俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

詰め込み教育(2)

2013-05-10 09:59:12 | Weblog
 「ゆとり教育」は見直されたが「詰め込み教育」が復活するとは思えない。私は初等教育は詰め込み教育が一番良いと思っている。
 脳が未成熟な状態の小学生にとって最も大切なことは脳を成長させることだ。成長させるために必要なことは「鍛える」ということだ。脳を完成させるのは20歳以降でも遅くない。
 野球をやりたければまず足腰を鍛えねばならない。怪我を避けるためには関節を鍛えて柔軟にしなければならない。それを怠ったままで野球をやってもただのボール遊びにしかならない。体力が持続しないし怪我をすることも多かろう。
 初等教育の本質は記憶だ。記憶力を鍛えることが将来の創造力に繋がる。九九を覚え、正しい日本語を覚え、基礎的な知識を身に付けることが思考力の礎になる。
 「守破離」という言葉がある。習得するためにはまず「守」から始めねばならない。充分な「守」を身に付けない者には「破」も「離」も不可能だ。先人の知恵を欠いたままでは独り善がりで支離滅裂な思考力しか得られない。
 初等教育での詰め込みは決してそれ自体が目的ではない。優れた文章を多く読むことによって読解力も表現力も高まる。多くの文章から学んでいなければまともな表現は不可能だ。それは日本語にさえならず、他人が理解できる言葉にはならない。ドレミを知らない者による自称独創的音楽と同じようなもので雑音でしかない。
 インドでは2桁の掛け算まで暗記させていると言う。これは暗記させることが目的ではなく脳を鍛えるための手段だろう。詰め込み教育を否定する人は目的と手段を区別できないようだ。

進化の袋小路

2013-05-10 09:29:38 | Weblog
 70億という空前絶後の数にまで異常増殖した人類は人間社会という閉鎖された生態系の中でしか生きられなくなった。「人の敵は人」だけであり、人類に敵対する物を許さない。だから地震や新型ウィルスなどに対して恐怖と同時に憎悪を感じている。
 閉じた生態系の中では特殊な進化が起こる。これは進化と言うよりも奇形化と言ったほうが適切かも知れない。特殊な環境の元で純粋培養された生物が自然環境では生存できないように人類はどんどん反自然へと向かい自然に対する適応力を失いつつある。
 進化の袋小路に迷い込んだ動物は少なくない。よく知られている例はクジャクだ。メスのクジャクは立派な尾羽を持つオスを好む。その結果としてクジャクの尾羽は肥大化した。しかし種族内での競争において有利になる巨大な尾羽は生存競争においては大きなハンディとなる。肉食動物によって容易に捕獲されるからだ。
 日本人は日本列島という閉じた空間に棲んでいるから他の人類以上にガラパゴス化し易い。
 私が最も危惧するのは若い女性が痩せ過ぎていることだ。栄養摂取量が北朝鮮などの最貧国レベルにまで落ちているそうだ。こんな異常事態を招いた責任の一端はマスコミにある。
 三次元である人間を二次元のテレビ映像で見ると少し太って見える。そのために少し細い女性を使うのだろうが、これがどんどんエスカレートした。今では痩せていなければ美しくないという風潮だ。それを女性週刊誌がダイエット記事で煽り立てる。
 憲法25条にも書かれているように、日本人には「健康で文化的な生活」を営む権利がある。マスコミがマインドコントロールを使って痩身願望を煽ることは、女性の健康を奪うという意味で憲法違反とさえ言えよう。危険とは言い難い微量の食品添加物や農薬について空騒ぎをすることをやめて、命を奪いかねない過度の痩身願望に対してこそ警鐘を鳴らすべきだろう。