俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

確率論

2013-05-20 10:00:09 | Weblog
 ランダムに起こっていると思われることでもよく調べれば法則性が見つかる。サイコロがその典型例であり「出たら目」の筈でありながら集計すれば各々の目の確率は1/6になる。これは「大数の法則」と呼ばれている。
 但しこの法則が成り立つのはマクロとして捕らえた場合であり個々の試行がこの法則に従う訳ではない。例えば5回続けて他の目ばかりが出たからと言って次に特定の目が出る確率が高まる訳ではなく、どの目が出る確率も常に1/6だ。
 航空機事故による死亡率は25億㎞当たり1人らしいが決してたまたま25億㎞目に当たる飛行が危険な訳ではない。
 余談だが、自動車事故による死亡者数は日本では大体1億㎞当たり1人で、意外なことに先進国では平均的な数値だ。これは米国などと比べて対歩行者・対自転車の死亡事故が多いことが原因と考えられる。
 地震予知ができると主張する似非学者は確率論を勉強する必要がある。この地域は100年に1回、あの地域は1000年に1回地震が起こるということだけを根拠にして「そろそろ地震が起こる」と警告するが、これはサイコロの目が7回目には同じ目が出ると信じる無知な人と同じレベルの間違いだ。
 サイコロの目さえ予測できない現代文明に地震予知などできる筈が無い。できないことをできると言って研究費を得ようとするのは詐欺にも等しい。こんな無駄遣いを避けるためにも、政治家も官僚も確率論を勉強すべきだ。

翻訳

2013-05-20 09:26:12 | Weblog
 今回の橋下市長に関するトラブルで、翻訳の難しさを改めて思い知らされた。異なった文化と言語を持つ人に言葉だけで意思を伝えることは至難の業だ。
 日本語は語彙が豊富だ。それは表意文字である漢字の造語力が高いからだ。漢字をいじればかなり微妙なニュアンスまで伝えることができる。「感字」という表記が可能なのは日本語ならではのことだろう。
 しかも日本語では曖昧表現が多い。これは狭い島国なので文化が共有されているからだ。敢えて露骨な言葉を使わなくても真意は充分に伝わる。
 朝鮮戦争の時にマリリン・モンローが慰問のために韓国の米軍基地を訪れた。日本語では「慰問」と「慰安」を使い分けることができるが英語ではどちらもcomfortだ。だからマリリン・モンローを「慰安婦」と呼んでも間違いではない。実際、大戦中には多くの「映画スタア」が満州などを「慰安」のために訪れたそうだ。
 40歳を過ぎてから「和文和訳」という言葉を知った。一流の進学校では英文和訳のテクニックとして教えているらしい。つまりいきなり日本文を英訳しようとせずにまず英語に変え易い日本文に変えるというテクニックだ。
 忘れられない経験がある。大学入試で長文の英訳問題がありその中に「新幹線」という言葉があってハタと困り果ててしまった。苦し紛れにnew-main-railwayと訳したがsuper-expressが正解だったようだ。
 差別とか格差といった予め価値判断を含んだ言葉を英訳しようとして困り果てる人は少なくなかろう。