【 辰・龍の文字の語源 】
辰という漢字は、はまぐり貝の蜃の原字であり、
二枚貝が開いて殻から脚を出し、
蜃肉がのぞいて運動している形を描いた象形文字。
『説文』・・・「辰は振なり三月易気動き」
『釈名』・・・「辰は伸なり、物皆伸舒(のびのび)して出るなり」
(=春の陽気に誘われて万物が振動し、
草木の伸びも速度を増し始めること)
辰は音読みで“シン”。その音の根拠は、妊娠と同じ。
娠の本字は“身”であり、腹中に胎児のある象を表している。
「辰」・・・十二支の第5番目
〔方角〕 東南東
〔時刻〕 午前8時(または午前7時~午前9時の間)
「龍」という文字は、月は肉の動物を示し、
右側は、その肉が飛び跳ねている形で、
この二つで躍動飛行する姿をあらわし、
“立”は大地に立った形、または童の省略で音符として
リュウの音を表すために付けられた。
今でも、龍という文字は、“かがやく”の意味を持ち、
“吉兆”“祥瑞”というめでたいしるしとされる。
『日本書紀』の古訓では、
龍という文字をすでに“タツ”と呼んでいる。
一説によると、辰は震で、
今の五月に当たり、雷雨が降って農作が行われ、
根を張り、どんどん成長することを意味する。
辰が五番目に当てられたのも、動植物が奮い立つ
初夏のころの意からと言われている。
龍は十二支のなかで唯一の仮空の動物であるが、
“蛇の生まれ変わり”と言われている。
蛇を神秘化されていったのが龍である。
西洋では、 「龍」・・・“ドラゴン”
語源はギリシア語の drakon,
ラテン語の draco を経て、ドイツ語のdrache,
英語・フランス語の dragon となった。
ドラコーンは“眼、鋭く見るもの”の意である。
『十二支のE~話』:戸出 武著
【 卯・兎の文字の語源 】
「卯(う・ぼう)」
という漢字は、左右対称となっていて、
一対として使うものを示しているところから、
中の二筋は門柱、両側は門扉を開いた形とし、
「春二月、天門が開いて万物が繁茂する」
ことを意味しています。
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卯の音読みは“ボウ”であるが、“リウ”に転ずる。
訓では“シゲル”と読み、茂って根がはびこると、
こんがらがってどうにもならなくなる
“いばら”や“かや” を意味する。
「卯」・・・十二支の第4番目
〔方角〕 東
〔時刻〕 午前6時(または午前5時~午前7時の間)
〔卯月〕 四月
「兎」・・・文字どおり左を向いたウサギがうずくまって
尾を外に出している象形文字。
上部の“ノ”は耳を、右下の“、”は短い尾を表している。
わが国の古い文献をみると、
『倭名類聚抄』に“宇佐木(うさぎ)”と同じ、
『万葉集』巻十四には“乎佐芸(おさぎ)”と訛っている。
“ウサギ”の三文字
が何から来たかについては、外国語説がある。
1.古代朝鮮語の“烏斯含(うさがむ)”説。
2.梵語“余余迦(ささか)”に和名のウがついた説。
3.印度の古語サンスクリットでは、“月”の別名をウサギ
といい、その意味は“跳ねる動作”をいうとのことで、
この説がもっとも妥当とされている。
別説
1. 「卯」は門ではなく、二つの刀が並び、立つ形。
2.神に仕えるウシやヒツジの牲肉を両断した形。
3.ウマが口中に含む銜(くつわ)を口の外で両側から
挟む鐶のある金具「くつわかがみ」を表している。
『十二支のE~話』『(続)十二支のE~話』
戸出 武著 参照
【 寅・虎の文字の語源 】
「寅」は“矢”と“𦥑”(キョク) (手を組む意)との合字である。
郭沫若は、
甲骨学文字篇巻十四で「矢を捧げる形」
と言っている。だが、ある学者は、
両手(𦥑)で矢竹の曲がりをまっすぐに伸ばす形
で、正確に的を射ることを意味する。という。
