まず、ダグラス・J・デービス(英国ダーラム大学宗教学教授 )の
見方を見てみよう。
成長の活力(dynamics of growth)
[死の超克] 系図探究、神殿の儀式による死の超克はモルモ二
ズム成功の大きな鍵であった。死者のためのバプテスマとエンダ
ウメントの儀式はこの点で積極的な役割を果たしている、とデー
ビスはみる。(私は死者のバプテスマの教義は救いが、教えを聞
かないで亡くなった人にも及び得るという点で大きな普遍的要素
であり、成長の活力として大きいと思っている。沼野)
プロテスタンティズムの倫理をモルモン流に受け継いで、モル
モン教では復活後どうなるかというと地上でどのように暮らした
かによって決まってくる。達成意識型人種なのである。これは単
に救済宗教ではなく、昇栄志向宗教であってこの点はしばしば
「世界宗教」と同義に見られる。
末日聖徒が救いと昇栄の違いを認識し、礼拝堂と神殿が相互に
補関し合う関係にあることは活力と成長の特性であると見る。
制約
昇栄志向宗教はしかし、行いを強調するあまり燃え尽きてしま
う経験を生じ、信徒の余裕や自由を奪うことになる。時に「恵み
により救われる」と強調されることがあるのは、牧会的配慮から
であるが、教会が大きく成長すると権威への服従、儀式の強調が
優先されることになる。
次に、アメリカ的要素と強く結び付いている特徴は、将来モルモ
二ズムが世界宗教とみなされるかどうかに当たって制約となるだ
ろう。主要な世界宗教は発祥の地とのつながりが薄れ、多くの異
なる社会にあってそこの文化に適応(enculture)している。これ
までモルモン教は米以外では下位文化(sub-culture, ある特定社
会内の小グループ)として拡張してきたが、世界宗教としてでは
なかった。今の状態で拡張が続いていくとき、離反、分裂、広範
な局地化(地方色濃厚な教会と化すこと)が起こるのではないか。
アフリカ、インド、日本、ブラジルなどそれぞれに独特なモルモ
ン教徒の生活様式が出現するであろう。そうなって初めて世界宗
教の位置づけが現実味を帯びてくる。
ジャン・シップス
シップス女史も本質的な方向から吟味を試みている。宗教学者ニ
ニアン・スマートと宗教歴史家エリアーデの分析に従って、モル
モ二ズムを20年間吟味してきたところ、キリスト教、ユダヤ教に
見られる6つの特性が備わっているという。それは、「神話体系」、
「教義」、「儀式」、「社会・組織的特性」、「倫理」、「経験
的特性」である。
ただ、ユダヤ教と同様、ひとつの宗教として十分特性を具えてい
るが、まだ世界のいろいろな地域で十分文化的適応を遂げている
とは言えない。将来更に歩を進めて世界宗教となり得る「原-世界
宗教」であるのかどうかは今後の展開次第である。
Source: Douglas J. Davis, “World Religion: Dynamics and
Constraints” in The Worlds of Joseph Smith, Brigham Young
University Studies, Vol. 44, No. 4, 2005.
Jan Shipps, “Joseph Smith and the Making of a Global
Religion,” in the above BYU Studies.
関連記事 09/6/30 モルモン教会は世界宗教か--ヴァン・ビーク文
化人類学教授のノート
見方を見てみよう。
成長の活力(dynamics of growth)
[死の超克] 系図探究、神殿の儀式による死の超克はモルモ二
ズム成功の大きな鍵であった。死者のためのバプテスマとエンダ
ウメントの儀式はこの点で積極的な役割を果たしている、とデー
ビスはみる。(私は死者のバプテスマの教義は救いが、教えを聞
かないで亡くなった人にも及び得るという点で大きな普遍的要素
であり、成長の活力として大きいと思っている。沼野)
プロテスタンティズムの倫理をモルモン流に受け継いで、モル
モン教では復活後どうなるかというと地上でどのように暮らした
かによって決まってくる。達成意識型人種なのである。これは単
に救済宗教ではなく、昇栄志向宗教であってこの点はしばしば
「世界宗教」と同義に見られる。
末日聖徒が救いと昇栄の違いを認識し、礼拝堂と神殿が相互に
補関し合う関係にあることは活力と成長の特性であると見る。
制約
昇栄志向宗教はしかし、行いを強調するあまり燃え尽きてしま
う経験を生じ、信徒の余裕や自由を奪うことになる。時に「恵み
により救われる」と強調されることがあるのは、牧会的配慮から
であるが、教会が大きく成長すると権威への服従、儀式の強調が
優先されることになる。
次に、アメリカ的要素と強く結び付いている特徴は、将来モルモ
二ズムが世界宗教とみなされるかどうかに当たって制約となるだ
ろう。主要な世界宗教は発祥の地とのつながりが薄れ、多くの異
なる社会にあってそこの文化に適応(enculture)している。これ
までモルモン教は米以外では下位文化(sub-culture, ある特定社
会内の小グループ)として拡張してきたが、世界宗教としてでは
なかった。今の状態で拡張が続いていくとき、離反、分裂、広範
な局地化(地方色濃厚な教会と化すこと)が起こるのではないか。
アフリカ、インド、日本、ブラジルなどそれぞれに独特なモルモ
ン教徒の生活様式が出現するであろう。そうなって初めて世界宗
教の位置づけが現実味を帯びてくる。
ジャン・シップス
シップス女史も本質的な方向から吟味を試みている。宗教学者ニ
ニアン・スマートと宗教歴史家エリアーデの分析に従って、モル
モ二ズムを20年間吟味してきたところ、キリスト教、ユダヤ教に
見られる6つの特性が備わっているという。それは、「神話体系」、
「教義」、「儀式」、「社会・組織的特性」、「倫理」、「経験
的特性」である。
ただ、ユダヤ教と同様、ひとつの宗教として十分特性を具えてい
るが、まだ世界のいろいろな地域で十分文化的適応を遂げている
とは言えない。将来更に歩を進めて世界宗教となり得る「原-世界
宗教」であるのかどうかは今後の展開次第である。
Source: Douglas J. Davis, “World Religion: Dynamics and
Constraints” in The Worlds of Joseph Smith, Brigham Young
University Studies, Vol. 44, No. 4, 2005.
