堺雅人
大昔、小学2、3年生の頃だったろう。
映画、それも時代劇が好きな父によく連れて行かれた。
当時の時代劇と言えば、ほとんどが〝勧善懲悪〟もの。
散々いたぶられた善人が、最後は悪人を懲らしめて大団円となる。
たとえば嵐勘寿郎の「鞍馬天狗」。善人があわや、という時には必ず、
馬に乗って颯爽と現れ、悪人どもをバッタバッタと倒していく。
その鞍馬天狗の雄姿に観客はスクリーンに向かって大拍手したものだ。
テレビドラマ「半沢直樹」。まさに現代版の時代劇だろう。
今度が7年ぶりの第2作で、初回の視聴率が22%、
2回目が22.1%だったというから、
第1作の人気がそのまま続いているようだ。
東京中央銀行から子会社の東京セントラル証券に出向、
ていの良い左遷にあった半沢直樹は、
ここの企画営業部の部長となっている。
半沢直樹役の堺雅人の熱演は相変わらずで、
そこまで力を入れてしゃべられると、
こちらまで肩に力が入ってしようがない。
香川照之 市川猿之助
そんな堺に対抗するかのような歌舞伎界の役者たち。
第1作の憎まれ役は香川照之だった。
その〝顔芸〟、それと最後には半沢直樹に土下座させられる、
あのシーンは伝説的とさえ言われており、まさに勧善懲悪、
ドラマの最後を痛快に盛り上げた。
第2作の新たな敵役が、本店の証券営業部の部長・伊佐山なのだが、
その伊佐山役を演じているのが、
香川照之とは従兄弟同士になる市川猿之助だ。
これがまた、いやらしさは香川に引けを取らない。
香川同様の顔芸も圧倒的で、かつての東映時代劇の敵役スター、
薄田研二や原健策以上に憎々しい。
これも歌舞伎役者ならではであろう。
尾上松也 片岡愛之助
次週の3回目には、第1作に引き続き、オネエの金融庁検査官として
片岡愛之助が登場する。これがまたネチネチと半沢直樹に絡むはずだ。
歌舞伎界からもう一人、尾上松也もIT企業の社長役で出演している。
まるで、堺雅人の熱演に歌舞伎界上げて対抗しているかのようだ。
池井戸潤の作品は「下町ロケット」もそうだが、
最後の最後に決めてくれる。それまでがハラハラドキドキで、
まるで昔の時代劇を見ているようだ。今度はどんな結末になるのか。
半沢直樹が「倍返しだ!」とやったら、
すかさず「どうだ、まいったか!」と続けてみようか。