「𦥑」・・・手を合わせ協力することを表す象形文字。
下の「ハ」は人を表している。
また、寅は謹しむの意もあり、大地に根をはって
じっと発芽の時期を待ち、初めて地上に生ずることである。
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「寅」の音読みは“シ” (矢)軽音で“イン”という。
「寅」・・・十二支の第3番目
〔方角〕 東北東
〔時刻〕 午前4時(または午前3時~午前5時の間)
「虎」・・・“虍”(コ)と“儿”(ニン)の合字である。
上の“虍”はトラの皮の文様をあらわし、
下の“儿”は人の足の形をそのまま
トラの足の形とみて作ったもの。
「虎」の語源は、
中国の福建から広東にかけての華南方言からである。
古くトラのことを“タイラ”と呼んだのに起こり、
“トラは虎うる也。人をとらゆる獣”
というところからきた、と『日本釈明』に記されている。
“虍” (とらかんむり)の字は102あり、
「慮(リョ)」「虐(ギャク)」「彪(ヒョウ)」
などが、よく使われている。
『十二支のE~話』:戸出 武著
【 丑・牛の文字の語源 】
『説文』に「丑」は“手の形に象(かたど)る”
とあるように、
右手を伸ばした形がその字形で、こぶしを掴む意がある。
しかし、よくみると
手とは異なるところがあって、指を曲げた形象、
または、力を貯え、動に移らんとする形と言える。
“丑の本義は人の牛の執持する所あるの形に象る”
というように、指を動かしてものを執持する意の字である。
丑の音読みは“チュウ”であり、
結ぶ手指で掴む意味を持っている。
丑に糸編をつけると「紐」(ひも)という字となり、
万物が固定された状態にあることをあらわし、
芽生えたものが紐に縛られて十分に伸びない意味がある。
「丑」・・・十二支の第2番目
〔方角〕 北北東
〔時刻〕 午前2時(または午前1時~午前3時の間)
「牛」・・・動物のウシの形に象(かたど)った象形文字。
上半分は牛の特徴である角を表している。
牛編のついた漢字は311ある。
動物のオス・メスは「牡」「牝」、マキバは「牧」、
イケ二エは牛と相場が決まっていたので「犠牲」
物も牛編がついている。
『説文』・・・(後漢の許慎選で、文字の構成を説く書)
『十二支のE~話』:戸出 武著
今年ももうすぐ終わろうとしています。
ちょうど、十二支のスタートなのでちょっと調べておきます。
【子・鼠の文字の語源】
「子」の字義は古書に
“子(ね)は孳(じ)なり、相生まれて蕃孳(はんじ)す”
とあるように
「蕃」も「孳」も、しげる・ふえる、という意で、
新しい生命が萌え出ることである。
「孳」には「子」を多く生むという意味のある
ところから、「ネズミ」が当てられた。
なお「子」は小児の形象ともいわれる。
「子」は音読みで“シ”というが
この音は小の音から転じたものである。
「子」・・・十二支の第1番目
〔方向〕 北
〔時刻〕 真夜中の零時(または午後11時~午前1時の間)
「鼠」・・・動物のネズミ(鼠)の形に象(かたど)った象形文字。
上の「臼」はネズミの口の中の歯をあらわし、下のは
ネズミの腹・爪・尾をあらわしている。ネズミの特徴は
かじる=歯にあるのでそれを大きく書くようになった。
中国では、“星が散じて鼠”となったいい伝えられ、「説文」によると、
“穴に住んでいる虫の総称”が「鼠」であると記されている。
「鼠」をなぜ“ネズミ”というか
① ネズミという動物は、夜出てきて盗み、
昼は穴に隠れているところから“寝盗み”という。
② 根の堅洲国(かたすくに)に棲む、または
地下(根の国)に棲むから“根住み”という。
鼠編のついた漢字は107あるが、
“鼫(むささび)”“鼷(はつかねずみ)”“鼬(いたち)”
などいずれも難解なものばかりである。
『十二支のE~話』:戸出 武著