田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

愛の絆(3)/三億八千万年の孤独 麻屋与志夫

2011-05-18 05:34:01 | Weblog
3
 
迎撃してくる敵があらわれない。

「わたしたちが、かけつけるのが速かったのよ」
キリコが並んで走っている。
隼人の考えを読んでいる。
「あいつら、まだここには集結していない。
ビルも日輪教の本部のほうは建築中だもの」
「キリコ。余計なことはいい。
いまは、人質になっている美智子さんを助けることだ」
周囲に気をくばりながら秀行がいう。

隼人は思念をとばした。
――美智子どこにいる。きこえるか。
美智子、貴女も、麻耶一族なら応えてくれ。
キリコもきている。わかっているだろう。
まだ……いま会ったばかりだ。
ぼくらがきていることはわかっているのだ。
叫べ。
泣け。
美智子どこにつれていかれた。
どこにいる?

美智子の顔を想う。
美智子の顔が隼人の頭に浮かぶ。
その顔にむかって呼びかける。
フシギナ熱気が体のすみずみまで広がる。
美智子と発音した。
それだけだ。
力がみなぎってくる。
声に出さなくても、想っただけでも高揚する。
こころが、エネルギーにみちみちてくる。
いきいきとして来る。
美智子。
いまいく。
美智子。
元気でな。
美智子。
いますぐだ。
さらに階段をおりる。

「車の発着音がする。
地下駐車場があるわ。
車で逃げるってことないわよね」
「このビルのまわりは部下が固めている。そとには逃げられない」
秀行の局長としてのタノモシイ返事。
美智子のことを想いつづける。
美智子がそばにいるような体の温もりすら感じる。
美智子はここにいる。
ここにいる。
もうすぐた。
もうすぐ会える。
それにしても、美智子は悲しい瞳をしている。
なんともいえない、悲しい顔だ。
これは!! 
隼人の心臓が跳ねた。
隼人のこころがよろこびに震えた。
いる。
いる。
唄子がいっしょだ。
ビジョンが見えた。
美智子が見えた。
唄子と一緒だ。 




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