Jan Shipps, “Joseph Smith and the Making of a Global
Religion,” in the above BYU Studies.
関連記事 09/6/30 モルモン教会は世界宗教か--ヴァン・ビーク文
化人類学教授のノート
②.現今の世界宗教には、たとえばキリスト教にはカトリック・正教会・プロテスタント、イスラム教にはシーア派・スンニ派、仏教には大乗・上座部のように分派の存在があり、教義・聖典の解釈等微妙な差異を見せていることで多彩な価値観を生み出していますが、モルモン教会も今後価値観の多様化を認めるのでしょうか?
③.別のスレッドでも書きましたが、キリスト教がユダヤ教の割礼や食物タブーを廃止したように、宗教が量的拡大を遂げるときには教義や戒律の簡素化が見られます。となると「十分の一」「知恵の言葉」などの戒律はなかなか高いハードルのように思えるのですが。
①「モルモン教が世界宗教になるということは、キリスト教とは別の宗教として認識されることになると思う」
--> そうだと思います。研究者たちはそう考えていると受けとめています。イスラム教がキリスト教と異なるより、よほどキリスト教に近いキリスト教系ということになると思いますが。
②「モルモン教会も今後価値観の多様化を認めるのでしょうか?」
--> これについてはヴァン・ビークが「キリストの共同体」(元復元教会)の存在はまだそれに相当しない、と述べています(当ブログ6/30/09記事)。まだ、それほど米以外に存在しないからです。
次にモルモン教会が多様化を認めるかと言えば、もちろん昨今のlds教会は認めないでしょう。3人からなる地域会長会(主として米国籍)が多国籍企業のように数年おきに入れ替わって多様化を防ぐべくSLC本部の管理を担っているからです。
ただ、時間がたてば多様化の方向に向かう可能性があるかもしれない、と思います。今でもごく小さな、低レベルで、多様化は起こっているし、それを禁止することはできないでしょう。米幹部の訪問がないとアフリカで賛美歌を歌うとき太鼓を叩いている、と聞いたことがあります。日本で復活祭があまり祝われなくなっていたり、司会者の挨拶に会衆も声に出して答えるなど、欧米の文化と異なる点があります。古参の会員が衛星放送に(ときにはステーク大会にさえ)関心を示さなくなっているのはその兆しかもしれません。
キリストの共同体のような分派がアメリカ以外で生じるのかどうか私には今思い浮かびません。
③「十分の一、知恵の言葉などの戒律はなかなか高いハードルのように思えるのですが」
--> 戒律の簡素化は起こるのではないかと予測します。すでに米のお膝元でコーラを飲むことを容認しています。香港返還直前に香港に行きましたが、一部香港の会員はお茶について弾力的である(守っていない)ように見受けられました。
また、世界における諸民族の性の倫理、結婚を取り巻く状況変化に、教会は対応に苦慮しているものと推測します。伝統的な考えと基準を厳に固執していると、改宗者が得られなくなるし、破門が相次いで会員数を維持できなくなるとみられるからです。(一般社会における同棲の常態化、性的な罪に対して昔ほど破門などの厳しい処置がとられなくなっているなど)。
あまりまとまっていませんが、取りあえず回答させていただきました。
それは豚さんサイト4896の箇条書きと4881のうち私が注目した文を、小生のブログに転載させてもらっていいでしょうか。
非常に的確な考え方で参考になると思いました。
転載の件、了解しました。駄文ですがご利用いただければ幸いです。ただ、私のあの意見ですが、現在モルモン教会が行っている積極的な伝道活動を批判する内容でもあります。実際私は教会に参加していた時から伝道活動には批判の目を向けていました。そのような内容の文章ですので、NJさんにご迷惑がかからないようにご利用いただければと思います。
モルモンが一般化するには、大きな壁がいくつか有りますが、その一つが「職業」だと思います。
私の知る限りですが、日本のモルモンには「八百屋さん」「魚屋さん」と言った「商店主」が居ませんね。
もちろん「酒屋さん」「タバコやさん」もです。
これは、モルモンが守るべき基本的な律法、「安息日」、「知恵の言葉」、によるものだと考えます。
そこに「什分の一」が加わりますと、さらに範囲が狭くなります。
今日の若者に普及するには「純潔の律法」がネックになるでしょう。
つまり、モルモンはいきなり入り口で制限をかけていますので、少なくとも日本では、会員数が増える事は望め無いと思います。
聖餐会を以前行っていたように、木曜日の夜等にも行うようにすれば、少しは会員数の増加も見込めるかもしれないですね。モルモンのコンビニ化ですね。
それより前に、選民意識を捨てる事の方が重要かもしれませんけどね。「選ばれた民」って言うのは、常に少数派を意味しますから。