6
――直人、なおと、ナ…オ…ト……。
こんどは、美智子の思念が、幽かにかすかにながれてきた。
――助けて……。
翔太郎と隼人がその思念を受信した。
直ぐ近くから発信されている。
ふたりは走りだした。
ろくに食事もあたえられていなかった。
そんなことは忘れている。
体力が弱っていることは気にならない。
孫を救いだしたい。
それは智子のねがいでもある。
直人と呼びかけている。
美智子さんは、錯乱している。
直人がまだ生きているような。
錯覚。願望ではない。
リアルにまだ直人が存在しているとおもっているのだ。
さきほど、接触したときも直人と呼びかけてきた。
かぼそい、まったく抑揚のない声だった。
美智子は憔悴しきっているのだ。
はやく助けなければ!!
隼人の背筋が総毛だっような感覚におそわれた。
いる。
この部屋だ。
ノブに手をかける。
手の皮膚がひりひりした。
開ける。
黒服の男の向こうに美智子がいた。
引き戻された美智子がいた。
女を抱き起している。
美智子顔がゆがんでいる。
女は唄子。美智子は恐怖におののいている。
それでも、唄子を抱え込んでいた。
みずからの体を盾にしていた。
友だちのことは守る。
生命にかえても守る。
「唄子、おまえは信用できない。捕まればなんでも喋る。
邪魔だ。唄子おわりだ。死んでくれや」
王仁がぼそぼそいっている。
翔太郎と隼人が、秀行とキリコがへやに乱入した。
それをまったく意に介していない。
翔太郎は男の背後からとびかかった。
拳銃を持った手をかかえこんだ。
男が発砲した。
壁に弾はあたった。
跳弾となって何ヵ所かのコンクリートの壁をけずった。
秀行の配下がかけつけるだろう。
銃声はきこえた。
この音はきこえたはずだ。
ビジョンで伝わってきた智子の最後の言葉。
翔太郎に勇気をあたえた。
おれは妻さえ守れなかった。
でも、妻にいわれたとおり、孫の美智子は守ったからな。
とび跳ねた弾が翔太郎の肩にめりこんだ。
孫を守ることがこのジジイにできた。
だったら……。
すまない。
智子。
おまえのことだって守れたはずなのに。
ひとり家にのこすべきではなかった。
今日も遊びに来てくれてありがとうございます。
お帰りに下のバナーを押してくださると…活力になります。
皆さんの応援でがんばっています。
にほんブログ村
――直人、なおと、ナ…オ…ト……。
こんどは、美智子の思念が、幽かにかすかにながれてきた。
――助けて……。
翔太郎と隼人がその思念を受信した。
直ぐ近くから発信されている。
ふたりは走りだした。
ろくに食事もあたえられていなかった。
そんなことは忘れている。
体力が弱っていることは気にならない。
孫を救いだしたい。
それは智子のねがいでもある。
直人と呼びかけている。
美智子さんは、錯乱している。
直人がまだ生きているような。
錯覚。願望ではない。
リアルにまだ直人が存在しているとおもっているのだ。
さきほど、接触したときも直人と呼びかけてきた。
かぼそい、まったく抑揚のない声だった。
美智子は憔悴しきっているのだ。
はやく助けなければ!!
隼人の背筋が総毛だっような感覚におそわれた。
いる。
この部屋だ。
ノブに手をかける。
手の皮膚がひりひりした。
開ける。
黒服の男の向こうに美智子がいた。
引き戻された美智子がいた。
女を抱き起している。
美智子顔がゆがんでいる。
女は唄子。美智子は恐怖におののいている。
それでも、唄子を抱え込んでいた。
みずからの体を盾にしていた。
友だちのことは守る。
生命にかえても守る。
「唄子、おまえは信用できない。捕まればなんでも喋る。
邪魔だ。唄子おわりだ。死んでくれや」
王仁がぼそぼそいっている。
翔太郎と隼人が、秀行とキリコがへやに乱入した。
それをまったく意に介していない。
翔太郎は男の背後からとびかかった。
拳銃を持った手をかかえこんだ。
男が発砲した。
壁に弾はあたった。
跳弾となって何ヵ所かのコンクリートの壁をけずった。
秀行の配下がかけつけるだろう。
銃声はきこえた。
この音はきこえたはずだ。
ビジョンで伝わってきた智子の最後の言葉。
翔太郎に勇気をあたえた。
おれは妻さえ守れなかった。
でも、妻にいわれたとおり、孫の美智子は守ったからな。
とび跳ねた弾が翔太郎の肩にめりこんだ。
孫を守ることがこのジジイにできた。
だったら……。
すまない。
智子。
おまえのことだって守れたはずなのに。
ひとり家にのこすべきではなかった。
今日も遊びに来てくれてありがとうございます。
お帰りに下のバナーを押してくださると…活力になります。
皆さんの応援でがんばっています。
