田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

第十三章 美智子の危機/三億八千万年の孤独 麻屋与志夫

2011-05-03 06:54:51 | Weblog
第十三章 美智子の危機

1

美智子はふらふらと庭を横切る。
門のほうへ歩いていく。
なにものかに操られているようだ。
まるで誰かに呼ばれているように……。
ふらふらと外に向かっている。

「美智子さん!!」

門扉を開けて通りにでた美智子。

「もどって!!」

背後から声をかけて隼人が追いすがる。
精悍な隼人の顔にオドロキの表情がうかんだ。

「美智子さん! 美智子さん!!」

隼人は美智子の動きを制止しようとした。
叫びながら駈けだしていた。
いま少しだ。
追いつける。

「美智子さん!!!」

美智子は呼びかけられているのに。
止まらない。
キーンと耳鳴りがする。
まちがいない。
これは鬼気だ。
邪悪な鬼神が身近にいる。
迫ってくる。
耳に突き刺さる音。
おもわず耳を押さえて立ち止まる。
凍てつくような寒気。
凍てつくような恐怖。
凍てつくような無力感。
なにもできない。
美智子の危機を救えない。

キュユと車が門前に急停車する。
しまった。
立ち止まるべきではなかった。
いや、邪悪な波動に体がかたまったのだ。

美智子が腕を引かれた。
抱え込まれる。
ドアが激しい音をたて。
閉じられる。
車は急発進してしまった。

「キリコ。車だ」

隼人は必死で車を追った。
ナンバープレイトは……ダメだ。見えない。
なにか張り付けてある。
いつも携帯しているカシオのデジカメ。
シャッターをきる。
おそらくそれでも――。
ナンバーは読み取れないだろう。

車は大通りを右に曲る。
車はまたたくまにほかの車にまぎれる。
見えなくなる。
 
キリコの運転するBMWが隼人の脇に寄ってくる。
キュルルとスピードをゆるめる。
開け放たれたドアから隼人は飛び乗る。

「秀兄ちゃん。美智子さんが拉致された。車は都心に逃走中」



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