安田真奈監督は大阪の出身で、地元の神戸大学卒の紛れもない関西人です。小柄で、いまだ少女のような風情のある監督ですが、内実はとてもバイタリティに溢れた方でした。いや、男優位、男中心の映画界で、女性という大きなハンデを乗り越えて映画を創るには、バイタリティなしには到底できないと、お話を聞いてそう思いました。
(以下、安田真奈監督が語る)
小説はボキャブラリーがなければ書けないが、映画は総合芸術
設計図があれば誰でもできる、という監督。
女性で、大阪に住んでいて、松下電器の会社員という
大きなハンデがありながら、映画への愛を捨てきれず、
自らの各方面へのPRを欠かさずに
「大阪でハートウォーミングな作品を作る、安田」と
覚えて貰えるようにプロデューサーへ売り込んできた。
そう語る監督に、強い映画への情熱とバイタリティなくして
映画作りは到底無理という事を知りました。
最新作やそれまでの作品の裏話など面白く聴きながら
「幸福のスイッチ」の話しが聞きたいな~っと、思って
待っていたら、最後のほうでやっとその話になりました。
予告編が上映され、娘役である上野樹里さんへ
電気屋の親父ジュリーの怒号が
狭い会場内に響き渡りました。
アホカ!!
監督が脚本を書いたが、「電気屋の話しが面白いか?」
「客が集まらないと断られ続けた」
もともと最初は、電気屋と息子の話しだったそうです。
何度も脚本を書きなおすも、電気屋の親父が娘と揉める・・
そんな話にわざわざ客は来ないと、3年間も断られ続け
それでも色々な電気屋さんを取材、自ら頼んで
電気屋さんで接客し、ネタを拾い、取材したネタを
シナリオに全部入れた。
小さい街の電気屋さんは、顧客の鍵を預かっている。
街の電気屋は人の家を廻るのが商売である。
最初は姉と弟の話しであったのを、
三姉妹にして、華のある話に替え
10パターン以上をシナリオに書いたが、
親の姿を見る子供、というパターンは変えなかった。
お陰様でヒットしました。
ジュリーは素敵でした。偉い人は偉ぶらない。
作品の3年前まで松下の会社員でしたが、
これが監督デビュー作になりました。
沢田さんは、5日間だけの参加でした、ギャラが高いので。
このシーンをもう一回と、何回のやりなおしも
キッチリ仕事して、全員がファンになりました。
偉い人は偉ぶらない、気さくでジェントルマンです。
上野樹里さんは、役が憑依するタイプで、どこでも成り切っていた。
中村静香さんはオーディションで選びました。
本庄まなみさんは、爽やかで素適。
田辺市の皆さんにも協力してもらいました。
DVDは無いようなので、ネット配信されるようにしたい。
トーク後の質問コーナーでは「幸福のスイッチ」に
ついて質問する方が多かったので、やはりこの作品の
ファンが多数参加していたのかも。
質問では「大阪弁を喋れる人を選びますか?」に「もちろん!」
ニセ大阪弁は許せないとのことでした。
「ジュリーの電気屋の親父が、飲み屋の女性と仲良くなっていたが
二人の関係は、本当はどうだったんですか?モヤモヤします」
との男性の質問に、どうだったんでしょう?と
ハッキリした答えは無かったです。
和歌山出身という女性は、知っている場所が出て嬉しい!
どんな様子で撮影しましたか?の質問に監督は
田辺市での撮影で、台風の夜に顧客を廻る
シーンは3件ほど家を借りて、撮影ポイントを変えて
10件ほどに見せかけたと、話していました。
私は質問を何も思いつかず、黙って聞いていましたが
しまった、ジュリーをキャスティングした理由など
質問すれば良かった、あとから後悔しました、残念!
呼んでくれたら、どこでもお話をしますと語る監督は
華奢な普通の女性の見た目よりも、ずっとずっと映画への情熱と
やる気に溢れた人だと思いました。
会が終了した後、すぐに退散せず、監督にご挨拶がしたくて、
『是非「幸福のスイッチ」を再び多くの方に見て
いただけるようにして下さい』と監督にお話ししてきました。
監督はもちろんです、と笑顔で応対してくださいましたが・・
なんてこった、私は「幸福(こうふく)のスイッチ」と
言ってしまったんです。
「幸福(しあわせ)のスイッチ」なのに・・
なんと失礼な(-_-;)
あとで、しまった!と思い、大いに反省しました。
安田監督の映画製作にまつわる2007年のインタビュー
こちら⇒『幸福のスイッチ』で幸せのスイッチオン! OL出身の映画監督・安田真奈インタビュー