青く透き通った水──面河渓(おもごけい)
愛媛県の中南部、西日本最高峰の石鎚山の南麓に広がる四国最大の渓谷。
「仁淀ブルー」で知られる仁淀川の源流域で透明度の高い水質は
日本一と言われており、国指定の名勝地となっている。
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「えーと、えと。あの方何とおっしゃったっけ」
「誰のことだよ」
「○○社の社長さんだよ。先週お会いしたんだけど……ほれ、ほれ」
「あーあ、△△さんかい」
「そうそう、△△さん、△△さんだ。名前がすぐに出てこないんだよなあ」
「ご同様さ。お互い年を取ったな」
こんな会話は日常茶飯事だ。
年を取るのにしたがって脳も老化する。必然的に認知機能が落ちる。
これは多少の程度の差こそあれ、ほとんどの人に等しいものだろう。
先ほどの会話みたいに、人の名が即座に出てこず、
しばらくしてひょいと思い出す。
好きな女優さんのことすらそうだから、困ったものだ。
伴って、「これ」「それ」「あれ」「どれ」みたいな形容詞、
あるいは「この」「その」「あの」「どの」のような連体詞、
よく言われる「こそあど(コソアド)」語が頻発することになるのだ。
でも、この程度のことは年相応の「物忘れ」「度忘れ」の類で、
日常生活を営むのに支障はない。
「団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になる2025年には700万人前後、
つまり高齢者の5人に1人に、その症状が現れると予測される」
厚生労働省が、こんなふうに脅している。
「認知症」の話だ。
おそらく、たいていの人は「物忘れ」「度忘れ」がたびたびになると、
「もしや認知症ではないか」と心配する。僕自身そうだ。
それでちょっと調べてみた。専門家がわかり易く、こう解説している。
「認知症の『物忘れ』は、単なる『度忘れ』とは違います。
たとえば、昨日友人と会って食事をした、そのこと自体を忘れ、思い出せない。
友人とも会っていないし、食事もしていないと言い張る。
つまり、出来事(エピソード)自体を忘れてしまう。
これが認知症の『物忘れ』なのです」
名前や物の名がすぐには出てこないが、しばらくすると思い出す。
こういった状態は年相応のこと、心配する必要はない。
それが、昨日はだれと会って、何をしたのかを忘れてしまう。
あるいは、少し前に済ませたばかりなのに「食事はまだか」と言う。
こうなると要注意ということなのだろう。
認知症には「若年性」というのもあるから、年寄りに限ったものではないが、
それでも年寄りにとっては、神経過敏になり易いものだ。
がんは2人に1人、認知症は5人に1人──残された時間は少ないのに、
少しは安穏に暮らさせてくれてもいいじゃないか。