熊本市の郊外に向かって電車が走っている。
熊本電鉄の運営するこの電車、以前は熊本と菊池(隈府温泉)を結ぶ大切な交通機関だったが、時代の波には逆らえずだんだんと縮小され、現在に至っている。路線は市の中心街に近い藤崎宮前から合志市御代志までと上熊本~北熊本の2路線。
車両といえば全国各地で長い間活躍し、その後引退した古い車両ばかり。まさに〝おぢいさん電車”ばかりだ。今走っているのは元東急の5000系初代と 元東京都交通局の6000形それに 元南海の22000系。そのほか構内の入れ替え用として広島を走っていた「被爆電車」旧国鉄のモハ71がある。
その車両の中でも東急の5000系はその姿から「青ガエル」とよばれ今注目の的だ。製造されてから58年が経過している。車両の寿命は約30年といわれており、58年もの長い間現役で走り続けているのは全国でこの1台だけ。たくさんの鉄道ファン「撮り鉄」が、ただ1台の「青ガエル」の写真を撮ろうと全国から訪れてくるそうだ。丸みを帯びた下ぶくれの顔に「愛嬌がある」「かわいい」とファンに大人気。
だが、この「青ガエル」今年度限りで引退することが決まっている。何せ修理部品の調達がままならないそうだ。廃車は残念でならないが、すでにその代替車両として東京メトロ銀座線を卒業した01系 が入庫している。
熊本電鉄は区間は身近いものの庶民の足としては大切な役割を果たしている。全線において、平日・土曜は9:00 - 15:30の間、日曜祝日は終日、列車内に自転車を無料で持ち込むことができる。運賃の安いこともあるが、時間の正確なことが通勤通学する方にとっては欠かせない存在だ。自転車に乗って町に買い物に出かけることもできる。〝おぢいさん電車”はまさに庶民の足。
熊本電鉄の車両群。両端は6000系、中央は〝青ガエル”