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アルマ・O・テイラーは帰国前に中国を探訪していた

2021-12-16 23:03:28 | モルモン教関連

 アルマ・O・テイラーは1901年H.J.グラントらと共に日本に来た最初の宣教師で、モルモン書の翻訳を監修し、8年間の滞在中伝道部長にもなった人物ですが、任期を終えて帰国する前に、中国を1カ月半にわたって調査のため訪問していました。

 1910年1月1日伝道を解任されたテイラーは、アジアの国々を調べたいと大管長会に手紙を出して許可を得、教会が経費を負担して韓国を経由しF・ケインと共に中国に向かっています。

 

 日程はテイラーの日誌によれば大略次のようなものでした。

 1910.01.11 神戸出港

 01.12~ 韓国(当時大韓国) 釜山、大邱、ソウル、平壌

 01.27~ 中国(当時清) 奉天(現瀋陽)、天津、北京 (2/4~8日)、漢口、南京、蘇州、上海(2/20~27日)、福州、厦門、香港(3/11, 12)

 03.17 長崎、20日東京

 

 テイラーとケインは4月26日ソルトレーク市の自宅に帰還、翌日大管長会(大管長はジョセフ・F・スミス) に報告し、長文の報告書を提出しています。そこに次のような文が見えます。 

 

  「(ロンドン伝道会の宣教師J.マクガウンを引用)西洋人にはすぐにわからないかもしれないが、中国の大多数の家庭で夫婦は愛で結ばれ、円満に過ごしている。」テイラーはこの言葉に同意しています。

 

 ただ、彼は「中国人が正直、高潔、信頼を大切にするのは、良心に根ざしてというより、この世で最も求められるもの - - お金  - - を得るのに欠かせないからだ」とも記しています。

 

そして、当時の時点では宣教師を中国に送ることは勧められないと述べています。理由としては、中国(清)は政治・経済・社会的に不安定で、混沌とした過渡期の状態にあることをあげ、教会はそれを受けて中国に宣教師を送ることを見送っています。テイラーの中国探訪を調べたR.L.ニールソンは、末日聖徒イエス・キリスト教会が欧米のキリスト教に比べて中国に物的・人的両面で足場(資産)を持っていなかったことも理由としてあげています。

 

[参考資料]
・Alma O. Taylor の日誌、1909/12/31~04/26 (教会歴史委員会 加藤芳弘兄弟保有)

・Alma O. Taylor, “Report of Our Visit to China” included in the following article.

・Reid L. Neilson, “Alma O. Taylor’s Fact-Finding Mission to China,” BYU Studies, Vol. 40, No. 1 [2001]

 

[註:中国の当時の状況] 

 アルマ・O・テイラーが中国(清)に行った1910年は、清の支配が終わる1年前であり、1911年辛亥革命によって清朝は倒されている。一方、キリスト教はアヘン戦争の末結ばれた不平等条約で得られた開港地から内地に伝道を始めていた。紆余曲折があったが、1905年には63の伝道会が3,500人の宣教師を派遣するに至っている。キリスト教徒の数は1900年に約10万人、1915年に27万人に達していた。キリスト教教育も始められ、1920年にはキリスト教大学が20校に及んでいる。以上、渡辺祐子監修「はじめての中国キリスト教史」2021年増補改訂版より。
 なお、日本はテイラーがいた8年間に35名のバプテスマしか得られず、彼は中韓でより多くの改宗者が得られるかもしれないと信じた、とニールソンは記している。


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40 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
テイラー時代の実績 (エニグマ)
2021-12-17 08:58:45
>なお、日本はテイラーがいた8年間に35名のバプテスマしか得られず

とは言え当時日本にいた宣教師数から勘案すると、ひょとしたら現在より高い実績かも知れませんね
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そう言えば (NJ)
2021-12-17 09:19:52
なるほど。現在(コロナ禍前でも)、極めて低いですからね。
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読んでみると意外に面白い (エニグマ)
2021-12-17 12:57:23
これ、面白いですね。
 ↓
リアホナ2009年4月号 アルマ・O・テーラーのモルモン書翻訳日記4
https://jp.churchofjesuschrist.org/2009-apr-01?lang=jpn

モルモンとか伝道とかを抜きにして、宗教者が異国の地で何の足掛かりもない状態でいかに活動していくのか、生き生きとした光景が目に浮かんできます。

ネットフリックスやHBOあたりで連続ドラマにしてくれたらなぁって気がしました。教会も結構な資金力があるから、やる気があればできるでしょう。ただ日本の教会史にアメリカがそこまでお金をかけてくれる道理は無さそうですが。
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BofMの文語訳,真の翻訳者は? (NJ)
2021-12-17 17:54:45
上の日記4を読んでみたいと思います。私はテイラーがBofMの明治訳【文語)を訳したとは思えないでいます。校訂と文語化を依頼した日本の文学者の働きであると見ています。

佐藤龍猪、高木信二もそう見ています。日記か翻訳文の原稿を見て確認したいと課題を感じています。

上記コメントを有難うございます。
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宣教開始120周年 (オムナイ)
2021-12-17 20:22:08
>アルマ・O・テイラーは1901年H.J.グラントらと共に日本に来た最初の宣教師

リアホナに寄稿して欲しいです。

>教会はそれを受けて中国に宣教師を送ることを見送っています。

近年伝道の足がかりを得ようと着々な感じがします。
Zoomが多いのもそのせいかと勘ぐりますね。

中国共産党の崩壊が鍵でしょうか。
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Re;読んでみると意外に面白い (オムナイ)
2021-12-17 20:37:10
https://jp.churchofjesuschrist.org/gospel-library/manuals/japan--history--guide?lang=jpn

