脳辺雑記帖 (Nohhen-zahts)

脳病と心筋梗塞を患っての独り暮し、Rondo-Nth の生活・世相雑記。気まぐれ更新ですが、気長にお付合い下さい。

プライド欲求。

2012年05月12日 18時15分04秒 | コギト
フリーター出身の某若手評論家が、「他人から尊敬さえ得られるのな
ら、一生コンビニ・バイトでもよい。」という名言を吐いているそう
である。現代人の欲望の位相、あるいは消費の位相というものは、
プライド欲求、他人からの承認と尊敬を得ることにあるように思う。

有名なマズローの欲求階層説では、人間の基本欲求は、
生理的欲求・安全欲求・所属と愛の欲求・承認欲求・自己実現欲求、
の五段階の階層を上昇していくように示されている。
承認欲求は、「自己実現」の手前の第四の欲求に位置する。

そういえば、ひと頃やけに「自己実現」ということをマスコミが囃した
てていたが、最近はあまり聞かなくなった。
非正規社員比率の高まりと関係があるのか、今日では、自己実現よりも、
「承認と尊敬」が欲求・欲望のキーワードに思える。

TVを観ていても、ひと昔に比べて、お笑い芸人やタレントが身の丈を
低くして視聴者(消費者)にウケを狙っているように見える。
番組を観ている側よりも、バカで低い立ち位置に自分を晒し出すことで、
視聴者の自尊心に媚びるような演出が狙われているのだろう。

番組制作者は、一般視聴者(消費者)の性好を心得ているのである。
バカだったり、ブスだったり、デブだったり、オカマだったり‥という
出演者を出すことで、「コイツ、バカだな」と見下げて笑われることで、
視聴者を持ち上げ、自尊心をくすぐり、視聴者の「承認(プライド)欲求」
に応えているのである。
(例えば、秋葉原のメイド喫茶のようなコンセプトで、他者からの「承認
と尊敬」、つまりプライド獲得欲求をキーワードにした、様々なビジネ
スや、詐欺までもが今後も出現するのだろう。)


私は全く興味ないが、様々なポータブル・ゲームがあり、電車の中でも
盛んにやっている光景を見かけるが、やっているヒトに何が面白いのか
訊いてみたら、自分の能力とかプライドに賭けて、何処までクリア出来
るか、出来たときの達成感みたいなものが良くてやっているとか‥。

この種のゲームというものには、擬似コミュニケーションがあり、仕組
みに面白さがあり、もしかしたら、プチ自己実現みたいな感覚もあるの
かなと思うと、現実の自己実現は諦めて、ゲームにそれを求めていれば
済んでしまう時代、それで済んでしまう人生を送っていて、不満もない
世代や人種が、蔓延しつつあるのかもしれない。

理想の自己なんて幻想であり、自己実現も仮想のゲームで自足する。
それなら、承認と尊敬も、現実的にというよりも、ゲーム的な獲得が
目指されているのかもしれない。
ヒトは安定した仕事さえあれば、それで生理・安全・所属までの欲求が
満たされ、愛が無くとも異性を持ち、それとゲーム的擬似現実があれば、
結婚も家庭もなくとも、それで足りてしまう時代なのかもしれない。

マズローが最高位に示した「自己実現」は、成功や出世等の「物語」が
魅力を喪失しつつあることと、「自己完結」という状態に、実生活が
定位されることで、幻の概念に転落しつつあるのではなかろうか。


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