4
「翔太郎。おまえが、正義とおもって、
信念を貫き通して生きてきた結果がこれかよ」
男がドアから入ってきた。
外目には、フツウの男に見える。
「どうした。暇か」
吸血鬼の姿がダブって見えている。
「あっさりとわたしも殺してくれ。
妻のいないこの世に未練はない」
「おや、女房が死んだと――わかるのか。
おまえさんは、
じぶんには特別な能力があるとおもって生きてきたはずだ。
でもそのていどかよ。
街の守護こそわが家系の役目、
などと思いあがって生きてきた。
だが、おまえの家に火をつけたのはだれだかわかっているだろう」
「吸血鬼が煽動したのだ」
「いやちがうね。
ひとはあまりにも潔白に生なものを嫌うのだよ。
邪なかんがえを読みとられることを嫌うのだ」
「わたしは純粋に生きてきた。
わたしをいまさら洗脳しようとするな。ころせ」
「わからないやつだな。
そうできるならとっくにおまえなんか消去していた。
それができないのだ」
「どうしてだ? どうしてころさなかった」
「麻耶翔太郎。
あなたさまは――わが一族の美樹姫の幼なじみだというから……」
音声をかえている。
からかわれているのだ。
口調までかえている。
別に尊敬しているわけではないのに。
軽蔑しているのに。
あなたさまは、などといっている。
からかわれているのだ。
「……いままで生きのびてこられたのだ。
まさか少しくらい超感覚があるから、
その能力で生きてこられた。
なんて過信しているわけではないだろうな」
吸血鬼がひまつぶしの会話をたのしむようにしゃべっている。
翔太郎はるかむかし森の泉の辺で遊んだ少女をおもいだした。
山の民だといまのいままでおもっていた。
日光の山窩だときいていた。
あの墓場のある、
森で遊んだ少女が吸血鬼のお姫様だった。
ファンタジーもいいところだ。
グリム童話の世界みたいだ。
「姫からおまえのことは、
傷つけるなといわれているからな。
それでブジなのがわからなかったろう」
「うそだ――。
……それで美樹は元気なのか?
どこにいる」
「ほんとに、おまえっやつは無知だな。
それでよく伝奇小説が書けるな。
もっとも……だから陽の目をみないのだ。
売れないのだ」
「元気なのか。どこにいる」
「バカか。
吸血鬼に元気かってきくことの愚かさがわからないのか。
姫はこの東京にいる。
いつもおまえを見守っている……」
翔太郎は足もとが、がらがらと崩壊するのを感じた。
いままでかんがえてもみなかった世界があった。
いままでかんがえてもみなかった異世界にすでに触れていた。
美樹が吸血鬼だなどと、夢にもおもったことはない。
――美智子、美智子。どこにいる。どこにいる。
かすかな念波を翔太郎はとらえた。
今日も遊びに来てくれてありがとうございます。
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「翔太郎。おまえが、正義とおもって、
信念を貫き通して生きてきた結果がこれかよ」
男がドアから入ってきた。
外目には、フツウの男に見える。
「どうした。暇か」
吸血鬼の姿がダブって見えている。
「あっさりとわたしも殺してくれ。
妻のいないこの世に未練はない」
「おや、女房が死んだと――わかるのか。
おまえさんは、
じぶんには特別な能力があるとおもって生きてきたはずだ。
でもそのていどかよ。
街の守護こそわが家系の役目、
などと思いあがって生きてきた。
だが、おまえの家に火をつけたのはだれだかわかっているだろう」
「吸血鬼が煽動したのだ」
「いやちがうね。
ひとはあまりにも潔白に生なものを嫌うのだよ。
邪なかんがえを読みとられることを嫌うのだ」
「わたしは純粋に生きてきた。
わたしをいまさら洗脳しようとするな。ころせ」
「わからないやつだな。
そうできるならとっくにおまえなんか消去していた。
それができないのだ」
「どうしてだ? どうしてころさなかった」
「麻耶翔太郎。
あなたさまは――わが一族の美樹姫の幼なじみだというから……」
音声をかえている。
からかわれているのだ。
口調までかえている。
別に尊敬しているわけではないのに。
軽蔑しているのに。
あなたさまは、などといっている。
からかわれているのだ。
「……いままで生きのびてこられたのだ。
まさか少しくらい超感覚があるから、
その能力で生きてこられた。
なんて過信しているわけではないだろうな」
吸血鬼がひまつぶしの会話をたのしむようにしゃべっている。
翔太郎はるかむかし森の泉の辺で遊んだ少女をおもいだした。
山の民だといまのいままでおもっていた。
日光の山窩だときいていた。
あの墓場のある、
森で遊んだ少女が吸血鬼のお姫様だった。
ファンタジーもいいところだ。
グリム童話の世界みたいだ。
「姫からおまえのことは、
傷つけるなといわれているからな。
それでブジなのがわからなかったろう」
「うそだ――。
……それで美樹は元気なのか?
どこにいる」
「ほんとに、おまえっやつは無知だな。
それでよく伝奇小説が書けるな。
もっとも……だから陽の目をみないのだ。
売れないのだ」
「元気なのか。どこにいる」
「バカか。
吸血鬼に元気かってきくことの愚かさがわからないのか。
姫はこの東京にいる。
いつもおまえを見守っている……」
翔太郎は足もとが、がらがらと崩壊するのを感じた。
いままでかんがえてもみなかった世界があった。
いままでかんがえてもみなかった異世界にすでに触れていた。
美樹が吸血鬼だなどと、夢にもおもったことはない。
――美智子、美智子。どこにいる。どこにいる。
かすかな念波を翔太郎はとらえた。
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