アンティマキのいいかげん田舎暮らし

アンティマキは、愛知県北東部の山里にある、草木染めと焼き菓子の工房です。スローライフの忙しい日々を綴ります。

映画「種まく旅人 実りの茶」

2021-10-03 23:58:38 | 映画とドラマと本と絵画

        大分県臼杵市が舞台の、10年ほど前の日本映画。たまたまテレビで放映されていたのを見ました。たぶん、ご当地映画とでもいうのか、地方の行政の肝いりで作った映画なのではないのかな、とおもいます。

   茶農家を営む老人~榎本明のもとに帰ってきた孫娘が主人公。彼女は東京の会社でデザイナーとして活躍しているつもりだったのに、アパレル業界の不況の折から、意に染まない仕事を命じられたため、退職してしまいます。父親からなじられ、傷心の思いで父の故郷を訪れます。

   祖父は何十年と有機栽培で茶の生産にいそしんできた人。でも、周辺の茶畑は大方大手の茶業メーカーに買い取られ、農薬散布が当たりまえの慣行栽培で収益をあげ、市役所はこのメーカーが町に利益をもたらすものと信じてうたがわない。だから、主人公の祖父の有機農園は目の上のたん瘤のような存在とおもわれています。

   その祖父のお茶栽培を尊敬し、祖父からも厚い信頼を得ている男がからみ、主人公が祖父の仕事を理解し、自ら農園の作業に精を出し、苦労しながらはじめて新茶づくりに挑むまでを描いています。

   はじめは田舎独特の気風になじまなかった主人公が、お茶栽培に喜びと生きがいを見出すにつれて、田舎の気風にも居心地の良さを感じるようになる過程が、すなおというか単純というか、わかりやすく語られます。

   つい、なんとなく見てしまいましたが、すごい!と思ったのは延々と続くお茶畑。無農薬栽培の茶畑に害虫が大量発生するシーンがありますが、一本ずつ見極めては枝を折りとっていく作業にはびっくり。広大な農園でこういうことをするなんて至難の業です。

   出来上がったお茶はたぶん、劇中人物たちが感嘆する通りとてもおいしいものなのでしょう。一度は飲んでみたい。

   でも、作り手たちの苦労や工夫は尊敬に値しますが、わたしは、こういう高級なお茶はごくたまの贅沢でいいな、とおもいました。

   うちの敷地内には、実生で育ったお茶の木があちこちに生えています。うちだけでなく、このあたり、山道でさえも、ときおりお茶の木を見かけます。全くの野生ではなくて、昔大概の農家は家で飲む分のお茶は自家栽培していたので、そのこぼれ種があちこちに飛んで行ったのだと思います。新茶の季節に柔らかい新芽だけを摘み取ってお茶にするという作業はなかなかできないし、それほどの量もありません。でも、寒茶ならかんたんにできます。普段飲むお茶は、そんなので十分。そのほかに、野草や木々の葉で煮だしたお茶もおいしい。そして普段飲んでいるのは、三年番茶。

   余談になりましたが、ともあれ、この映画の茶園の風景はみものです。以前、臼杵市の残飯を肥料にする取り組みや有機小麦栽培だったかについて取り上げた映画を見たことがありますが、全市として、積極的に有機栽培に取り組んでいる町のようです。給食に有機野菜を取り入れようという話も、映画の中に出てきました。有機の里うすき「ほんまもん農産物」 | 臼杵市役所 (city.usuki.oita.jp)

   こういう、地味ながら、地方の一都市の取り組みを描いた軽い映画、もっとどんどん撮ったら面白い。

   

コメント
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