脳辺雑記帖 (Nohhen-zahts)

脳病と心筋梗塞を患っての独り暮し、Rondo-Nth の生活・世相雑記。気まぐれ更新ですが、気長にお付合い下さい。

高速バス事故 : 悪いのは個人か?

2012年05月05日 10時56分48秒 | 社会時評
この連休中、関越自動車道で乗客等46名(内死者7名)が死傷する
高速ツアーバス事故があった。この手の格安バスは2000年の規制
緩和以来、価格競争が激化の一途だったという。

事故は、正社員ではないアルバイトの男性運転手(43)の、居眠り運
転によるものだった。彼は長距離バスの乗務経験は乏しく、安全教
育も受けたことがない、連休という繁忙期の人手不足を補う「バイ
ト」に過ぎなかった。(「40代フリーター」の事故というべきか?)

会社側はかなり無理な仕事の受注とバスの運行を常態としていたか
のようで、乗務員の運行管理等に安全配慮を行き届かせる体制では
なかったようである。事故が起きる危険性よりも、儲け優先の体質
だったのだろう。
だが、このバス事故のマスコミ報道は、会社のお抱え弁護士の手腕
もあって、居眠りした運転手が悪い、かのような印象に流れている。


私は、このバス事故の背景を聞いたとき、近所のスーパーの店頭で
アルバイトでクリスマスにケーキを売っていた中年女性のことを思
い出していた。
彼女は時給何百円かでケーキを売るバイトに過ぎなかったのに、ケ
ーキが売れ残ったら、彼女が買い取らねばならないと言っていた。
当節職を得るのは、その位、世の中厳しいという話だった。

彼女が正規・非正規の雇用であるを問わず、売れ残ったケーキはス
ーパー側が損失を負担するのが筋である。儲けは会社が独り占めし
損失は社員やバイトに押し付けるというのは、悪質な構図である。
(同様の構図は、親会社と下請けの関係にも見られるものである。)

バイト身分の人間に、責任やリスクの高い仕事をさせて、事故を起
こしたら、その責めを労働者側に科すかのような、(勿論、居眠り
をした運転手にも責任はあるが)、会社ばかり美味しい処だけ食い
逃げするかのようで、こんな企業倫理を欠いた会社と風潮が、巷に
は増加しているのだ。

企業のカネ儲けの犠牲になるのが、弱い立場の、パート・派遣・バ
イトの労働者だったり、バス事故の場合には、カネを払った消費者
(乗客)までが命を落としたり、痛い目・怖い目に遭ったりする。
企業―労働者―消費者という、三者のトライアングルで、
企業の安定収益は、労働者から搾取・収奪によって確保され、さら
に時には、消費者までもが巻き添えにされ、収奪されている。

今回の高速バス事故について、小泉政権による規制緩和政策が根本
原因という論調をネットで見かけたが、自社利益ばかり追求して
労働者或いは生活者(消費者)を、メシの種であって人として見てい
ないような、企業という構成体を、もっと根源的に問い直すべきだ
と思う。
企業は、収益以前に被雇用者・消費者に対して、人格としての尊重
と生活の安全・安心の責務を、第一に負うように、企業倫理の枠組
が整えられるべきである。

国・行政―企業―国民(生活者)という三者関係を考えると、企業を
正し得る力関係にあるのは、労働組合よりも国・行政であり、
政治こそ、本来その使命を担うべきである。

べき論としては、こんなことになるが、労働者・消費者を犠牲にし
しわ寄せをかけることで、利益を温存し損失を埋めるかのような企
業のあり方(詐欺まがい商品を売るブラック会社から、例えば、
原発事故を想定した備えもせず、責任当事者の自覚もない、東電の
ような企業に至るまで)については、今後とも注視したいと思う。


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