前史を持たないアメリカ人とモルモン書(「アメリカ研究者のBofMにたいする見方」より)
昨年2019年に出版された「アメリカ研究者のモルモン書に対する見方」の1章「地中に埋められた書物:モルモン書(啓示)は米国民の腐葉土的基盤を示唆」から要約しながら引用したい。モルモン書のアメリカ的特性を示していて、大変興味深い。以下引用紹介。
まず「モルモン書は、アメリカの歴史に時空の両面で実体を与えるような物語を語り直すものである。その枠組みは大陸とそこにあるものを神聖化し、そこに住む共同体を時空の両面で統合する働きを果たしており、その共同体(米国民)の思いとよく合致している」と言うことができる。
「死者の支配」の著者ハリソン*が書いているように、「われわれは祖先の意志を果たしているのであり」、われわれは彼らの産物であり、「常に一(いち)から先人が紡ぎだした存在」なのである。*Robert Pogue Harrison, “Dominion of the Dead”
「われわれは祖先の思い出や墓参に、また死者の記念碑を訪ねる時に、彼らの遺志や人生模様と対面(遭遇)する」ことになる。ハリソンによればわれわれはこの世に生きている限り、死者のおかげで物質的にも新しく登場できているのである。「人はその実体が葬られるが、将来身体をもって生命が引き継がれていく。」ハリソンはこの過程を、社会や文化、共同体が、生産力に富む腐葉土のような基盤の上に築かれていく姿、と見る。
「この埋葬が土地に人間味を与え、われわれの歴史は足元にすえられる。それは、すぐ掘り出し、目前に意識できるようになる。われわれは住む時空を得、共有した歴史を記録して、死を越えてそれを継承し、遺産を子孫に伝えていくことができるのである。」
ハリソンはこうも説明している。「われわれは死者から生まれている。換言すると、彼らが住んだ地域、話した言語、彼らが醸成した世界、多くの制度、法制、文化、心理的な遺産を背負って生まれ、われわれを経てまだ生まれていない世代に継がれていくのである。祖先によって今日のわれわれがある。」
「合衆国は前史を持たない国と思われてきた。アメリカ人は単に移植されたヨーロッパ人ではないと自認したがっていた。モルモン書はその課題に答えるものであった。
18, 19世紀の独立戦争を境に、若い世代はそれまで植民地に住んできた親とは袂を分かって、親たちの宗主国への忠誠を否定した。独立後に生まれたこの人々は、決裂を克服する安定を求めて、新しい歴史を見つけ出す必要に迫られた。国家としての政治的結束を固めるために、土地に対する自然で固有な所有権を認める歴史が求められた。モルモン教徒がアメリカ大陸に対して持つ観点は、この歴史再考と同じ流れであり、終末の予言だけでなく回復をも描いていた。独立後のアメリカ人は自分たちが何者なのかを知る必要があったのである。」
関連して著者は次のように書いている。19世紀初頭、オハイオやニューヨーク州など東部諸州で見られる「小山(土盛り)」に人々の関心が向けられ、様々な推測が行なわれた。そこに葬られていたのは野蛮なインディアンではなく、彼らに滅ぼされた高い文明を持つ肌の白い人々であった、というのである。この土盛りの存在とその背後に予測される可能性はヨーロッパにある遺跡に匹敵するものと見做され、文化的な威信を回復する意味があった。
以上のような背景のもとにモルモン書が登場し、比率は限られているにせよ、人々の共感を得て受け入れられ、今日に至っているというのである。現在でもアメリカの教会員は、上記のような意識が心の一部を占めているのではないだろうか。
典拠
・Jillian Sayre, “Books Buried in the Earth: The Book of Mormon, Revelation, and the Humic Foundations of the Nation”
・Elizabeth Fenton and Jared Hickman, ed., “Americanist Approaches to The Book of Mormon.” Oxford University Press, 2019. The above J. Sayre’s article is the 1st chapter of this book.
同書の紹介
- Collects the most impressive of scholars ever assembled to address The Book of Mormon
- Engages with the text from a wide variety of disciplines, including literary studies, American history, anthropology, and religious studies
- Provides a broad perspective on a text of unquestionable historical significance, via accomplished scholars of American literature and culture
https://www.kyodo.co.jp/yawaosi-eizo/2020-01-11_2474246/
ジェームズ・スキナー
https://search.yahoo.co.jp/search?ei=UTF-8&p=%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%8A%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%82%BA&b=11
モルモン書のメッセージとの関連は??