日本教会史はここが詳しいです。

>ネットフリックスやHBOあたりで連続ドラマにしてくれたらなぁって気がしました。

最近こんなニュースを見かけました。

https://bleedingcool.com/comics/noah-van-sciver-creates-graphic-novel-joseph-smith-the-mormons/

末日聖徒教会の創設者であるジョセフ・スミスの生涯についてのオリジナルのグラフィック小説の伝記。

ジョセフ・スミスとモルモン教徒では、モルモン教徒として育てられた作家兼イラストレーターのノア・ヴァン・サイバーが、歴史上最も物議を醸している人物の1人、
ジョセフ・スミスを取り上げています。この本は、スミスの人生のすべての記念碑的な瞬間について説明しています。

これには、彼の信者がニューヨークからオハイオに移動する原因となった反モルモンの脅威と暴力、スミスが複数の結婚の神聖な命令を受けた、彼の投獄、大統領に立候補するという彼の発表が含まれます米国の、
そして1844年に38歳の若さで怒った暴徒による彼の究極の殺害。敬意を持って歴史的なアプローチで、そして印象的に描かれ、
ーーー
日本は漫画・劇画は得意分野ですからね。
日本教会史も含めて劇画的な書籍は読みたいです。
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キリスト教の本色化(土着化)運動とは?! (たまWEB)
2021-12-18 10:13:23
中国 キリスト教 本色
https://search.yahoo.co.jp/search?p=%E4%B8%AD%E5%9B%BD%20%E3%82%AD%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88%E6%95%99%20%E6%9C%AC%E8%89%B2&ei=UTF-8

義和団 キリスト教徒
https://search.yahoo.co.jp/search?p=%E7%BE%A9%E5%92%8C%E5%9B%A3%20%E3%82%AD%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88%E6%95%99%E5%BE%92&ei=UTF-8

"三自" 英国教会 "伝道協会"
https://search.yahoo.co.jp/search?p=%22%E4%B8%89%E8%87%AA%22%20%E8%8B%B1%E5%9B%BD%E6%95%99%E4%BC%9A%20%22%E4%BC%9D%E9%81%93%E5%8D%94%E4%BC%9A%22&ei=UTF-8

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"2020/12/19 中国で急増するキリスト教徒・・なぜ?" (たまWEB)
2021-12-18 10:57:56
「中国政府の研究機関「中国社会科学院」が発表した宗教白書によると、2010年の中国のキリスト教会の数は55000カ所、キリスト教信者の数は約3000万人である。その内訳はプロテスタントの信者が2300万人強、カトリックが600万人、その他100万人はロシア東方正教会の信者などと発表している。

信者の推移をみると、プロテスタントは共産党政府建国時(1949)が約70万人だったので、61年間で30倍以上に増加したことになる。

一方、海外の研究機関は中国政府の発表した数字は少なすぎる、と指摘する。米国の福音派メディア「クリスチャニティ・トゥデイ」(Christianity Today)は中国の総人口の10%に近い1億3000万人がキリスト教信者だと発表している。また、米国の無党派シンクタンク「ピュー研究所」(Pew Research Center)は6700万人(全人口の5%)だと発表している。
・・・
中国共産党機関紙「人民日報」のインターネット版「人民網」(2011年4月25日号)は、その理由について、「中国の改革発展の重要な時期にさしかかっており、価値観や道徳観が大きく変わってきた。(外部の)人間関係からは得られない寛容、慈悲、公正を(教会は)与えてくれる。こうした安心感や帰属感が求められているからだ」と分析している。

また、近年、中国人の留学生が急増していることも理由の一つだ。現在、世界の留学生約500万人強のうち3分の1に相当する170万人が中国人留学生だ。留学先の1位、2位は米国と英国だが、これらの国はいずれもキリスト教国であり、留学先で信仰をもつ学生が増えていると考えられる。

中国の経済成長の繁栄の影で経済格差が生まれ、孤立感をもつ人が増えている。変化した価値観に違和感を抱く人も少なくない。物質の豊かさでは満たされない心の隙間を埋めるものを教会に求めているということだろうか。

連載:中国のライフスタイルと働き方の新常識

https://forbesjapan.com/articles/detail/38838/3/1/1

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モルモン宣教師の伝道活動を描いた映画なら (好奇心)
2021-12-18 11:44:23
こんなのがありますよ。

「幸せになるための恋の手紙」(原題:THE OTHER SIDE OF HEAVEN)
https://eiga.com/movie/80455/
https://www.amazon.co.jp/%E5%B9%B8%E3%81%9B%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%82%8B%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE%E6%81%8B%E3%81%AE%E6%89%8B%E7%B4%99-DVD-%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%8F%E3%82%B5%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%82%A4/dp/B000RG160A

ストーリーは、七十人定員会の一員だったジョン・H・グローバーグ(あの悪名高きグローバーグ東京南伝道部長の兄弟)のトンガ伝道時代の伝記らしいです。なんでこんな映画が作られたか分かりませんが、主人公の恋人役で出演してるのがアン・ハサウェイなんですね、ビックリです。

アマゾンでDVDが買えるようですが、タイトルと内容が全然違うということで、レビュー評価はあんまり良くないです。観たいような、観たくないような・・・
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Unknown (あじフライ)
2021-12-18 13:16:37
>ネットフリックスやHBOあたりで連続ドラマにしてくれたらなぁって気がしました。

いやいや、映画化するならグローバーグ時代の東京南伝道部でしょ。タイトルは『狂乱バプテスマ ~アナタハ、カミヲ、シンジマスカ?~』

実際にあったエピソードを詰め込んだだけで、大爆笑のエンターテイメント作品になりますよ。
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