今週は冷えてきたので、引っ越して初めてガス・ストーヴを付けた。
備え付けのエアコンもあるが、寒い日の、ストーヴの炎が好きだ。
この中古賃貸マンションを選んだ理由のひとつが、壁にガスの取付口
があることだった。最新の物件には、あまり無いのだそうだ。
関東地方はここのところ天気が悪いが、晴れた日には、都営交通の無
料パスを利用して、近場の繁華街やら名所を訪れひとり散策している。
平日の昼間でもヒマそうな中・老年の男は多い。大体に身なりに構わ
ない格好をしていて、何を考えて生きてるのか判らない雰囲気を漂わ
せている。多分、(人生が終わっていて?)何も考えてないのだろう。
そんな事を言ってる私だって、人様から眺めたらどう映っているもの
やら。街歩きをしてると、喫煙者を見掛けなくなったと思う。電車の
中で新聞や週刊誌を読む人も見かけなくなった。またホームレスも極
端に減った。若い女性は皆似たような髪型をして明るく笑い、その他
は、携帯端末を手のひらでじっと見詰めている人ばかりの風景だ。
師走まであと1週間。さて正月はどう過ごしたものか。一戸建ての実
家にいた頃は、年末には家中を大掃除して、神棚を拭いて注連縄を換
えたり、お供え物を買い込んだり等々したものだが。今は、節目のな
い不分明な時間が私を取り巻き、日々だらりのっそりと過ぎているだ
けである。
要するに、私にとっての次の人生が、まだ始まっていないのである。
いや始める気が興らないというか…。でももう少し、ストーヴの火を
見つめながら、この曖昧な時間にたゆたっていたい気もする。
今読んでいる本から…。
少年はその日、畑から大根を盗んで食べた。
薬丸岳『蒼食の大地』の冒頭、老人が少年に言う。
「そうじゃ。悪いことをすると神様はそいつの心に灯るろうそくの火
をひとつ消すんじゃ。(略) 代わりに正しいことをすると神様は
ろうそくの火をひとつ灯してくれる。
おまえは今日神様からろうそくの火をひとつ吹き消された。
だからおまえの目を見ただけで爺ちゃんはわかったんじゃ」
老人はいう。いくつのろうそくが灯っているのかはその人によって
違う。生きている間に明かりを持たなかった者は、真っ暗な闇の中
を無限にさまようことになる、それが「地獄」だと。
そんなことにならないように、
心に灯るろうそくを失わないこと。
誰も見ていなくとも、神様は見ているって…。
参照引用文献:薬丸岳『蒼食の大地』(中央公論新社)
備え付けのエアコンもあるが、寒い日の、ストーヴの炎が好きだ。
この中古賃貸マンションを選んだ理由のひとつが、壁にガスの取付口
があることだった。最新の物件には、あまり無いのだそうだ。
関東地方はここのところ天気が悪いが、晴れた日には、都営交通の無
料パスを利用して、近場の繁華街やら名所を訪れひとり散策している。
平日の昼間でもヒマそうな中・老年の男は多い。大体に身なりに構わ
ない格好をしていて、何を考えて生きてるのか判らない雰囲気を漂わ
せている。多分、(人生が終わっていて?)何も考えてないのだろう。
そんな事を言ってる私だって、人様から眺めたらどう映っているもの
やら。街歩きをしてると、喫煙者を見掛けなくなったと思う。電車の
中で新聞や週刊誌を読む人も見かけなくなった。またホームレスも極
端に減った。若い女性は皆似たような髪型をして明るく笑い、その他
は、携帯端末を手のひらでじっと見詰めている人ばかりの風景だ。
師走まであと1週間。さて正月はどう過ごしたものか。一戸建ての実
家にいた頃は、年末には家中を大掃除して、神棚を拭いて注連縄を換
えたり、お供え物を買い込んだり等々したものだが。今は、節目のな
い不分明な時間が私を取り巻き、日々だらりのっそりと過ぎているだ
けである。
要するに、私にとっての次の人生が、まだ始まっていないのである。
いや始める気が興らないというか…。でももう少し、ストーヴの火を
見つめながら、この曖昧な時間にたゆたっていたい気もする。
今読んでいる本から…。
少年はその日、畑から大根を盗んで食べた。
薬丸岳『蒼食の大地』の冒頭、老人が少年に言う。
「そうじゃ。悪いことをすると神様はそいつの心に灯るろうそくの火
をひとつ消すんじゃ。(略) 代わりに正しいことをすると神様は
ろうそくの火をひとつ灯してくれる。
おまえは今日神様からろうそくの火をひとつ吹き消された。
だからおまえの目を見ただけで爺ちゃんはわかったんじゃ」
老人はいう。いくつのろうそくが灯っているのかはその人によって
違う。生きている間に明かりを持たなかった者は、真っ暗な闇の中
を無限にさまようことになる、それが「地獄」だと。
そんなことにならないように、
心に灯るろうそくを失わないこと。
誰も見ていなくとも、神様は見ているって…。
参照引用文献:薬丸岳『蒼食の大地』(中央公論新社)