信仰の持ちよう??
モルモン書を創作物であると受け入れながらその意味付けをしようと試みる人たちの論調には、いつも自分本位な視点しかありません。
今回メモにまとめた記事(論文)は、Rutgers University の英語教授(非教徒)Jillian Sayre女史によるもので論調は極めて学究的です。決して「自分本位な視点」と断じられるようなものではありません。
そもそもこの論文を収めている Americanist Approaches to the Book of Mormon は、前回のOxford University Press が出したもの*と趣を異にした学術的なもので、末日聖徒にとって厳しいものがそろっています。(*Foundational Texts of Mormonism)
私の言論についてはともかく、Kizukaさんのこのたびのようなコメントを書こうと思われたら、少なくともGoogle で検索しておおよその理解を得てから書いて欲しいと思います。
またその論文がモルモンにとって厳しい内容なら、その辺りをもっと紹介していただきたいなぁと思いました。どうして厳しい内容の論文からわざわざモルモン会員が安堵できる部分だけを抽出なさるのか不思議にも感じました。
考古学のホープウェル文化が当たってるのかも・・
https://search.yahoo.co.jp/search?ei=UTF-8&p=%22%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%97%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%83%AB%E6%96%87%E5%8C%96%22
このハリソンと言う方がどういう人なのか知りませんし、「アメリカ人」と言っても、とうてい一くくりに出来ないのですが、私の認識する「アメリカ人」は
1、アメリカ先住民
2、中世にヨーロッパから来た移民
3、アフリカ大陸から連れてこられた人たち
4、中南米からの移民
5、その他、世界各地からの移民
つまり、1、の方々以外は、アメリカ大陸以外に祖先を持つ人達だと思います。
その方たち自身、その事は良く認識されているのではないかと思います。
その様な人たちが、古代のアメリカ大陸に自分たちの祖先を見いだそうとする事が有るのでしょうか?
私は、そんなことが有るとは想像もできません。
例えば、日本からアメリカに移住した人たちが、アメリカ先住民の方の先祖に自分たちをつなげようとするでしょうか?
なんかよく分からないですね。???
こんな文章の書かれた本は読むに値しないと断言します。
アブラハム・リンカーンは黒人解放の英雄のように扱われることが多いですが、彼が先住民を虐待・虐殺する政策をとったことは日本ではあまり知られていませんよね。南北戦争後にホームステッド法が施行され、一定期間農地を開墾したものは自分の所有にすることができるようになりました。しかしこの法律の対象はヨーロッパからやってきた白人開拓者に適用され、先祖伝来の土地を守ってきた先住民は人が住めないような荒れ地へ追いやられ、そこを居住区と定められたのです。
リンカーン後も先住民に対するアメリカ政府の陰湿な政策は続きます。政府はバッファロー(正しくはアメリカ・バイソン)を害獣として駆除を推奨しました。先住民は食料や衣類としてバッファローに依存する生活を送っていたために、バッファローを狩りつくせば先住民は政府に降伏するしかなくなりました。白人がくる以前に6千万頭いたと推測されるバッファローは1890年には数百頭ほどになりほぼ絶滅しかけました。
先住民の中には今住んでいる場所を自治共和国として独立しようとする動きもあります。しかしパイプラインの建設予定地になっているためアメリカ政府は認めようとはしません。オバマ時代はパイプラインの建設を差し止めていましたが、トランプは再開を強行しました。
このような歴史を鑑みて、乱暴なのは先住民なのか、白人なのか、よく考えるべきです。
>RLDS教会でモルモン書が聖典より
>指導層により外されたとき
RLDSってコミュニティ・オブ・クライスト、いわゆる復元教会のことですよね?あちらの公式サイトで確認しましたけどモルモン書は聖典だと書かれていますよ。聖典から外されていません。
書き込みになる前にきちんとGoogleなりで調べてから書き込んで下さいね。なんか今年になってからコメント欄のルールが厳しくなったようですから(笑)