俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

黒人

2013-12-30 09:36:09 | Weblog
 サッカーのワールドカップで日本と同じ組になったコートジボワールはかつては「象牙海岸」と呼ばれていた。そのすぐそばには「奴隷海岸」という国があったが今ではトーゴ、ベナンおよびナイジェリアの一部として3国に分かれている。
 象牙海岸と呼ばれたのはここに象牙の積出港があったからであり、奴隷海岸は奴隷の積出港があったからだ。
 この地が奴隷の積出港に選ばれたのは良港があったことと共に、奴隷とされた黒人の質が高かったからだろう。今回のワールドカップのアフリカ代表はアルジェリア以外の4チームがこの近辺の国々でどれもが連続出場国だ。この地域の人々の身体能力は特に優れているようだ。
 移送できる奴隷の数は限られていた。帆船だから1回に数百人しか運べないので「高品質」な者を厳選し数ヶ月掛けてアメリカなどへ運んだ。詰め込まれた奴隷の間では疫病も発生するから病に強くなければ生き残れなかった。こうして「最高品質」の奴隷だけが輸出された。
 アメリカなどでは更に選別が行われた。特別優秀な奴隷だけが交配を許された。家畜同然だ。こうやって何度も淘汰されたからこそアメリカやジャマイカなどの黒人アスリートは卓越している。
 2月2日付けの「多彩な黒人」でも書いたことだが、人類発祥の地であるアフリカの黒人は非常に多彩だ。白人も黄色人種も北東部アフリカを出た一部の黒人から枝分かれした末裔に過ぎない。黒人の一部から分化したので遺伝子の多様性が乏しい。違いが少なければ特定の疫病などで絶滅する恐れも大きい。
 シャレド・ダイアモンドは「銃・病原菌・鉄」で黒人を「黒人・ピグミー・コイサン(ホッテントットあるいはブッシュマン)」に3分類しているが、スプリンターが多い西海岸と長距離ランナーを輩出するケニヤやエチオピアなどの東部とでは人種的特徴がかなり異なる。一括されている「黒人」はDNAの宝庫であり将来の人類の多様性の鍵を握っているのではないだろうか。

浮気男

2013-12-30 09:05:05 | Weblog
 浮気男はよくモテる。逆によくモテるからこそ浮気男であり得るのだろう。多分、彼は容姿も話術も優れており、金銭面でも恵まれているからよくモテるのだろう。しかし男から見て「なぜこんな男が」と思うようなモテ男も少なくない。軽薄で無責任で調子者であれば男からは嫌われる。
 男よりも嫉妬深い筈の女が浮気男を好きになるのは奇妙な現象だ。堅実な男を選ぶという戦略のほうが女にとっては有利な筈だ。不特定多数の女を無数回孕ませられる男とは違って、女は生涯せいぜい10回程度の出産しかできず危険も負担も大きい。女は特定の男と強い絆を結んだほうが子孫を多く残せる可能性が高い。だから一夫一妻制が成立している。
 正攻法で考えればこんな理屈になるが、子孫を増やすための裏の戦略があり得る。こんな浮気男の息子を産んでその子が父親の特性を受け継いで多くの女との間で子供を作ればその結果として彼女の子孫が増えるということだ。だからこそ浮気男を好むという妙な性質が淘汰されなかったと考えられる。
 種族内競争(性淘汰)においてはこんな奇妙な適者生存がしばしば起こる。最もよく知られているのはメスのクジャクであり、飛ぶためには邪魔になるほど大きな尾羽を持つオスを交尾相手に選ぶ。
 生存競争においては子孫が多く繁殖すれば適者と言える。但しその戦略は様々であり、適者生存とは決して優勝劣敗・弱肉強食の競争原理ではない。多様な適者が存在し得るのだからむしろ共存原理・棲み分け原理とさえ思える。浮気男も大きな尾羽も子孫を増やすために有効な戦略だ。常識的に考えれば誤りとしか思えない戦略が正解となり得る。正解が1つではないからこそ自然界も人間界も面白く知恵の源たり得る。