脳辺雑記帖 (Nohhen-zahts)

脳病と心筋梗塞を患っての独り暮し、Rondo-Nth の生活・世相雑記。気まぐれ更新ですが、気長にお付合い下さい。

初夢の、サンデル講義。

2011年01月03日 12時51分09秒 | コギト
正月も、はや、終わりかな。
良き年になるかは分からないけど、新年とは、始まりであり、
一先ず喜びを以って、祝うのが宜しいのでしょう。

元旦の夜に、NHKでハーバード大学のサンデル教授の「白熱教室」と
いうのを初めて観た。正義や公正とは何かがテーマで、ベンサムや
ジョン・スチュアート・ミルの功利主義を採り上げていた。

日本でも近年、「費用対効果」というモノサシで考えることがパラダイム
のようになってきた。講義では、「最大多数の最大幸福」を費用対便益
という言葉に置き換えて、学生たちに思考を促していた。

サンデル先生の授業は、大教室に溢れる学生たちと教授との対話形式で
進行し、千人を超えるであろう学生たちに私語は全くない。誰もがサン
デル先生の政治哲学の討論に耳を傾けている。これだけのパフォーマンス
を生み出せる、この教授の力量は素晴らしい。

教授は決して学生をやり込めることはなく、ときにはユーモアを交えて
切り返す。
 ビル・ゲイツの時給ならぬ、秒給が150ドルであるという話をした後、
彼は道に百ドル札が落ちていても、拾わないことになるね、とか、
「では君は、古代ローマの競技場で、キリスト教徒をライオンと戦わせる
見世物を多くの観衆が楽しんだことは、最大多数のためには一人の人間が
犠牲になることも、仕方がないと言えるかな?」みたいな。

自分(自分の生命、身体、財産等)は自分に帰属するのであり、国家が
それを税金等として取り立てることは、おかしいのではないか。
そんな議論があった。
ある女子学生は、自分は自分に帰属するのだが、我々は社会を営んでいる
以上、自分の一部は放棄する必要があるみたいな発言をしていた。
(私は、そこまで番組を観て、TVを消して寝てしまった。)


我々とは先ず、各自による自分の集まりであり、かつ各自が放棄した
自分で以って社会とは成り立っている、という考え方が出来る。
何でもない考え方のようでいて、私には重要な示唆を含んで感じられた。

人が生きるということは社会を生きるということに他ならず、それは、
各自の自己放棄によって成立しているのである。
放棄し得ぬ、侵害が許されない自分(の生命・身体・財産等)を相互に
尊重し保持しつつ、社会とは人々からの自己放棄を掻き集め寄せ集めた
処の、共有的所産ということである。

ところで、近頃の日本に時折発生する、自滅的な無差別殺人事件がある
が、犯人に共通するのは、社会と自分との乖離感覚だと思う。
自分は自分の生存のためにだけ生きているだけだ。
あるいは社会とは、自分から何もかもを奪っていく存在体だ、とでもいう
ような恨み節である。生活に生存に、追い詰められた存在だからこそ、
そのような心情や考えを強くするのだろう。


サンデル先生だったら、
彼らのようなタイプの犯罪(傾向)者に対して何と言うだろうか?


(サンデル先生には恥ずかしくも申し訳ないが、以下は私の勝手な夢想。)


*  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *


君は、この社会から脱落しているように、思っているのかもしれないが、
また君は、自分が生きるためにだけ働いていると感じているのだろうが、
君も他の誰もと同じように、いや貧しい君はそれ以上に、ギリギリの自分
から、なけなしの自己を社会に放棄して、立派に生きてきたとは考えてみ
ないかね?

先生、そんなオタメゴカシが何だというんですか!
社会は、立場の弱い俺から搾取して身ぐるみ剥いでいくだけでしょう。
そんな社会の仕打ちに、もう耐えられなくなった。
駅前を歩いている奴等でも刺し殺して、俺も自滅するつもりですよ。

まあ、待ちなさい。
結論を悪い方に急いではいけない。
君は職を転々としつつも、真面目にやってきたのではないのかね?
そのことに誇りを持つべきだ。君も必要な、この社会の一員なのだよ。
百歩譲って、君が自滅することは、君の自己決定の自由だとしよう。
だが君に無差別に殺される人々は、君に何か悪いことをしたのかね?

生きることの辛さや痛みは、君だけでなく、誰もが感じていることだ。
今の君以上に心の痛みやら傷を抱えても、養う家族があり、年老いた親を
介護する人もいれば、病に苦しむ人、多額の借金に苦しむ人など様々だ。
多くのものを背負ってでも、生きようとしている人々のことを、
君はどう感じるかね? 君が社会が憎くて、刃を向ける相手だろうか?

(この夢の対話は、延々続くので、以下略。)

*  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *

サンデル先生及びファンの方、ごめんなさい。
*印で挟んだ部分は、私の初夢みたいなものです。

また、こんな調子で、今年もブログを書きます。
こんな拙いブログでよかったら、今年もお越し下さい。













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