俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

常識

2013-07-03 11:18:41 | Weblog
 「肉は体に悪い」と信じている人が少なくない。彼らの信仰は実はアメリカ発だ。私は彼らを「アメリカかぶれ」と呼びたい。アメリカ人にとって肉食は体に悪い。それは彼らが1日に300gも食べているからだ。これを150gに減らそうというのがアメリカでの活動だ。一方、日本人の摂取量は80g程度だ。これをアメリカでの目標値にするためには2倍を食べる必要がある。
 BMI22を理想体重と信じている人がいる。しかしこれは手足の長い西洋人にとっての基準ではないだろうか。胴長・短足でしかも頭でっかちの日本人のBMI値は高くても当然だ。日本人として標準的なプロポーションの人なら最適値は25ぐらいなのではないだろうか。多くの調査がこのことを裏付けている。
 老人は薄味の淡白な食べ物が好きだと信じている人も少なくなかろう。昔の老人ならそうだったかも知れない。ずっと薄味に親しんでいたからだ。現代の老人はかなり違う。中曽根康弘元首相のように90歳を越えても肉が大好きな老人もいる。何よりも、老人は味覚も含めてあらゆる知覚が劣化しているのだから、中高年よりも濃い味を好んでも不思議ではない、
 ライスをフォークの裏に乗せて食べることがテーブルマナーだと教わった。これは誰が流したデマなのか分からない。食べにくいとは思ったが「マナーだ」と押し付けられたら逆らい辛い。大学生の頃にはどこで覚えたのか知らないが「アメリカンスタイル」で食べるようになった。ナイフで切る必要のあるものは先に切ってしまって、右手に持ったフォークだけで食べたものだ。今ではナイフとフォークを使う洋食でライスを頼むことは無いので妙な「テーブルマナー」に煩わされずに済んでいる。
 世間には迷惑な常識が蔓延している。

子供の自殺

2013-07-03 10:54:27 | Weblog
 日本のマスコミは子供が自殺すると大喜びして競って報道する。これで視聴率も発行部数も安泰だからだ。先進国では子供の自殺を極力報道しないようにしているのに日本だけは大騒ぎする。自粛の申し合わせはカルテルだ、とか報道の自由だ、とか勝手な理屈を並べるが商業主義に過ぎない。センセーショナルに騒ぎ立てて注目されたいだけだ。
 欧米で子供の自殺についての報道が自粛されているのはそれが自殺を誘発するからだ。子供の自殺を報道すればするほど自殺が増える。報道は警鐘の役割を果たさず誘導灯になるからだ。
 自殺すれば一躍悲劇のヒーローやヒロインに祭り上げられる。誹謗中傷のメモを残せば、同級生であれ教師であれ親であれ極悪人に仕立て上げることができる。そのメモの真偽は全く問われない。こんな簡単な憂さ晴らしは無かろう。
 子供は未開人と同様、奇妙な死生観を持っている。死んでも無に帰するとは考えず、幽霊のようなものになって未来永劫存在すると考え勝ちだ。だから自分の死によって嫌な奴らが処罰される姿を見ることができると思っている。
 こんな幼稚な連中が死を身近に感じたら簡単に自殺を選んでしまう。それを防ぐためにも子供の自殺報道を慎む必要がある。
 日本のマスコミは無責任体質だからその報道がどれほど有害であるかを自覚しない。その報道のせいで子供の自殺が増えても「事実を伝えて何が悪い」と開き直るだけだ。彼らは金儲けのためなら命が全く無意味に失われても構わないと信じるとんでもない悪党どもだ。

産休3年

2013-07-01 11:13:55 | Weblog
 安倍首相は経済界に3年の産休を奨励しているが、これは女性にとって朗報だろうか。私はそうは思わない。3年のブランクは大き過ぎる。実は私自身が丁度3年間のブランクを経験して、そのためにその後の昇進で不利になったと思っているからだ。
 私は社命により3年間だけ公務員になった。3年後の復帰時には浦島太郎になったようなものだった。そのためにそれまで従事していた本流から外れて傍流を歩むことを余儀無くされた。3年遅れどころか中途再入社のような扱いを受けた。
 注意すべきことは、直近の3年間が欠落するということだ。周囲が直近の情報を持っているのに自分だけが3年前までの情報しか持っていない。3年遅く入社した人に欠けているのは最も古い3年間だが、私の場合は直近の3年間が欠けているから3年後輩よりも低く位置付けられるということになる。
 社命によるブランクであろうとも企業は大目に見てくれない。これが自己都合によるブランクであれば情け容赦しない。それまでトップクラスの評価であった人がいきなりお荷物扱いされかねない。
 日本人はなぜ有給休暇の取得率が低いのだろうか。様々な要因があるが、最新の情報から置き去りにされたくないということは決して小さいことではない。たった1日の間に社内外の情勢ががらりと変わることさえあり得る。これが3年ともなればハンディが大き過ぎる。
 3年間の産休の場合、復職するつもりでいればその期待は裏切られる。別の会社に再就職するというぐらいの覚悟が必要だ。それまでの評価が高かった人ほど落差の大きさに驚かされて惨めな気分になることだろう。

四谷怪談

2013-07-01 10:43:47 | Weblog
 夫の伊右衛門に毒を盛られたお岩は、顔の半分が醜く腫れ上がって髪が抜け落ちて悶え苦しんで死んだ。伊右衛門もお岩の幽霊に祟られて死んだ。
 これが四谷怪談の粗筋だ。この話は実話に基くと言われているが、幽霊ではなく病気によってこの事件は説明できる。どちらが感染源かは分からないが二人は梅毒だ。お岩は皮膚が冒され、伊右衛門は脳を冒された。お岩の幽霊は実在せず総て伊右衛門の幻覚に過ぎない。だから幽霊は伊右衛門にしか見えなかった。
 このように心霊現象と思われたものが科学的に解明できることは少なくない。雨乞いの習慣が世界中にあるのもそれが有効だからではない。雨乞いをしても降らなかった集落は滅び、たまたま降った集落だけが生き残ったからだ。彼らは雨乞いが有効だったという迷信を語り継ぐ。
 ナマズが暴れたら地震が起こるという俗説がある。どの程度正確なのかは知らないが幾らかは相関性があるようだから、デタラメな予測ばかりをバラ撒く地震学者よりも的中率が高いのではないだろうか。ナマズが地震を予知できるのは微振動か地磁気あるいは未だ科学が解明していない未知のエネルギーを知覚しているからと考えられる。とは言え「ナマズが地震を起こす」と考えるのは明白に誤りだ。あり得るのは微妙な変動を知覚する能力だけであって地震を起こす能力などあり得ない。
 戦時中に「空襲警報をやめろ」と要求した人がいたそうだ。その理由は「空襲警報が鳴るから爆撃される」とのことだった。ここまで因果性がひっくり返るとジョークにしかならない。