラエティー番組で人気を得た前川さんに、今度はNHKが目を付けたのだ。
    「鶴瓶の家族に乾杯」へのゲスト出演だった。
    ご存知のように、これは落語家の笑福亭鶴瓶さんがゲストと一緒に
    素敵な家族を求めて日本中を巡る、ぶっつけ本番の旅番組だ。
    総合テレビで放送を開始したのが1995年8月というから、
    すでに25年続いている、
    それも毎週月曜日の19時30分~20時43分の、いわゆるゴールデンタイムでの
    放送という人気番組だ。ここで前川さんは、
    一般の人たちとの会話に磨きをかけ、
    その人気は鶴瓶さんと競うほどに高まっていった。
    結果はNHKの狙い通りだったわけだ。
    前川さんのゲスト出演は2005年度以来8回。
    これはゲスト出演者の最多らしい。

さらに話は発展していった。
今度は福岡の地元テレビ局・九州朝日放送から声がかかった。
同局もまた、「家族に乾杯」と同じように九州の各地を訪ねながら、
その地の人たちと触れ合うという番組を企画していた。
それの「旅人」として前川さんに白羽の矢を立てたのだ。
こうして「前川清の笑顔まんてんタビ好き」が2012年4月からスタート。
お笑い芸人・えとう窓口さん(大分県出身)を相棒に、あるいは江藤さんに代わって
長男の紘毅さん、次女の侑那さんを伴い前川家で九州各地を巡っている。
この番組でも地域の人たち、特にお年寄り相手の会話が抜群に楽しく、
すでに8年続く人気番組となっている。
                 
    人にはいろんな資質があるものだが、案外と自分では気付かないことが多い。
    それを人が見付け、引っ張り出してくれ、本人が磨き上げていく。
    そんなことが結構多いのも確かだ
    芸能界に限らない。どこの世界にもある話だろう。
    見出してくれ、引っ張り出してくれる人に出会えるかどうか。
    そこは運と言うしかない。