威 圧
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「今も週3日はグラウンド・ゴルフの練習、
あとの4日は7000歩から8000歩の
ウオーキングを楽しんでいます」
今年90歳、つまり卒寿の方がそうおっしゃるのだから、恐れ入る。
僕とちょうど一回り違う大学時代の恩師──大学を出てから、
もう50年以上経つのに今でも尻を叩かれ、励まされる。
師はいつまでたっても師なんだな。つくづく、そう思う。
学校の先生になろうと思い教育学部(当時は学芸学部と言った)に入学したのに、
勉学途中で教師としての適性にいささか欠けていることに自身気付いた。
どこがどうだとは、言葉では言い表せないが、
教師は自分らしさを表現できないような気がしたのだ。
だから4年生になった時には、民間企業へ行こうと定めていた。
実は補導教官だった、この先生もそれが良策と思われていたようで、
僕が幸運にも、民間企業に就職できたことを大変に喜ばれた。
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僕が福岡に移った後、お会いする機会は少なくなったが、
それでも時折の手紙で互いの現況を知ることができた。
年を取ると、どうしても体調の話になる。
僕はたびたびの膀胱がんの手術を伝えると、
その先生も2年前に狭心症の症状らしきものが出たため、
「心臓の冠動脈にステントを入れてもらい、狭心症や心筋梗塞の予防を心掛けている」
とのこと。いかにも先生らしい端正な字でそんな返信をいただいた。
それで少々心配になったが、その後に続いた
「週3日はグラウンド・ゴルフの練習、あとの4日は7000~8000歩のウオーキング」
との文面にそんな心配は吹き飛んでしまった。
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対する僕は週3日のウオーキングがせいぜい。それも5000~6000歩程度だ。
卒寿の先生にとうてい及ばない。
今日も近くの川沿いを歩いたが、歩数計を見れば6000歩ちょっと。
ちょっと悔しい。
先生! 今日はもう10分ほど余計に歩くことにします。
先生にはいつまでも教えられ、励まされますね。
頭が上がりません。